ボローニャ大学/イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のJianxing Chen氏らの研究グループは、「ハッブル」宇宙望遠鏡による観測データを分析した結果、一部の白色矮星では表層に残った水素の安定した水素燃焼(水素の核融合反応)が起きているとする研究成果を発表しました。

比較的軽い恒星が進化した姿である白色矮星は、自ら核融合反応は起こさず余熱で輝くのみだと考えられてきました。研究を率いたChen氏自身が「大変驚きました」と語る今回の成果は白色矮星に関する従来の認識とは合致せず、白色矮星の年齢や、それをもとに推定されてきた球状星団・散開星団の年齢を見直すことにつながるかもしれません。

■白色矮星における安定した水素燃焼の観測的証拠が初めて得られた

白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)を比べたイメージ図(Credit: ESA/NASA)

【▲ 白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)を比べたイメージ図(Credit: ESA/NASA)】

恒星の最期というと超新星爆発を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、質量が太陽の8倍以下の比較的軽い恒星は超新星に至らず、赤色巨星に進化した段階で外層からガスを放出した後に、コア(中心核)の部分が残った白色矮星へ進化すると考えられています。

白色矮星は地球と同程度のサイズですが、質量は太陽の半分〜1個分ほどもある高密度な天体です。冒頭でも触れたように、白色矮星は恒星だった頃の余熱で輝く天体であり、自ら核融合反応を起こさないと考えられていました。

今回、Chen氏らはハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」を使用し、天の川銀河にある2つの球状星団「M3」および「M13」の白色矮星を近紫外線の波長で観測しました。M3とM13は年齢や金属(水素やヘリウムよりも重い元素)の含有量がよく似ており、星の種族を比較研究する上で理想的な対象なのだといいます。

観測の結果、恒星の数はM3よりもM13のほうが少ないにもかかわらず、同じ明るさの範囲における白色矮星の数はM3が326個であるのに対し、M13では460個も検出されました。データを分析したところ、M3の白色矮星はどれも標準的だったものの、M13の白色矮星は標準的なものと水素の薄い外層を持つものの2種類が存在することが判明。恒星進化のシミュレーションと比較した結果、M13の白色矮星のうち約7割では表層で安定した水素燃焼が起きている可能性が示されました。

白色矮星が別の恒星と連星を組んでいる場合、恒星から流れ出て白色矮星の表面に降り積もった水素ガスが暴走的な熱核反応を起こして表層が吹き飛ぶ「新星」(古典新星とも)や、ガスが降り積もり続けて白色矮星の質量が太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に達したことで発生する「Ia型超新星」に至ることがあるとされています。ただし、新星やIa型超新星は一時的な激しい現象であり、安定した水素燃焼とは異なります。Chen氏は「白色矮星でもまだ起こる安定した熱核反応の観測的な証拠が初めて得られました」と語ります。

■球状星団や散開星団の年齢が見直しを迫られる可能性

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した球状星団「M3」(右)と「M13」(左)(Credit: SCIENCE: ESA, NASA, Giampaolo Piotto)

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した球状星団「M3」(右)と「M13」(左)(Credit: SCIENCE: ESA, NASA, Giampaolo Piotto)】

表層で安定した水素燃焼を起こす白色矮星がM13には存在するのにM3には見られない理由については、白色矮星へと進化した恒星の質量が関係しているとみられています。研究グループによると、白色矮星に進化する星が恒星としての最期に近付いたとき、比較的重い星の場合は対流によって外層の水素が内側へと運ばれて燃焼するため、誕生する白色矮星には水素が残りません。これに対し、比較的軽い一部の星では外層の水素が内側へと運ばれるプロセスが生じないといいます。M13の星々はM3と比べてわずかに軽い傾向があるといい、白色矮星に水素が残存しやすかったようです。

研究に参加したボローニャ大学のFrancesco Ferraro氏によると、白色矮星が維持できる水素の表層は質量が太陽の1万分の1程度という大変薄いものながら、最小限の熱核反応が可能とされています。

今回の成果が正しかった場合、研究者は白色矮星の年齢を推定し直す必要に迫られるかもしれません。余熱で輝き時間とともに冷えていく天体だとみなされていた白色矮星の年齢は、これまで表面温度との比較的単純な関係をもとに推定されてきました。表面温度が高い白色矮星ほど年齢が若く、温度が低くなるほど年齢を重ねているというわけです。

しかし、表層で安定した水素燃焼が続いている場合は冷え方が遅くなるため、白色矮星の年齢が実際よりも若く見積もられるかもしれません。研究グループによると、推定される年齢には最大で10億年の誤差が生じる可能性があるといいます。また、球状星団や散開星団の年齢を求める上で、表面温度から推定された白色矮星の年齢は一種の時計として用いられてきたといい、今回の成果によって星団の年齢も見直しを迫られることになるかもしれません。

 

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Image Credit: SCIENCE: ESA, NASA, Giampaolo Piotto
Source: STScI / MEDIA INAF
文/松村武宏