天文学者のJerry Ehman氏が「Wow!」と記したデータのプリントアウト。赤で囲まれた強力な信号は「Wow! シグナル」と呼ばれている

天文学者のJerry Ehman氏が「Wow!」と記したデータのプリントアウト。赤で囲まれた強力な信号は「Wow! シグナル」と呼ばれている(Credit: Big Ear Radio Observatory and North American AstroPhysical Observatory)

1977年8月15日、SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトの下で知的生命体からの信号を求め観測を続けていたビッグイヤー電波望遠鏡(オハイオ州、アメリカ。1998年に解体)は、「いて座」の方向から断続的ではあるものの強力な信号を72秒間に渡り受信。データを分析した天文学者のJerry Ehman氏は、印刷されたデータの該当部分に「Wow!」と驚きの言葉を書き記しました。

Ehman氏の注釈から「Wow! シグナル」と呼ばれるようになったこの信号、人類の活動に由来する可能性は除外されたものの、当時の調査では検出された方向に発信源らしき天体(知的生命体が住む惑星が存在しそうな恒星など)は見つからず、その起源は今もわかっていません。ビッグイヤー電波望遠鏡ではWow! シグナルの再受信が試みられましたが、同様の信号は二度と捉えられることはありませんでした。

受信から40年以上が経った現在、アマチュア天文学者のAlberto Caballero氏はESA(欧州宇宙機関)の宇宙望遠鏡「ガイア」の観測データに注目しました。2013年に打ち上げられたガイアは天体の位置や運動について調べるアストロメトリ(位置天文学)に特化した宇宙望遠鏡で、2018年には約13億個もの星々についての年周視差と固有運動、言い換えれば星までの距離や星の動きに関する観測データ(DR2)が公開されています。1970年代には見つからなかったWow! シグナルの発信源候補が、ガイアの観測データから見つかるかもしれないとCaballero氏は考えたのです。

Wow! シグナルの発信源があると思われる「いて座」内の狭い領域に位置する星のうち、温度、直径、光度が太陽に似ていて発信源の候補になりそうなものをCaballero氏がピックアップしたところ、太陽と同じG型星や一回り小さなK型星が合計66個該当。その一つ、約1800光年先にある「2MASS 19281982-2640123」は推定される表面温度が摂氏約5500度で、直径と光度は太陽とほぼ同じという、この領域で唯一太陽にそっくりな恒星だといいます。

Wow! シグナルの発信源が位置するとみられる領域で唯一の太陽によく似た恒星(中央)。Caballero氏の論文より(Credit: Caballero et al., PanSTARRS/DR1)

ただし、この恒星がWow! シグナルの発信源だと直ちに断定することはできません。Caballero氏は自身の論文(arXivで公開中)において、ガイアのデータアーカイブに登録されていない星や現在の観測技術では検出できない星、さらには天の川銀河の外にWow! シグナルの発信源が存在する可能性に触れています。

それでもCaballero氏は、2MASS 19281982-2640123が本当に太陽と瓜二つかどうかを判断するには年齢や組成などについてのさらなる観測が必要とした上で、この星がシグナルに結びつく知的生命体が住んでいそうな太陽系外惑星を探す重要な観測対象になるかもしれないと言及しています。

 

Image Credit: Big Ear Radio Observatory and North American AstroPhysical Observatory
Source: Astronomy
文/松村武宏