人選は「極秘」、大坂なおみらの名も

新型コロナウイルスの再拡大で揺れる東京五輪の聖火リレーは、7月23日の開会式での聖火台点火でクライマックスを迎える。

五輪の開幕まで4月14日で100日を迎え、カウントダウンが始まったが、過去の大会でもサプライズ効果を狙って人選は点火方法とともに「極秘事項」。それでも米国で東京五輪の放送権を持つNBCスポーツ(電子版)は、白血病から復活して東京五輪代表入りを決めた競泳女子の池江璃花子(ルネサンス)が開会式で大役を務めるとの観測気球を上げ、早くも期待が高まっている。

ゴルフの祭典、マスターズをアジア選手として初制覇した松山英樹を推す声も出ている。歴史的な偉業に反響が広がる中、マスターズ3回制覇のニック・ファルド氏(英国)は「松山が聖火最終点火者に選ばれるべきだ」と発言。松山自身は「現実的でない」と否定的だが、米メディアは、東京五輪から男女ペアでの旗手が推奨されていることを踏まえ、松山とテニスの大坂なおみ(日清食品)がそろって開会式で旗手を務める可能性を報じ、体操男子の内村航平らも有力候補に挙げた。

五輪公式ツイッターも「日本の旗手は誰だと思う? 松山英樹か大坂なおみか、他の誰か?」と異例の質問を投げ掛け、開会式の「顔」を巡る話題で盛り上がっている。

1964年東京五輪は戦後の象徴で坂井義則さん

過去の大会を振り返ると、五輪開会式の最終点火者はバラエティーに富んだ人選で名場面に彩られてきた。1964年東京五輪は、原爆が投下された1945年8月6日に広島県で生まれた当時早稲田大競走部1年の坂井義則さんが務めた。

過去の五輪の主な聖火点火者


復興と平和を目指す戦後日本のシンボルとしての起用だった。海外メディアは坂井さんを「アトミック・ボーイ」と呼び、聖火台に灯をともす坂井さんに「ヒロシマ」が重ねられた。163段の階段を駆け上がり、高さ32メートルの聖火台から競技場を見下ろしたシーンは今も語り継がれる。

1998年長野冬季五輪は伊藤みどりさん

1972年札幌冬季五輪の国内聖火走者は15歳から20歳の若者の年代層が選ばれ、当時高校1年の高田英基さんが最終走者となった。

1998年長野冬季五輪は開会式は善光寺の鐘の音で始まり、大相撲の横綱曙が土俵入りを披露。フィギュアスケート女子で世界初となる大技のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させた五輪銀メダリスト、伊藤みどりさんが最終点火者の大役を務めた。

アトランタ五輪は世界王者モハメド・アリ氏

印象的な演出で記憶されているのは1992年バルセロナ五輪。右足に障害のあるアーチェリーのアントニオ・レボリョ選手が夜空に火のついた矢を放って約70メートル離れた聖火台に点火し、世界を驚かせた。

1996年アトランタ五輪ではボクシングの元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ氏が登場した。1960年ローマ五輪覇者で当時54歳。持病のパーキンソン病で震える手にトーチを持って火を付け、感動的な場面をつくり出した。

人選は米国内の放映権を独占していたNBCテレビのスポーツ部門トップの発案。現役時代は「チョウのように舞い、ハチのように刺す」と自ら語った華麗な戦法だけでなく、ベトナム戦争の徴兵拒否や人種差別への反対でも時代の顔だった。

先住民アボリジニ出身のスター選手も顔に

2000年シドニー五輪では先住民アボリジニ出身で、地元オーストラリアの陸上女子の現役スター、キャシー・フリーマン選手が大役を担った。同国が目指す「民族融和」の象徴となったフリーマンは陸上400メートルで金メダルに輝き、大会の主役にもなっている。

2008年北京五輪は宙につり上げられた体操男子五輪金メダリスト、李寧さんが聖火を持って観客席上方の屋根側面に沿って空を駆けるように1周。巨大国家を象徴する巨大な仕掛けで、最後に聖火台下の導火線に火を付けた。

悲運のヒーローやフィギュア女王・金姸児も

若者に五輪とスポーツの素晴らしさを伝えることを重視した2012年ロンドン五輪は、次代を担う16〜19歳の男女7選手が大役を担った。

最近2大会は開催国を代表する元選手が起用された。2016年リオデジャネイロ五輪は、「悲運のヒーロー」として人気を集めた2004年アテネ五輪男子マラソン銅メダリストのバンデルレイ・デリマ氏。12年前のアテネ大会ではトップを快走しながら、終盤に沿道から飛び出した観客に妨害されて3位。それでも最後まで笑顔で諦めない態度は「潔いスポーツマン精神」と評価され、国際オリンピック委員会(IOC)から近代五輪の父、クーベルタン男爵の名を冠した「特製メダル」を贈られた。

2018年平昌冬季五輪はフィギュアスケート五輪女王の金姸児さんが聖火台に点火した。浅田真央さんとしのぎを削った人気者。スケート靴を履いて白いワンピースで聖火台の下に登場し、アイスホッケーの南北合同チームの2人から聖火を受け取って点火すると、炎のリングが伸びて聖火台で火が燃え上がった。

「復興五輪」の象徴として羽生結弦の名も?

新型コロナで1年延期された東京五輪は「復興五輪」を理念に掲げており、2011年に起きた東日本大震災の被災地と結び付きの強い人物を起用する可能性も指摘されるが、詳細不明だ。

「復興五輪」をうたう大会を象徴する存在として、宮城県出身で自身も被災した経験を持つフィギュアスケート男子で五輪2連覇の羽生結弦(ANA)らの名も一部メディアで取り上げられている。

「奇跡的な復活」を遂げた競泳の池江は、開会式のちょうど1年前にあたる2020年7月23日、東京・国立競技場から世界に向けてスピーチする大役も担った。

新型コロナ禍の五輪。誰がどんな方法で聖火を点火し、世界にメッセージを発信するのか。世論は開催可否で逆風が吹くが、今後も注目が集まりそうだ。

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