昨季11勝で史上初の3球団で最多勝

昨季11勝を挙げ、自身4度目となる最多勝に輝き、史上初の3球団で最多勝のタイトルを獲得した楽天・涌井秀章。今季は開幕投手に指名され、楽天のエース格の一人として大役を務める。

今年35歳を迎える涌井が、なぜこの歳になっても勝ち続けることができるのだろうか。涌井の成績レーダーチャート(SPAIA参照=https://spaia.jp/baseball/npb/player/500014)から、その理由が見えてきた。

涌井秀章の成績レーダーチャート


ほぼリーグ平均ともいえる涌井のレーダーチャート。1試合で打たれる本塁打数を示すHR/9においては、リーグ平均を割っている。どちらかというと本塁打を打たれている投手ということだ。

しかし、与四球率を示すBB/9では、リーグ平均を大きく上回る2.63を記録している。制球力に定評のある涌井だが、この精密なコントロールこそ涌井が勝てる要因だと考えられる。

BB/9が高いからこそ、本塁打を打たれても大量失点せずに済んでいるのだろう。そのため、涌井は本塁打を打たれる割に失点は少ないのだ。

実際に、規定投球回到達者の中で2番目に多い17本の本塁打を打たれながら、先発が6回以上を自責点3点以内に抑えたことを示すQS(クオリティ・スタート)はリーグトップの14回を記録している。昨季の11勝は、失点しながらも高い制球力で試合を作ることができていたことによる側面が大きいだろう。

衰える球威は技術でカバー

防御率2.30で16勝を挙げ、最多勝と沢村賞に輝いた2009年ほどの球威はない。しかし、涌井は年齢と共に衰える球威を持ち前の制球力でカバーし、昨季の躍進につなげた。

涌井秀章の球種別投球割合


球種別の投球割合(SPAIA参照)からも分かるように、涌井の投球の78.2%を占めるストレート、スライダー、シンカーの被打率はいずれも.250未満で、順に.233、.185、.224と圧巻の数字が並ぶ。球威が衰えてもこれだけ打たれていないのは、コースもしくは高さを間違えずしっかり投げ切れている証拠だ。

この投球割合上位3球種のすごいところは、空振り奪取率にもある。2桁なら優秀とされる空振り奪取率が、3球種とも10%を超えており、ストレートが10.2%、スライダーが12.3%、シンカーが10.3%。これほどの数字を記録できたのは、熟練された投球術と洗練されたコントロールの賜物と言えるだろう。

3勝の2019年 理由は“詰めの甘さ”

昨季、楽天を牽引する大車輪の活躍で11勝をマークした涌井だが、2019年は意外にも3勝に終わっている。それどころか2桁勝利自体が4年ぶりである。

では、なぜ2019年まで勝てなかったのだろうか。2020年と2019年のデータを比較してみたところ、ひとつの原因と推測されるものが見えてきた。

涌井秀章の成績比較


奪三振率を示すK/9や制球力を示すBB/9に大きな違いはないのに、防御率と被打率は大きく差が出る結果となっている。 この理由は、おそらくストライクゾーンの甘いコースにボールが集まっていたことが考えられる。

ストライクゾーンにボールが集まれば、確かに四球は少なくなるが、それが甘いコースに来ると痛打されることが増える。よって、昨季涌井が再び勝てるようになったのは、ストライクゾーンの厳しいコースに投げ切れるようになった影響だと推測される。

開幕投手として移籍2年目を迎える涌井。プロ17年目にさらなる躍進を見せてくれるのか、ベテランの投球に期待がかかる。

【関連記事】
・田中将大が指名された2006年高校生ドラフトの答え合わせ、外れ1位の成績は?
・田中将大の復帰で注目度高まる斎藤佑樹ら「ハンカチ世代」の現役投手一覧
・難攻不落のオリックス・山本由伸を攻略するための狙い球3球種