【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」を使って撮影された海王星(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI))】

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」を使って撮影された海王星(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI))】

こちらは「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡に搭載されている近赤外線カメラ「NIRCam」を使って2022年7月12日に取得された海王星の画像です。

天王星とともに巨大氷惑星に分類される海王星には、水素やヘリウムが豊富な巨大ガス惑星である木星や土星と比べて、水やメタンといったより重い元素が豊富に存在しています。「ハッブル」宇宙望遠鏡のように可視光線で観測した海王星が青く見えるのは、大気に含まれているメタンが青い光を反射し、赤い光を吸収するからです。

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しかし、この画像の海王星は青く見えません。その理由は、ウェッブ宇宙望遠鏡が主に赤外線の波長で観測を行うからです。人の目は赤外線を捉えることができないので、この画像は取得時に使用された4種類のフィルターに応じて、赤・緑・オレンジ・青に着色されています(※)。

※…F460M:赤、F300M:オレンジ、F210M:緑、F140M:青でそれぞれ着色

太陽系の既知の惑星で最も外側にある海王星は、地球の30倍も太陽から離れています(約30天文単位)。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、海王星から見た太陽は小さくて暗く、正午の明るさは地球の薄暗い夕暮れ時の明るさに似ているといいます。

そんな遠くて薄暗い海王星の様々な特徴を、ウェッブ宇宙望遠鏡は鮮明に捉えました。冒頭の画像で特に印象的なのは、海王星本体を取り囲む幾つもの環の存在です。その一部は、1989年8月に海王星のフライバイ探査を行ったNASAの惑星探査機「ボイジャー2号」以来、30年以上も観測されていなかったといいます。NIRCamは細く明るい環だけでなく、かすかな塵の帯も捉えていますが、ウェッブ宇宙望遠鏡の観測に携わる海王星系の専門家Heidi Hammelさんによると、こうした塵の帯が赤外線の波長で観測されたのは今回が初めてなのだそうです。

また、海王星本体の南半球に見える明るい斑点は、高高度に浮かぶメタンの氷粒でできた雲を示しています。前述のようにメタンには可視光線の赤色光を強く吸収する性質がありますが、赤外線も同様に吸収されてしまうため、近赤外線の波長で観測する海王星は暗く見えます。しかし、高い高度に浮かんでいる雲は大気中のメタンが吸収する前に赤外線を反射するため、明るい筋や斑点のように目立つのだといいます。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」を使って撮影された海王星と7つの衛星(英語注釈付き)(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI))】

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」を使って撮影された海王星と7つの衛星(英語注釈付き)(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI))】

次に掲載するのは、海王星周辺のより広い範囲を収めた画像に注釈を加えたものです。この画像には既知の海王星の衛星14個のうち、その半分となる7個の衛星が写っています。冒頭の画像では海王星の環に明るい「こぶ」のようなものが写っていましたが、それらはガラテア(Galatea)やデスピナ(Despina)といった海王星の衛星だったことがわかります。

左上でひときわ明るく輝いているのは、海王星最大の衛星であるトリトン(Triton)です。NASAによれば、凝結した窒素の氷に表面が覆われているトリトンは、降り注ぐ太陽光の平均70パーセントを反射します。それゆえに、メタンが近赤外線を強く吸収することで暗く見える海王星と比べて、この画像のトリトンははるかに明るく見えるのだといいます。

ちなみにトリトンから放射状に伸びている針のような光は、ウェッブ宇宙望遠鏡の構造によって生じる回折スパイク(diffraction spike)と呼ばれるものです。回折スパイクはハッブル宇宙望遠鏡など、他の望遠鏡の画像にも現れることがあります。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」を使って撮影された海王星とその周辺(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI))】

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」を使って撮影された海王星とその周辺(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI))】

最後に掲載するのは、海王星周辺のさらに広い範囲が収められた画像です。左下に見える約10億光年先の棒渦巻銀河をはじめ、はるか遠くで輝く何百もの銀河が写り込んでいるといいます。

NASAによると、来年にはウェッブ宇宙望遠鏡による海王星とトリトンに関する追加の観測が計画されているとのことです。ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した海王星の画像は、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、ウェッブ宇宙望遠鏡を運用するアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)から2022年9月21日付で公開されました。

 

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Source

Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; IMAGE PROCESSING: Joseph DePasquale (STScI) NASA - New Webb Image Captures Clearest View of Neptune’s Rings in Decades ESA/Webb - New Webb Image Captures Clearest View of Neptune’s Rings in Decades STScI - New Webb Image Captures Clearest View of Neptune’s Rings in Decades

文/松村武宏