プロ4年目で投手転向した根尾

投手から野手転向して成功した例は少なからずあるが、逆に野手から投手に転向した例は少ない。メジャーでは時々あるものの、日本のプロ野球では転向すること自体が極めてレアケースだ。

そういう意味でも中日・根尾昂への注目度は高い。大阪桐蔭高時代は背番号6ながらマウンドにも立ち、春夏連覇に貢献。「打ってよし、投げてよし」のマルチな才能を発揮していたが、2018年ドラフト1位でプロ入り後は野手に専念していた。

しかし、1年目は一軍で2試合、2年目は9試合出場にとどまり、3年目は72試合に出場したものの打率.178とプロの壁に直面。4年目となった2022年5月21日の広島戦、1−10と大量リードされた8回に初登板して1回無失点に抑えると、6月21日には投手登録に変更された。その後は中継ぎや敗戦処理として、19試合に登板して勝ち負けなしの1ホールド、防御率4.19の成績を残している。

キャンプから野手として練習してきたにもかかわらず、いきなり150キロを超えるストレートを投げ込み、落ち着いたマウンドさばきを見せるなどポテンシャルの高さは証明済み。来季以降どういう使われ方をするのか分からないが、オフには投手として体力作りから始めてきちんとトレーニングを積めば、まだまだ伸びる余地はあるだろう。

投手→野手→投手の遠山奬志

また、台湾出身で、巨人・陽岱鋼の従兄弟にあたるオリックス・張奕も投手転向組だ。日本経済大から2016年育成ドラフト1位で外野手としてプロ入りし、2018年シーズン中に投手転向。2019年、2020年に計4勝を挙げており、今季も15試合に登板している。では、過去の例も見ていこう。

投手転向した主な選手


1985年ドラフト1位で八代第一高(現秀岳館)から阪神入りした遠山奬志は、ルーキーイヤーに8勝をマーク。同じ高卒左腕でドラフト1位だった大先輩にちなみ「江夏二世」と騒がれたが、2年目以降は低迷した。1990年オフに高橋慶彦との交換トレードでロッテに移籍。新天地でも未勝利のシーズンが続き、1995年に野手転向した。

しかし、1995年から3年間で計12試合出場、16打数3安打にとどまり、1997年オフに戦力外通告。古巣・阪神の入団テストを受けた遠山は、投手として復帰することが決まった。

「再生工場」と呼ばれた野村克也監督の下では、中継ぎとしてたびたび巨人・松井秀喜と対決し「松井キラー」として君臨。左打者のワンポイントで登板し、次の右打者では右のアンダースロー・葛西稔にマウンドを譲ってファーストを守り、続く左打者に対して再び登板する、いわゆる「遠山−葛西−遠山」のスペシャル継投で話題になった。

投手→野手→投手という珍しいプロ人生を歩み、投手としては通算16勝22敗5セーブをマーク。現在は大阪・浪速高校の野球部監督として指導している。

通算13勝15S20Hの萩原淳、「二刀流」の嘉勢敏弘

東海大甲府高時代に通算25本塁打を放ち、1991年ドラフト2位でオリックスに入団した萩原淳。同年1位が田口壮(現オリックス外野守備総合コーチ)、4位にイチローがいた「豊作」の年だったが、萩原はプロ入り9年間でわずか1安打だった。

2000年シーズン中に投手に転向すると、2002年に48試合登板して3勝4敗10セーブをマークするなど中継ぎ右腕として重宝された。その後、日本ハム、ヤクルトとわたり歩き、計270試合に登板、13勝15敗15セーブ20ホールドの成績を残している。

嘉勢敏弘は大阪・北陽高の4番でエースとして甲子園出場し、1994年ドラフト1位で外野手としてオリックスに入団。2年目の1996年には1軍で17試合に出場し、22打数5安打と頭角を現した。

しかし、3年目の春季キャンプ中に仰木彬監督の指示で、投手と野手の「二刀流」に挑戦。シーズンでも登録は外野手のまま、2試合に登板した。2000年にプロ初勝利を挙げると、翌2001年から投手登録に変更され、中継ぎとして70試合に登板。結局、2004年オフに引退するまで、打者として126打数17安打、投手として3勝7敗の成績を残した。

今村文昭は嘉勢の翌年に九州学院高からドラフト1位でオリックスに入団。野手としてプレーしたが、1999年に9試合に出場したのみだった。2001年に投手転向して初勝利を挙げると、翌2002年には24試合に登板して2勝3敗2セーブをマークした。プロ通算3勝4敗2セーブの成績を残している。

投手転向は運動神経の良さや高い対応力が求められることもあって、チーム事情が許さない限り、今後も出現することは少ないだろう。改めて、投手としても打者としてもトップレベルにある大谷翔平の凄さがよく分かるというものだ。

※成績は2022年9月5日現在

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