中性子星どうしが合体する瞬間を描いた想像図(Credit: University of Warwick/Mark Garlick/ESO)

理化学研究所のMaria Dainotti氏らの研究グループは、広大な宇宙で正確な距離を測定する上で、中性子星どうしの合体にともなう爆発現象「キロノバ」と同時に発生する「ガンマ線バースト(GRB)」が利用できる可能性を示した研究成果を発表しました。

地球から別の銀河までの距離を測るには、真の明るさ(絶対光度)が一定とされる「Ia型超新星」が利用されています。こうした天体は「標準光源」と呼ばれていて、Ia型超新星の他にも「ケフェイド変光星」(真の明るさが明るいほど変光周期が長い)などが用いられています。

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今回、研究グループは新たな標準光源としてガンマ線バーストに注目しました。ガンマ線バーストは突発的に大量のガンマ線が降り注ぐ激しい現象で、太陽が100億年の一生をかけて放出するのと同程度のエネルギーがわずか数秒以内に放出されるといいます。

このように強力なガンマ線バーストはIa型超新星よりもはるかに遠くで発生したものも観測されているといい、もしもガンマ線バーストを標準光源として利用することができれば、宇宙を測定するための最も長い「ものさし」として利用できることになります。

研究グループがNASAのガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」の観測データを分析したところ、ガンマ線バーストのなかでもキロノバと同時に発生するショート(短時間)ガンマ線バーストの解析結果の分布が、Dainotti氏らの以前の研究で示された「GRBの基本平面」に近く、標準光源として優れた性質を持つことが明らかになったといいます。

GRBの基本平面とはDainotti氏らの命名によるもので、以前の研究において「X線残光プラトーフェーズ(※)の継続時間」「X線残光プラトーフェーズ終了時のX線光度」「即時放射中におけるガンマ線光度」をもとにガンマ線バーストの物理量を3次元物理空間にプロットすると、データがこの平面に集まる法則が明らかになったといいます。この法則を利用すると絶対光度を求められることから、研究グループではガンマ線バーストを標準光源として利用できると考えています。

※…ガンマ線バーストの即時放射に続くX線の残光の光度がほぼ一定な期間

キロノバと同時発生するショートガンマ線バースト(黄色)と、キロノバを伴わないガンマ線バースト(赤色)の3次元物理空間における分布を示した図。前者はGRBの基本平面(灰色)からのずれが小さく、基本平面の下に分布していることがわかる(Credit: 理化学研究所)

冒頭でも触れたように、キロノバは中性子星どうしの衝突・合体にともなう爆発現象です。2017年8月17日には中性子星の合体にともなう重力波「GW170817」とともにショートガンマ線バーストが検出されたといい、可視光線、赤外線、紫外線、X線といったあらゆる波長の電磁波でもキロノバが観測されています。

今回の成果について研究グループは、人類にとって宇宙の距離を測定する最長の「ものさし」としてガンマ線バーストが利用できる可能性を示したものであり、遠方宇宙の正確な観測をはじめ、この「ものさし」が宇宙そのものの進化を理解する上で重要な役割を果たすことになると期待を寄せています。

 

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Image Credit: University of Warwick/Mark Garlick/ESO
Source: 理化学研究所
文/松村武宏