【▲ 月に着陸したHLS(有人着陸システム)仕様のスターシップを描いた想像図(Credit: SpaceX)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間4月17日、有人月面探査計画「アルテミス」で使用される着陸船「有人着陸システム(HLS:Human Landing System)」の開発を担当する企業として、「スターシップ」を提案するスペースXが選定されたことを発表しました。計画が予定通り進めば、2024年に月面へ降り立つ2名の宇宙飛行士はスターシップに乗って着陸することになります。

HLSの開発については昨年5月、ブルー・オリジン、ダイネティクス、スペースXの3社がNASAに選ばれており、各々が提案する着陸船の検討・開発が期限付きで進められていました。今回の選定によって、HLSの開発はスペースXによって継続されることになります。NASAによると契約額は28億9000万ドルとされています。

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スペースXが開発中のスターシップは、全長50m、直径9mの再利用型宇宙船です。全長70mのブースター「スーパーヘビー」と組み合わせることで、クルー型(旅客輸送用)は100名、カーゴ型(貨物輸送用)は100トンのペイロード(人工衛星などの搭載物)を地球低軌道に打ち上げることが可能とされています。

アルテミス計画向けのスターシップはHLSとして独自の仕様になっており、大気圏内で使用される姿勢制御用のフラップや耐熱システムなどを省略する代わりに、月面で飛行士が乗降するための2か所のエアロックや、地表に降りるためのエレベーターを備えています。有人宇宙船「オリオン」に乗って地球を出発した宇宙飛行士は月を周回する軌道上でスターシップに乗り換えて着陸し、ミッションを終えて月面を離れた後はオリオン宇宙船に乗り換えて地球へ帰還します。

スペースXは有人宇宙船「クルードラゴン」による国際宇宙ステーション(ISS)への運用飛行を担うだけでなく、アルテミス計画で中継地点となる月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設における最初のモジュールの打ち上げや、ゲートウェイへの補給物資輸送ミッションを担当する企業としても選ばれています。月を越えて火星やさらに遠くの天体への飛行も見据える同社のスターシップがHLSに選ばれたことで、今後の宇宙開発・宇宙探査におけるスペースXの重要性は今まで以上に高まることになりそうです。

なお、スターシップは宇宙旅行にも用いられる予定で、2023年にはZOZOの元社長・前澤友作氏らが月周辺を飛行する計画が発表されています。また、スペースXのCEOイーロン・マスク氏は、スターシップによる火星への飛行を2020年代に実施する目標を明らかにしています。

【▲ 2021年3月4日の飛行試験における着陸直前のスターシップ試験機「SN10」(Credit: SpaceX)】

 

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Image Credit: SpaceX
Source: NASA
文/松村武宏