宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2021年2月5日から3月19日まで、秋から始まる6回目の日本人宇宙飛行士募集について、一般からの意見を募集しています。内容は応募資格や選抜方法についてです。

これに連動して、2月18日夜、JAXAは公開youtubeライブ「宇宙探査時代の新たな宇宙飛行士選抜への挑戦〜これからの時代に求められる飛行士の資質と、選抜・訓練の新たな可能性〜」を放送しました。
各界の識者をパネリストに呼んで「宇宙飛行士募集はどんな条件が良いのだろう」「どんな選抜方法が良いのだろう」「どんな人が適正があるのだろう」と討論する内容でした。

イベントの様子(Credit: JAXA)

イベントの様子(Credit: JAXA)

イベントの様子(Credit: JAXA)

イベントの様子(Credit: JAXA)

今までの募集と今回の募集の違いについて整理します。

これまでは条件に当てはまる人だけが応募できる方式

これまでの宇宙飛行士公募(Credit: JAXA)

これまでの宇宙飛行士公募(Credit: JAXA)

旧宇宙開発企業団(NASDA)・JAXAを通じ、これまで宇宙飛行士募集は5回ありましたが、全て組織内で募集要件や基準を定めて公開し、当てはまる人は応募してください、というスタイルを取ってきました。第5回(2008年)の主な応募条件をまとめます。

・日本国籍があること
・大学(自然科学系)卒業以上であること。 自然科学系とは理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等。
・自然科学系分野における3年以上の実務経験を有すること。(なお、修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす)

参考:https://iss.jaxa.jp/astro/select2008/index.html(2008年の宇宙飛行士募集のポータルページ:JAXA)

日本人で理科系大学学部卒、そして専門分野での3年以上の実務経験という高いハードルで、応募者数は963名にとどまりました。同時期のNASAなどは1万人を超える応募があったとのこと。
この時に選抜されたのは大西卓哉さん・油井亀美也さんの両宇宙飛行士で、後に補欠合格として金井憲茂さんが加わりました。

今回はどんな条件が良いか、一般の意見を参考にして決める方式

今回の募集では、より門戸を広げ、多くの人に応募してもらいたいという観点から、大幅に条件が緩和されることが検討されています。パブリックコメント開始と共に公開した検討案には、学歴を「大学・大学院、短大、高専、専門学校卒業以上。分野は問わない。」、実務経験を「3年以上の実務経験(分野は問わない)」、「宇宙飛行士に採用された後、必ずしも所属している会社や組織を退職してJAXAに入社しなくても良い」、などが例として挙げられています。

今回検討されている条件(Credit: JAXA)

今回検討されている条件(Credit: JAXA)

「検討」「例」と述べましたが、これらはまだ決定していません。今回の募集条件と選抜方法は、国民の意見を広く聞くパブリックコメントという方法をとり、そこで出てきたコメントを参考にして決める方針になっています。これは、裾野を広げるために準備の段階から知らせる意図があるとのこと。
つまり、この記事を読んでいる方も宇宙飛行士の募集条件に意見できるチャンスがあって、多くの人が同じ意見ならば、これまで募集対象でなかった文科系や芸術系の方なども応募できるようになるかもしれないということです。これは初めての試みで、大きな方針転換です。

JAXAに意見を送るということで「私など」と尻込みしてしまう方もいるかも知れません。このことについて募集を担当するJAXA有人宇宙技術部門事業推進部長の川崎一義さんに質問したところ、
「我々は全てのコメントに目を通して吟味します。今回のyoutube(注:冒頭で紹介したイベント)のコメント欄に書き込まれたものもパブリックコメントの一つと考えて拾っていきます。今後5年に1回程度宇宙飛行士の募集を行う計画なので、5年後に向けたコメントでも構いませんし、将来の火星に向けての話でも構いません。月の探査は、20・30年、もしかしたら50、100年の単位でやっていくようなもの。今の人たちが大人になって、あるいは子供を産んだときにどういう世界になっているかは分かりませんが、希望なども含めて色々な意見を伺えればと思います」
という答えでした。

JAXAとしては意見や希望、思いをたくさん寄せてもらいたい。現在だけでなく将来のことでも良い。宇宙飛行士の条件や選び方を一緒に考えて下さい、という思いが込められています。

適正があれば分野は問わないが、特別待遇もしない

JAXAは、間口を広げさまざまな背景を持つ人に応募して欲しいと強調していましたが、一方、「文系枠」のようにそれ以外の属性の人が合格しない枠を作ることは考えていないとのこと。あくまでも宇宙飛行士の任務に対して最も適正がある人を採用するのであって、それがたまたま文系だったということもあるだろう、というスタンスです。

なお、世界を見渡してみても宇宙飛行士は圧倒的に理科系出身者が多数です。スペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故で殉職したマコーリフ飛行士は教育学と歴史学出身の教員ですが、これは「教員」に限定しての募集だったため、特に文科系を意識したものではありませんでした。

宇宙飛行士は飛行機のパイロット出身の人が多いですが、その中には文科系出身で、これまで応募資格のなかった人がいます。また、応募したいけれども様々な都合で今の職を離れられない人もいるでしょう。他にもさまざまな可能性が考えられますが、今までの募集では弾いてしまっていた属性の人の中に、もしかしたら宇宙飛行士にふさわしい人がいるかもしれない。その人に出会うために間口を広げたい。このような意図のもと、意見を募集しています。

以下からJAXAに意見(パブリックコメント)を送ることができます。
・宇宙飛行士候補者の募集・選抜・基礎訓練に関する意見募集(パブリックコメント)について
https://iss.jaxa.jp/topics/2021/01/210120_public.html

企業向けには、人材の評価や育成、効果的なアウトリーチ手法などのノウハウ・アイデアを活用するための情報提供依頼(RFI)が行われているので、併せて紹介します。
・新たな宇宙飛行士候補者の募集・選抜・基礎訓練に関する情報提供依頼(RFI)の開始について
https://iss.jaxa.jp/topics/2021/01/210120_rfi.html

 

Image Credit: JAXA , Shutterstock
文/金木利憲