すばる望遠鏡(左、中央)とジェミニ北望遠鏡(右)によって撮影された二重クエーサー「SDSS J141637.44+003352.2」。中央は左の画像の枠内を拡大したもの、右の画像は中央の画像の枠内にあたる範囲を撮影したものとなる。銀河の合体の副産物である塵の影響によって、すばる望遠鏡の画像では片方のクエーサーが赤っぽく見えている(Credit: Silverman et al.)

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のJohn Silverman氏らのグループは、国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」を使った観測によって、すでに知られているクエーサーのなかから新たに2つの「二重クエーサー」が見つかったことを発表しました。

クエーサーとは、銀河全体よりも明るく輝くほど活発な活動銀河核(強い電磁波を放つ銀河の中心部)のこと。その原動力は、銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールだと考えられています。二重クエーサーとは、合体しつつある2つの銀河の中心核がそれぞれクエーサーとして輝くことで、クエーサーがペアとして見える現象とされています。

■全クエーサーのうち0.3パーセントは二重クエーサーの可能性

この宇宙では銀河どうしの合体はめずらしい現象ではありません。銀河が衝突・合体する様子はすばる望遠鏡や「ハッブル」宇宙望遠鏡などによって幾つも観測されていますし、天の川銀河も過去に別の銀河と合体した可能性が指摘されています。発表によると、ダイナミックな現象である銀河の合体は星形成活動を促進するきっかけになったり、銀河中心の超大質量ブラックホールに供給されるガスを劇的に増やしたりするとされています。

銀河中心のブラックホールに供給される物質が増えると、ブラックホールに吸い込まれつつ周回する物質で形成された高温の降着円盤が加熱されて強く輝くことで、クエーサーとして観測されることがあるといいます。過去のシミュレーションにおいて、合体しつつある銀河では双方の銀河中心核の活動が活発化することでクエーサーが二重に見える可能性が示されていたものの、2つのクエーサーが同時に輝く期間は短いとみられており、実際の二重クエーサーの観測例はシミュレーションの予測よりもはるかに少なかったとされています。

そこで研究グループは、近接する2つのクエーサーを識別できる高い分解能と数多くのクエーサーを観測できる広い視野を兼ね備えた観測装置として、すばる望遠鏡に設置されている「超広視野主焦点カメラ(HSC:Hyper Suprime-Cam)」を使用。既知の3万4476個のクエーサーをHSCで観測したところ、二重クエーサーの候補が421個まで絞り込まれました。この候補をすばる望遠鏡と同じマウナケア山頂にあるW.M.ケック天文台の「ケックI望遠鏡」とジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」を使って詳しく観測した結果、今回新たに見つかった2つを含む3つの二重クエーサーが特定されるに至りました。

そのうちの1つ「SDSS J141637.44+003352.2」は「おとめ座」の方向およそ46億光年先にある二重クエーサーで、1つに見える巨大な銀河の中心に2つのクエーサーが1万3000光年ほど離れて存在しています。それぞれのクエーサーに存在するとみられる超大質量ブラックホールの質量は、どちらも太陽の約1億倍と考えられています。

研究グループは今回の観測結果をもとに、全てのクエーサーのうち0.3パーセントは超大質量ブラックホールが2つ存在していると推定。今後も二重クエーサーの特定を進めることで、銀河および超大質量ブラックホールの合体や進化についての理解を深めたいとしています。

「中心の超大質量ブラックホールが銀河の合体によって目覚めて質量を増していき、ブラックホールが属する銀河の成長にも影響を与える可能性があります」と語るShenli Tang氏(Kavli IPMU)は、二重クエーサーについて「銀河進化の重要な段階」を示すものだとコメントしています。

 

Image Credit: Silverman et al.
Source: Kavli IPMU / W. M. Keck Observatory
文/松村武宏