ジム・ハインズがメキシコ五輪で9秒95

陸上の華・男子100メートル。誰が一番速いのかを決める、最もシンプルだからこそ奥が深い競技だ。過去のオリンピックでは数々の名場面が繰り広げられたが、2021年の東京オリンピックではどんなドラマが待っているのだろうか。その前に男子100メートル世界記録の変遷を振り返ってみたい。

陸上男子100メートルの世界記録変遷

国際陸上連盟が初めて公認した世界記録は1912年の10秒6。ストックホルム五輪でドナルド・リッピンコット(アメリカ)が記録した。

当時は手動計時だったが、初めて電動計時で認定された世界記録は1968年のメキシコ五輪でジム・ハインズ(アメリカ)がマークした9秒95。ただ、標高2000メートルを超える高地での記録だったため、次に世界記録が更新されるまで15年かかった。

1983年にカルビン・スミスが9秒93をマークすると、翌1984年にセンセーションを巻き起こしたのがカール・ルイス。1984年のロサンゼルス五輪で100m(9秒99)、200m(19秒80)、走幅跳(8m54)、4×100メートルリレー(37秒83)の4種目で金メダルを獲得した。4×100メートルリレーではスミスが第三走者でルイスがアンカーだった。

世界記録を2度更新したカール・ルイス

1988年ソウル五輪。「ロケットスタート」のベン・ジョンソンとルイスの対決が世界中の注目を集めた。決勝ではジョンソンが9秒79の驚異的な世界新記録で優勝。9秒92のルイスは2位だったが、レース後にジョンソンのドーピングが発覚したためルイスが繰り上げで金メダル、9秒92は世界記録に認定された。

1991年6月、リーロイ・バレルが9秒90の世界新をマークし、ルイスとの対決が注目を集めた夏の世界陸上東京大会。国立競技場で今度はルイスが9秒86を叩き出し、再び世界一速い男となった。

しかし、1994年にバレルが9秒85を出して「最速」の称号を取り戻すと、1996年アトランタ五輪でドノバン・ベイリーが9秒84をマーク。ジャマイカ出身のカナダ国籍で、電動計時が導入されてから初めてアメリカ人以外の世界記録保持者となった。

ドーピングのベン・ジョンソンを除き、世界で初めて9秒7台で走ったのがモーリス・グリーンだ。1999年のアテネ国際グランプリで、世界記録を一気に0秒05も更新する9秒79をマーク。翌2000年シドニー五輪では9秒87で金メダルを獲得した。

その後、2002年にティム・モンゴメリが9秒78をマークしたが、3年後にドーピングが発覚して取消。次に更新するのはジャマイカのアサファ・パウエルだった。2005年、アテネで行われたスーパーグランプリで9秒77をマーク。さらに2年後の2007年には9秒74を叩き出した。

ウサイン・ボルトが不滅?の9秒58

そして「人類最速」ウサイン・ボルトが登場する。最初に世界記録を更新したのは2008年5月。ニューヨークで開催されたリーボック・グランプリで9秒72をマークした。

さらに同年8月の北京五輪では、ラストを流しながらも史上初の9秒6台となる9秒69をマーク。2位に0秒20差をつけての金メダルで、200メートルも世界新記録で優勝という離れ業を演じた。

翌2009年の世界選手権では、自身の記録を一気に0秒11も更新する9秒58で優勝。196cmの巨体と大きなストライドで加速する姿は世界を震撼させた。

その後、2012年ロンドン五輪、2016年リオデジャネイロ五輪と連続で100メートル、200メートル、400メートルリレーの三冠を達成。2017年の世界陸上を最後に現役を引退した。

2021年東京五輪では、ボルトに替わるニューヒーローが誕生するだろうか。その日を楽しみに待とう。

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