連星「HD 265435」の約3000万年後の姿を描いた想像図(Credit: University of Warwick/Mark Garlick)

【▲ 連星「HD 265435」の約3000万年後の姿を描いた想像図(Credit: University of Warwick/Mark Garlick)】

こちらは「ふたご座」の方向およそ1500光年先にある連星「HD 265435」の、今から約3000万年後の姿を描いた想像図です。HD 265435は白色矮星と高温準矮星からなる連星で、現在観測されている2つの星は互いの周りを約100分という短い周期で公転し合っています。想像図では、白色矮星(右上)の重力によって高温準矮星(左下)が涙滴型(しずく型)にゆがんでいる様子や、高温準矮星から流れ出たガスが白色矮星に向かって流れ込んでいく様子が描かれています。

ウォーリック大学のIngrid Pelisoli氏らの国際研究グループは、HD 265435をなす白色矮星と高温準矮星が、将来合体して超新星爆発を引き起こす可能性を示した研究成果を発表しました。

■7000万年後に合体してIa型超新星が起きる可能性

白色矮星とは、太陽のように比較的軽い恒星(質量が太陽の8倍以下)が赤色巨星を経て進化した天体です。核融合反応を起こさず予熱で輝く天体なので、恒星としては死を迎えた姿とも言えます。白色矮星は高密度な天体で、直径は地球と同じくらいですが、質量は太陽と同程度〜半分ほどとされています。

白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)を比べたイメージ図(Credit: ESA/NASA)

【▲ 白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)を比べたイメージ図(Credit: ESA/NASA)】

この白色矮星が別の恒星と連星をなしていた場合、恒星のガスが白色矮星に引き寄せられて表面に降り積もることがあります。ガスが降り積もることで白色矮星の質量は増えていきますが、ある上限を超えたときに炭素の暴走的な核融合反応が生じ、「Ia型超新星」を起こして吹き飛ぶと考えられています。Ia型超新星が起きるかどうかの境目となる質量は太陽の約1.4倍とされていて、「チャンドラセカール限界質量」と呼ばれています。

研究グループによると、アメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」によるHD 265435の観測データには、近くにある白色矮星の重力によって高温準矮星がしずく型にゆがんでいることを示す明るさの変化が記録されていました。また、カリフォルニア州のパロマー天文台とハワイ州のW.M.ケック天文台による観測データとシミュレーションモデルを使って分析したところ、HD 265435をなす白色矮星の直径は地球よりもやや小さく、質量は太陽とほぼ同じであることも明らかになったといいます。

いっぽう、高温準矮星の質量は太陽の約0.6倍で、白色矮星も合わせたHD 265435全体の質量は太陽の約1.6倍とされています。これは前述のチャンドラセカール限界質量を上回っており、もしも白色矮星と高温準矮星が合体すれば超新星爆発を起こすことが考えられるといいます。研究グループは、HD 265435をなす2つの星はすでに十分接近しており、今後は重力波を放出してエネルギーを失いながらますます近づいていき、約7000万年後に合体してIa型超新星に至ると考えています。

真の明るさ(絶対等級)が判明している天体までの距離は、観測された見かけの明るさをもとに割り出すことができます。Ia型超新星は真の明るさがどれも比較的一定とされているため、見かけの明るさを測定すれば発生した銀河までの距離を知ることが可能です。こうした天体は「標準光源」と呼ばれていて、Ia型超新星は現在の宇宙の膨張速度を示す「ハッブル定数」を求めるために古くから用いられてきた、宇宙論を研究する上で重要な天体でもあります。

しかし、Ia型超新星をもとに算出されたハッブル定数と、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)など他の手段を用いて算出されたハッブル定数には9パーセントほどの違いがあります。研究を率いたPelisoli氏は、異なる手段で導き出されたハッブル定数が食い違っている現状において、Ia型超新星の仕組みを理解して標準光源としての精度を高めるのは重要なことだと語っています。

 

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Image Credit: University of Warwick/Mark Garlick
Source: ウォーリック大学
文/松村武宏