「見習騎手」と減量特典

競馬新聞を見ているとき、騎手名の横に▲や☆といったマークがついていて、これがどういう記号なのか気になったことがある人は少なくないだろう。初心者のために説明すると、これらの記号は「見習騎手」を示す記号である。

見習騎手とは、騎手免許の取得から5年未満かつ通算勝利数が100回以下の騎手を指す呼称である。そして、技術や経験で劣る見習騎手に対してレース出場機会を確保するため、すなわち馬主が見習騎手に騎乗を依頼するメリットを創出するために、彼らには減量特典が付与されている。つまり、見習騎手を乗せると通常の規定よりも軽い斤量で競走馬をレースに出走させることが可能なのである(ハンデ戦・特別競走を除く)。

冒頭で述べた記号は減量特典で差し引かれる重量を表したもので、★が4キロ減、▲が3キロ減、△が2キロ減、☆が1キロ減をそれぞれ表している。また、JRA唯一の現役女性騎手として活躍中の藤田菜七子騎手には◇というマークが併記されているが、これは女性騎手特典の2キロ減を示す記号であり、見習騎手のものとは異なる。

中央競馬所属の見習騎手一覧ⒸSPAIA



現在、中央競馬には18人の見習騎手がおり、未来のリーディングジョッキーを目指して経験を積み重ねている(以下、勝利数などのデータは7月28日時点)。

とりわけ夏競馬の期間はローカル場での開催が続くことに加え、ハンデ戦や、3歳馬が古馬と当たる際において斤量が軽く設定されるため、一般論として軽い体重を維持している若手騎手にチャンスが巡りやすい時期とされている。

一流馬が集結するレースは少ない夏競馬だが、着目点を“人”に切り替えて自分だけのお気に入り「見習騎手」を探してみるのも一つの楽しみ方といえるだろう。

2年目の大躍進!岩田望来騎手の買い時は?

18人の見習騎手のなかでも、今もっとも勢いがあるのは2年目の岩田望来騎手だろう。父は地方競馬の園田から中央に移籍して国内外のGⅠ級競走を33勝している稀代の名手・岩田康誠騎手という“良血”だ。

デビューした昨年は37勝で、同期の中でも3番目と決して抜きんでた成績ではなかったが、今年は既に46勝を挙げリーディング8位につける飛躍の年となっている。今後ますます存在感を増してくるであろう岩田騎手の買い時をデータから確認してみよう。

岩田望来騎手の条件別成績ⒸSPAIA

まずは減量特典のありなし。当然ながら減量特典のあるレースの方で成績がよく、「特典あり」のレースでは単複の回収率も83%、93%と上々。「特典なし」のレースを大幅に上回っている。騎手欄に☆がついているときが狙い目だ。裏を返せば今は特典を活かして勝ち星を重ねているともいえ、見習卒業後の課題となるだろう。

岩田騎手の成績で特徴的なのが右回りと左回りでの明確な差。右回りの勝率6.5%に対し左回りでは17.1%に跳ね上がる。左回りでは単回収率112%で、全て買ってもプラスとなっている“サウスポー”である。

次にレースの行われる頭数による成績。14頭立て以下と15頭立て以上に分けると、後者の方が高い勝率を残している。当然ながら競馬で勝つ馬は基本的に1頭なので、多頭数の方が高い勝率となる騎手は極めて珍しい。乱戦が得意な、若手らしいガッツにあふれた騎手といえるだろう。

以上、データから導き出される岩田騎手の買い時は
1.減量特典あり
2.左回り
3.15頭立て以上の多頭数レース
で、この3つが重なると単回収率132%、複回収率104%。この条件が揃ったときは逃さず買っておきたい。

「逃げのイクヤ」にも注目! 大穴で沸かせる木幡育也騎手

「三度の飯より穴を開ける騎手が好き」な、世の馬券師たちに紹介したいのが4年目の木幡育也騎手。こちらも先述の岩田望来騎手と同じく、騎手の父を持ち、兄弟の巧也・初也も騎手という競馬一家の一員だ。

木幡育也騎手のスゴイ所は今年ここまで単回収率118%をマークしている点。「この条件に当てはまれば」という注釈なしで全部買って黒字なのである。極めて頼もしい存在といえる。

木幡育也騎手の条件別成績ⒸSPAIA

木幡育也騎手の逃げ成績

木幡騎手の代名詞ともいえるのが果敢な逃げ戦法。昨年の多摩川Sでは16番人気ファストアプローチに騎乗。それまで12戦して1度しか逃げていなかった同馬でハナを奪うと、そのまま鮮やかに逃げ切ってみせた。最近では逃げ馬トーラスジェミニとのコンビで4勝を挙げており、エプソムCでは18番人気ながら3着に粘って3連単421万馬券を演出したのが記憶に新しい。

人気薄で前に行って穴を開ける騎乗が身上の騎手にふさわしく、内枠での成績がよい。1・2枠では単回収率293%に対し、7・8枠ではわずか19%と明暗が分かれている。

また、スタートダッシュが比較的つきやすいからか、小さめの馬で好成績を残している。反対に、馬体重500キロ以上の馬では2020年に入ってから47度騎乗して未だ連対がない。

さらに、直線の短いローカル競馬場での活躍も顕著。特にローカルのダート戦では【4-4-3-14】で単回収率427%、複回収率212%という大フィーバー。どんなに人気がない馬に乗っていても押さえておいた方がよさそうだ。

以上、データから導き出される木幡育也騎手の買い時は
1.内枠
2.体重が500キロ未満の馬
3.ローカル競馬場のダート戦

の3点である。

まとめ

この記事では岩田望来騎手と木幡育也騎手について書いてきたが、この2名以外にも将来に期待される見習騎手はたくさんいる。先日ラブカンプーでCBC賞を制し重賞初制覇を達成した斎藤新騎手や、海外での修行から帰国した富田暁騎手なども目が離せない存在だ。彼らJRA所属の若手騎手と地方競馬所属の若手がしのぎを削るTJS(ヤングジョッキーズシリーズ)のゆくえにも注目して見たい。

また、見習を卒業済みの騎手だと、21歳にして関東リーディング争いのトップを走る横山武史騎手や先日のジャパンダートダービーを制した坂井瑠星騎手など、確かな腕を持った若手たちはまだまだいる。5年後の騎手リーディング表を妄想するのが実に楽しい。