ジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」が観測した「こぎつね座CK星」

ジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」が観測した「こぎつね座CK星」(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA)

インド物理学研究所(PRL)のDipankar Banerjee氏らは、17世紀に現在の「こぎつね座」で発見された「新星(nova)」までの距離が従来考えられてきたよりも5倍遠く、本来の明るさ(絶対光度)も想定より明るかったとする研究成果を発表しました。

■17世紀に観測されたのは一般的な新星ではなかった

1670年、フランスの修道士であり天文学者のヴォワチュール・アンテルムは「はくちょう座」の頭の近くに新星が出現しているのを発見しました。その新星は数カ月間に渡り北極星に匹敵する明るさで輝いた後に一旦見えなくなったものの、1671年や1672年にも再び出現と消滅を繰り返したといいます。ポーランドのヨハネス・ヘベリウスやイタリアのジョヴァンニ・カッシーニといった著名な天文学者も、この新星を観測しています。

現在、新星が発見された位置には「こぎつね座CK星」と呼ばれる天体が確認されていて、コンパクトな天体を中心に砂時計型の星雲が広がっている様子が「アルマ望遠鏡」などの観測によって明らかになっています。当時目撃されたのは古典新星(※)だったと考えられてきましたが、こぎつね座CK星は一般的な新星ではなく天体どうしの衝突によって起きる「高輝度赤色新星」と呼ばれるより激しい現象であり、現在観測されているのはその名残ではないかとする説が2015年に発表されました。

※…白色矮星と恒星から成る連星において、恒星から白色矮星に降り積もり続けたガスが爆発的な核融合反応を起こす現象

衝突した天体については2018年に「片方が赤色巨星だった」とする説と「白色矮星と褐色矮星だった」とする説が登場しており、今も結論は出ていません。今回、Banerjee氏らの研究グループはハワイのマウナケア山にある「ジェミニ北望遠鏡」を使い、こぎつね座CK星の星雲が膨張する速度を調べました。研究グループには「白色矮星と褐色矮星の衝突」説を提唱したキール大学のNye Evans氏も参加しています。

その結果、ガスが時速約700万km(秒速約2000km)という「予想外の高速」(Banerjee氏)で動いていることが判明。観測データを分析したところ、こぎつね座CK星までの距離が従来考えられてきた約2000光年より5倍も遠い約1万光年であることを示す結果が得られたといいます。

天体の明るさは距離の2乗に反比例するため、見かけの明るさが同じだった場合、5倍遠い場所にある天体の本来の明るさは25倍明るいことになります。つまり、こぎつね座CK星の場所で17世紀に出現が観測された「新星」は、従来の想定よりも25倍明るい現象だったことになるのです。

■距離は更新されたが爆発の正体は謎のまま

アルマ望遠鏡が電波(ミリ波)で観測したこぎつね座CK星における塵の分布(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. P. S. Eyres)

高輝度赤色新星は新星よりも明るく超新星ほど明るくはない現象とされていますが、研究グループは高輝度赤色新星とされる他の事例と比べてこぎつね座CK星における膨張速度はずっと速く、ピーク時の絶対光度もずっと高いことを指摘しており、新星と超新星の中間にあたる別のタイプの爆発が起きたと考えています。

ただし、地球からの距離が5倍遠かったことは判明したものの、今回の研究でもこぎつね座CK星で何が起きたのかを解き明かすには至っていません。Banerjee氏は「現段階では1670年に観測された現象の起源について納得できる説明を示すのは困難です。発見から350年が経ちましたが、爆発の性質は謎のままです」とコメントしています。

 

Image Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA
Source: NOIRLab
文/松村武宏