【▲ NASAの火星探査機「インサイト」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

【▲ NASAの火星探査機「インサイト」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は5月17日、NASAの火星探査機「InSight(インサイト)」のミッションが2022年12月頃に終了する見込みであることを明らかにしました。

2018年11月27日にエリシウム平原へ着陸したインサイトは、火星の内部構造解明を目的に開発された探査機です。ミッションは着陸から2年間(火星での約1年間)の予定でしたが、2022年12月まで2年間延長されています。

着陸翌月の2018年12月に設置された火星地震計「SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)」は、これまでに1300件以上の「火震」(火星の地震)を検出。SEISが検出した地震波の解析によって、火星のコア(核)が液体であることをはじめ、コアのサイズ、地殻の厚さなどが判明しています。先日は火星での観測史上最大の規模となるマグニチュード5の地震がSEISによって検出されました。

そのいっぽう、SEISと並ぶ主要な観測装置だった地中熱流量計測装置「HP3(Heat Flow and Physical Properties Package)」は、地下5mを目指して潜っていく計画だった地中センサーの前進が難航。想定とは性質が異なっていた土から十分な摩擦を得ることができず、地中センサーを表面直下よりも深いところへ進ませることができませんでした。HP3は一足早く2021年1月に運用を終えています。

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【▲ 砂に覆われたインサイトの太陽電池アレイの1つ。2022年4月24日撮影(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

【▲ 砂に覆われたインサイトの太陽電池アレイの1つ。2022年4月24日撮影(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

インサイトは2枚の太陽電池アレイから電力を得ていますが、その表面には風で舞い上がった細かい砂が積もり続けています。JPLによると、着陸当初の電力量は1ソル(※)あたり約5000ワットアワーだったものの、2022年5月現在はその10分の1となる約500ワットアワーしか得られていません。限られた電力を有効に利用するために、インサイトの運用チームはSEISによる地震の検出を優先しつつミッションを継続しています。

※…1ソルは火星での1太陽日、約24時間40分。

しかし、火星では今後数か月に渡り季節変化にともなって大気中の塵が増加し、日差しが弱まるために、利用可能な電力がさらに減っていくことになるといいます。そのため、2022年5月末以降はSEIS以外の科学装置を作動させる機会はほぼなくなり、夏の終わりにはSEISも停止されて、インサイトは科学観測を終える見込みです。

JPLによると、もしも塵旋風によって太陽電池から砂が吹き払われれば、電力不足が解消される可能性もあるようです。太陽電池アレイの25パーセントだけでも砂がなくなれば、電力量は1ソルあたり約1000ワットアワー(現状の2倍)に回復するといいます。かつて運用されていたNASAの火星探査車「スピリット」や「オポチュニティ」では風による太陽電池の掃除が何度か起きていて、インサイトの運用チームも同様の効果を期待しているものの、電力量を回復させるほどの風はまだ吹いていません。

科学観測を終えた後のインサイトは、地球との通信を継続したり、時折撮影した画像を送信したりするための電力は確保できるようです。しかし、2022年12月頃には得られる電力量がかなり低くなり、通信も途絶すると予想されているとのことです。

【▲ インサイトが撮影した火星の日の出。2022年4月10日撮影(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

【▲ インサイトが撮影した火星の日の出。2022年4月10日撮影(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

 

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Source

Image Credit: NASA/JPL-Caltech NASA/JPL - NASA’s InSight Still Hunting Marsquakes as Power Levels Diminish

文/松村武宏