【▲ 楕円銀河「NGC 541」(Image Credit: NASA, ESA, and S. Croft (Eureka Scientific Inc.); Image Processing: Gladys Kober (NASA Goddard/Catholic University of America))】

【▲ 楕円銀河「NGC 541」(Image Credit: NASA, ESA, and S. Croft (Eureka Scientific Inc.); Image Processing: Gladys Kober (NASA Goddard/Catholic University of America))】

こちらは「くじら座」の方向約2億2000万光年先にある楕円銀河「NGC 541」の姿。撮影に使われたのは「ハッブル」宇宙望遠鏡です。

私たちが住む天の川銀河や「アンドロメダ銀河(M31)」のような渦巻銀河・棒渦巻銀河とは異なり、楕円銀河は渦巻腕(渦状腕)のような目立った構造を持たないタイプの銀河です。画像のNGC 541も、中心に向かうほど明るくぼんやりと輝いた銀河として写っています。ただし、NGC 541には人の目には見えない特徴があるようです。

アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、NGC 541は「電波ジェット」を放出しているといいます。電波ジェットとはその名の通り電波で観測されるジェットのことで、可視光線を捉える私たちの目には見えませんが、電波望遠鏡を使うと観測することができます。このジェットは、NGC 541の中心に潜む超大質量ブラックホールへと落下していくガスが形成した降着円盤に由来すると考えられています。

NGC 541から放出されたジェットは、周囲の環境に影響を及ぼしているようです。画像を見ると、NGC 541の左下(画像の中央下)に青い雲のような天体が写っています。これは「Minkowski’s Object(ミンコフスキーの天体)」と呼ばれている不規則銀河で、約2000万個の星々で構成されています。NASAによれば、観測された“ミンコフスキーの天体”は形成されてから約750万年が経っているとみられていますが、その星形成活動を誘発したのはNGC 541の電波ジェットだったのではないかと考えられています。

予想されたプロセスは次のとおり。NGC 541から放出されたジェットは、周囲にあった適度に高密度で温かいガスに流れ込みます。ジェットの流入にともなう衝撃波に圧縮・加熱されたことでガスは電離。電離したガスの雲は高いエネルギー状態から低いエネルギー状態へと移るときに放射線の形でエネルギーを失っていき、やがて冷えた雲が崩壊して星が形成されたというのです。

ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 541と“ミンコフスキーの天体”の観測は、この領域ではどのような種類の星形成活動がどのようにして起きたのか、そして星形成活動を引き起こしたジェットにはどのような特徴があるのかをより良く理解するために行われたとのことです。冒頭の画像は2022年5月23日付でNASAから公開されています。

 

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Image Credit: NASA, ESA, and S. Croft (Eureka Scientific Inc.); Image Processing: Gladys Kober (NASA Goddard/Catholic University of America) NASA - NGC 541 Fuels an Irregular Galaxy in New Hubble Image

文/松村武宏