ジャパンオープンは右肩脱臼、全日本はめまいで棄権

フィギュアスケートの2016年世界ジュニア選手権女王で19歳の本田真凜(JAL)は復活を期した2020年を振り返ると、悪戦苦闘の連続でもあった。

シーズン初戦に予定していた10月のジャパン・オープン(さいたまスーパーアリーナ)は開幕直前にジャンプの転倒で右肩を脱臼したため欠場。それでも直後の東京選手権(西東京市DyDoアリーナ)に強行出場し、フリーで予定した曲とは違う音楽が流れたハプニングがあったものの合計140.95点で7位に入った。

11月の東日本選手権(山梨県小瀬スポーツ公園アイスアリーナ)は合計144.11点で10位。続くグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯(大阪府門真市・東和薬品ラクタブドーム)ではけがの影響か大半のジャンプが回転不足などと判定され、合計162.57点で9位と不本意な結果だった。

万全にはほど遠い状態で最大の目標にしてきた12月の全日本選手権(長野市ビッグハット)まで何とか勝ち進んだが、全日本ではショートプログラム(SP)当日午前の公式練習の準備中にめまいで倒れ、まさかの棄権。ホテルに戻って安静にしていたが、本番までに症状が回復しなかったという。

2021年幕開けは元気な姿

そんな本田が2021年の幕開けとなるアイスショー「名古屋フェスティバル」では朗らかな笑顔を振りまき、元気な姿をアピールした。

今季のショートプログラム曲「The Giving」を披露。3回転トーループや華麗なエッジワークでも魅了し、アンコールではロック曲の「Seven Nation Army」で体を弾ませるように感情豊かな表現力を見せた。

苦境を抜け出し、未来への扉を開くのに必要なのは、まず自信を取り戻すことだろう。棄権した全日本ではNHK杯後、新たに師事する佐藤信夫コーチの下で公式練習に臨んでいる。浅田真央らをかつて指導した名伯楽の下、課題のジャンプをどこまで修正できるかが復活への鍵となりそうだ。

メインコーチは米国を拠点とするラファエル・アルトゥニアン氏で変更しないというが、当然ながら周囲のバックアップ体制も大切な要素になってくる。

引退した兄へのビデオも公開

2月に入ると自身のインスタグラムを更新し、本田兄妹の長男で現役引退した兄の太一へ向けた感謝のビデオを公開。アイスダンスに転向した高橋大輔(関大KFSC)や世界王者のネイサン・チェン(米国)ら50人以上が登場し、競技仲間を中心にした温かいメッセージ動画となって反響を呼んだ。

最初に登場した本田真凜は「太一、長い現役生活お疲れさまでしたー」と手を振りながらビデオ作成の経緯を説明。アイスダンスで新ペアを組む村元哉中、高橋大輔の2人もそろって登場し、34歳の高橋が「オレまだ続けてるんだけど」と冗談めかすと、隣の村元が「アイスダンスしない?」と笑顔で返し、声をそろえて「第二の人生、これからも応援しています」とエールを送る場面もあった。

ザギトワと競い合った実力者もシニア転向後は苦闘

中学時代に挑んだ世界ジュニアで女王に輝いた実績がある分、本人も苦闘が続く現在地には忸怩たる思いがあるだろう。2018年平昌冬季五輪で金メダルに輝いたアリーナ・ザギトワ(ロシア)ともジュニア時代、互角に競い合った実力。その華やかなスケーティングと卓越した表現力は誰もが認めるところだ。

しかしシニア転向後は平昌五輪の代表枠を逃し、どちらかといえば足踏みが続く。米国に拠点を移し、異国での生活や文化にも触れて経験を積みながら、2019年10月にはGPシリーズのスケートカナダで乗り込んだ開催地のケロウナでタクシーに乗車中、交通事故に遭った。不運も重なるが、もがきながら少しずつ前進しているのは間違いない。

兄の影響で2歳から始めたスケートは原点であり、競技への情熱もある。真凛は姉と兄、妹が2人いる5人きょうだいの二女。テレビドラマ「家政婦のミタ」出演で人気子役となった三女の望結もフィギュアスケートに取り組み、四女の紗来も将来を期待される選手だ。

伊藤みどり、荒川静香、安藤美姫、浅田真央、紀平梨花といったフィギュアスケート界の女王の系譜。本田真凜は五輪や世界選手権の出場経験はなく、GPシリーズや全日本選手権でもまだ表彰台に上がった経験がない。壁を乗り越え、ジュニア時代の輝きを取り戻せるか―。2022年北京冬季五輪を見据えたシーズンは彼女にとっても勝負の年となりそうだ。

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