中性子星どうしの合体にともなう爆発現象「キロノバ」において重元素(ストロンチウム)が生成される様子を描いたイメージ(Credit: ESO/L. Calçada/M. Kornmesser)

ハートフォードシャー大学の小林千晶氏らの研究グループは、銀河に存在する元素の比率が時間とともに変化していく様子を再現するための新しいモデルを作成。星の誕生と死が繰り返されていく宇宙において、炭素からウランまでの元素がどのようなプロセスで生成されるのかを詳しく調べました。

人間の呼吸に欠かせない酸素をはじめ、文明を支えている鉄や金、原子力発電で利用されているウランといった元素は、もともと宇宙には存在していなかったとされています。水素、ヘリウム、リチウムよりも重い元素は、恒星の内部における核融合反応や超新星爆発のような激しい現象によって生成されてきたと考えられています。研究に参加した豪州研究会議3D全天体物理学センターオブエクセレンス(ASTRO 3D)のAmanda Karakas氏は「星は新たな元素を生成する巨大な圧力鍋のようなもの」と語ります。

■中性子星どうしの衝突では足りず十分な量が生成されない

研究グループによる分析の結果、貴金属の代表ともいえる金について、モデルで説明できる金の量は実際の5分の1に過ぎないことが明らかになったといいます。つまり、銀河に存在する金がどのように生成されてきたのかが従来の説ではうまく説明することができず、新たな謎が提起されたことになります。

金のように鉄よりも重い元素は、超新星爆発の他に中性子星どうしの衝突・合体によって生じる爆発現象「キロノバ」でも生成されると考えられてきました。2017年8月に初めて観測されたキロノバでは、実際に重元素のストロンチウムが生成されていたことが確認されています。

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しかし研究グループは、過去から現在に至るまでの中性子星どうしの衝突頻度を考慮すると重元素の量を説明するには不十分であり、中性子星の役割が過大評価されていた可能性があると指摘。「一番楽観的な衝突頻度でさえ元素の豊富さを説明できません。これには驚きました」と語るKarakas氏は、強い磁場を持ち回転する超新星が供給源となっている可能性に言及しています。

研究グループによると、元素が生成されるプロセスは1つだけではなく、たとえば炭素のうち半分は白色矮星へと進化しつつある比較的質量の小さな恒星から、残りの半分は質量の大きな恒星の超新星爆発で放出されるといいます。また、鉄の半分は質量の大きな恒星の超新星爆発に、残りの半分は恒星と連星を成す白色矮星が起こすIa型の超新星爆発に由来するといいます。

「水素は別として、1つのプロセスだけで生成される単一の元素はありません」と語る小林氏は、金の生成についてキロノバ以外の恒星爆発などを考える必要があるかもしれないとコメント。研究に参加したコンコリー天文台/モナシュ大学のMaria Lugaro氏は、世界各地で進められている研究をもとに、モデルで不足している金の謎はそう遠くないうちに解決されるかもしれないと考えています。

 

Image Credit: ESO/L. Calçada/M. Kornmesser
Source: ASTRO 3D
文/松村武宏