チャーター便で陽性者、70人以上が外出禁止

新型コロナウイルスの感染者が世界で1億人を超える中、2月8日に開幕するテニスの四大大会、全豪オープンは主催者が用意した世界各地からのチャーター便でメルボルン入りした選手や関係者から複数の陽性者が出て大混乱に陥った。

米国や中東からのチャーター機で同乗した70人以上の選手はホテルの部屋から2週間、外出を禁じられる異例の事態に。その中には日本男子のエース錦織圭(日清食品)やダニエル太郎(エイブル)も含まれ、缶詰め状態で実戦練習ができないトップ選手たちから不満が噴出しているのだ。

一方で数人のトップ選手はメルボルンよりもコロナ対策で規制の緩いアデレードに滞在し、練習環境も恵まれており、不公平との声も出ている。

完全隔離生活、東京五輪は1万人規模

全豪オープンに出場する選手は約500人。欧米メディアは「これより大規模で行われる東京五輪でも起きうる難題を突き付けている」と報じたが、確かに206カ国・地域から1万1000人規模の選手を想定する五輪でこうした事態が起こらないとは言い切れない。

全豪テニスの大会主催者は「もちろん完全隔離となった選手たちは他の選手たちよりずっと不利。できる限りの救済策を取りたい」と説明。「パンデミックのせいで今大会ほどたくさんの選手と観客を集める大会は行われていない。今大会の成功が、オリンピックも開催できるという希望につながってほしい」とのコメントを出している。

錦織は腰痛対策で「立ってご飯」も

もともと全豪テニスの参加選手は全員が到着後2週間の隔離生活を送りつつ、その中で1日5時間はホテル外で練習できる特例措置になっていた。

だが完全隔離生活を義務付けられた錦織は会員制交流サイト(SNS)の公式アプリで「2週間じっとしていた後に試合をすることはリスクしかないが、しょうがないので前を向いて毎日過ごしていきたい」と心境を語った。

ホテルの部屋の中では軽い運動や素振りしかできないという。「座ることが多いと腰が痛くなるので、立ってご飯を食べたり、部屋の中を歩いたりしている」とも隔離生活の苦労を説明した。

ダニエル太郎はツイッターで「誰にでも可能性はありました。部屋でできるだけの事をするしかない」などとつづった。海外選手にはホテルから提供される食事に不満を訴える声も相次いでいる。

ホテルの部屋で壁打ちなどアイデアトレーニング

こうした異例の事態でもアイデア一つで、ホテルの部屋もトレーニング場所になるようだ。各国選手がユニークな動画を続々と投稿。世界ランク70位パブロ・クエバス(ウルグアイ)はTシャツ、短パン姿でバックハンドを打つ様子が話題に。壁にベッドから抜き取ったマットレスを立てかけ、壁打ち練習を器用にやってのけて称賛された。

女子世界ランキング12位のベリンダ・ベンチッチ(スイス)は、SNSでホテルの部屋を「カーペットコート」に見立て、窓に向かって優しく「壁打ち」する様子を公開。男子テニス世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は声を上げ、完全隔離の選手らをホテルからコート付きの家へ移動させ、食事を改善し、隔離期間の短縮などを提案した。

厳戒態勢でスケジュールを徹底管理

大会前からトラブルが続く中、完全隔離以外の選手は衛生的に安全が保たれた「バブル」での練習が認められている。

それでも外出を許されるのは1日わずか5時間に限定。例えば往復の移動が計30分、コートでの練習2時間、食事1時間、ジムでのトレーニング1時間半といったスケジュールを徹底的に管理する。

「バブル方式」も練習環境の公平さ課題

国内でもラグビーのトップリーグ参加チームで60人以上の陽性者が出て、直前になって開幕が延期された。年末年始の高校バスケットボールやバレーボールの全国大会でも出場チームの感染が判明するケースが相次いだ。

東京五輪・パラリンピックの新型コロナ対策は、選手村を中心として外部との接触を極力避ける「バブル」形式で行う方針だが、陽性者が出た場合の対応は懸案が山積しているのが現実だ。

選手は2度陽性反応が出れば確定となる。大会期間中、選手は原則96〜120時間(4〜5日)の間隔で検査を受けるなど対策の大枠はまとまったが、濃厚接触者への対応やチーム競技で陽性者が出た場合など細部の詰めはこれからになる。

全豪テニスではコロナ対策の難しさが改めて浮き彫りになった。各国から移動前の検査態勢から移動後の練習環境まで「公平性」を巡る問題は大きなテーマになりそうだ。

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