ESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」の2019年6月における観測データをもとに作成された火星の画像(Credit: ESA/DLR/FU Berlin (G. Neukum))

ESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」の2019年6月における観測データをもとに作成された火星の画像(Credit: ESA/DLR/FU Berlin (G. Neukum))

2021年2月は火星に探査機や探査車が相次いで到着します。日本時間2月10日にアラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「HOPE」(アル・アマル)が、同日頃には中国初の火星探査機「天問1号」が火星の周回軌道に入る予定。日本時間2月19日にはアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance」(パーセベランス、パーサヴィアランス)が火星に着陸する予定となっています(いずれも2月9日現在)。

そんな火星は2月7日に「新年」を迎えました。「ソル」と呼ばれる火星の1日の長さは地球の1日に近い約24時間39分ですが、地球よりも太陽から離れた軌道を公転している火星の1年(火星年、Mars Year)は地球の1年と比べて約1.88倍長い約687日(約668ソル)。始まったばかりの火星の「今年」は、地球における2022年のクリスマス頃まで続きます。

火星は地軸が約25.2度傾いているため、地球のように春夏秋冬の季節があります。火星の1年は火星における春分からスタートするので、これから火星の北半球は春から夏へ、南半球は秋から冬へと季節がうつろうことになります。1年の長さが地球の2倍近いため、火星では季節の変化も地球よりゆっくりと進みます。

ただし、火星の軌道は地球よりもつぶれた楕円形に近い(軌道離心率が大きい)ため、地球とは違い各季節の長さに目立った違いがあります。欧州宇宙機関(ESA)によると火星で最も長い季節は194ソル続く北半球の春・南半球の秋で、反対に最も短い季節は142ソル続く北半球の秋・南半球の春とされています。

NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」によって撮影された2018年5月(左)と7月(右)に撮影された火星の様子。7月の火星は地表の大部分が砂嵐に覆われている(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」によって撮影された2018年5月(左)と7月(右)に撮影された火星の様子。7月の火星は地表の大部分が砂嵐に覆われている(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

楕円形の軌道は火星の気象現象にも影響を及ぼします。火星が太陽に最も近づくタイミングは北半球の冬至に近く、南半球が春から夏を迎える頃にあたりますが、この時期は大気が暖められることで砂嵐が発生しやすく、時には火星全体を覆うほどの大規模な砂嵐に発展することもあります。最近では2018年5月末頃に発生した砂嵐が火星全体へと拡大しましたが、これは火星の「一昨年」における南半球の春の出来事でした。

また、この頃にはタルシス三山のうち一番南にあるアルシア山から細長い雲が伸びることが知られていて、2020年7月(火星の南半球における「去年」の春)にESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」が撮影した雲は長さ1800kmに達し得たと推定されています。こうした雲は早朝から3時間ほどかけて成長した後に数時間ほどで急速に消滅するといい、この時期は80日間以上に渡り日々出現と消滅を繰り返すとされています。

なお、火星年は1956年に火星全球規模の砂嵐が観測された年を「1年」としてナンバリングされており、火星の「今年」は36年となります。将来、火星に移住した人類が暮らし始める頃には、こうした現地の日時や季節を示す火星の暦が地球の暦とあわせて使われるようになるかもしれません。

火星のアルシア山から伸びる雲。2020年7月17日と19日にマーズ・エクスプレスが撮影(Credit: ESA/GCP/UPV/EHU Bilbao)

火星のアルシア山から伸びる雲。2020年7月17日と19日にマーズ・エクスプレスが撮影(Credit: ESA/GCP/UPV/EHU Bilbao)

 

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Image Credit: ESA/GCP/UPV/EHU Bilbao
Source: ESA / アメリカ惑星協会
文/松村武宏