1番人気が4連敗中、隠れた難解GⅠ

NHKマイルC過去5年間の優勝馬ⒸSPAIA



福永祐一騎手とワールドプレミアが、天皇賞(春)を制覇。父の福永洋一騎手は1976年にエリモジョージで同レースを制覇しているため、今年の天皇賞(春)は『人馬ともに親子制覇』という、非常に珍しい結果となった。さらには66年ぶりに牝馬が天皇賞(春)の3着以内に食い込むなど、またしても記録づくしの週末を楽しんだ。

今週はNHKマイルCが開催。人気の上では、ここ4年連続で1番人気が敗北している。しかも実力不足というような1番人気ではなく、昨年1番人気2着のレシステンシアは先日の高松宮記念で牡馬らを相手に堂々の2着という実力派。さらにその前年に1番人気5着(4位入線降着)だったのはグランアレグリア。2018年にはタワーオブロンドンが、1番人気12着と敗れている。しかしどの馬も、NHKマイルC後の活躍は説明不要ではないだろうか。実力ある人気馬でも簡単には勝ちきれない──そんな難解な3歳GⅠだ。

今年のNHKマイルCは圧倒的人気馬が不在。多くの馬にチャンスがあるだろう。混戦模様と言われた天皇賞(春)を1〜4番人気馬で決着させた「ファンの慧眼」は、今週も健在だろうか。

デムーロ騎手が3連覇を狙う

昨年、一昨年と、デムーロ騎手が連勝中のNHKマイルC。デムーロ騎手といえば、2015年にJRAの通年免許を取得し、初年度からドゥラメンテで二冠達成などGⅠを4勝した名手。翌年以降もGⅠを4勝→6勝→4勝と快進撃を続け、重賞においても2015年から11勝→13勝→18勝→15勝と、勝負強さを見せつけた。

しかし2019年には重賞3勝・GⅠ2勝、2020年にも重賞4勝・GⅠ2勝と大ブレーキ。その苦境の中でも勝ち続けていたのが、このNHKマイルCである。

今年は、NZTの2着馬タイムトゥヘヴンに騎乗。桜花賞馬・キストゥヘヴンと歴代最強クラスの短距離馬・ロードカナロアの間にうまれた良血馬であり、マイルという距離は苦手ではないはず。さらにデムーロ騎手とのコンビでは2戦して2回とも重賞2着と好相性。3連覇を目指すのに相応しい素質を持つ相棒だろう。先月の22日に、長男が誕生したばかりのデムーロ騎手。嬉しいニュースで、勢いに乗りたいところ。

迎え撃つ今年の人気どころといえば、バスラットレオン・藤岡佑騎手、グレナディアガーズ・川田騎手、シュネルマイスター・ルメール騎手あたりだろう。川田騎手はNHKマイルC未勝利だが、藤岡佑騎手は2018年にケイアイノーテックで制覇・ルメール騎手も2016年にメジャーエンブレムで制覇。このレースの勝ち方を知っている騎手が多く揃っている点にも注目したい。

かつての『マル外のダービー』に、今年は期待のマル外が参戦

かつて、外国産馬=「マル外」にクラシック出走権がなかった時代、多くの「マル外」馬がここで火花を散らした。GⅠとしてNHKマイルCが新設(前身はGⅡのNHK杯)された1996年以降、ここを制覇する馬といえば「マル外」という状況が続く。2001年のクロフネ制覇まで6年連続で「マル外」が1、2着を独占。エルコンドルパサー、シーキングザパール、イーグルカフェといった数々の名馬が誕生してきた。ダービーへ参戦できない馬たちの熱戦に、「マル外のダービー」と呼ばれた。

しかしクロフネがNHKマイルCを制覇した2001年から、外国産馬もダービーへの出走が可能に。そのクロフネはダービーで5着に敗れたものの、当然「マル外」の戦い方は変化する。2002年NHKマイルCで「マル外」アグネスソニックの猛追を退け、社台ファーム生産馬のテレグノシスが勝利をあげた。するとそれ以降は、逆に「マル外」の勝利が遠のいていった。2002年以降、「マル外」の勝利はない。ここ10年で見ても、2015年アルビアーノと2017年リエノテソーロの2着があるだけである。さらに2020年には、「マル外」の参戦そのものがなかった。

だが、今年は有力な「マル外」が参戦する。 弥生賞で2着のシュネルマイスターはKingman産駒。これまで3戦2勝という安定感を持ち、鞍上にはルメール騎手という万全の構えとなっている。弥生賞で唯一先着を許したタイトルホルダーが皐月賞で2着ということを踏まえると、初めての敗北といえど悲観すべき内容ではない。Gleneagles産駒のショックアクションは新潟2歳Sの勝ち馬。どちらも見所ありで、久しぶりの「マル外」復権はあるのだろうか?

名伯楽の好んだ一戦、今年の勝ち馬の今後にも注目

今年の2月に引退した松田国英調教師。ダイワスカーレットやダイワエルシエーロ、ベルシャザールといった名馬を育て上げた名伯楽だ。門下生には、友道康夫調教師や角居勝彦調教師、高野友和調教師などもいて、競馬界への貢献は計り知れない。

かつて師が好んだ『NHKマイルC→ダービー』という過酷とも言えるローテーションは「"松国"ローテ」と呼ばれ、多くの活躍馬を輩出してきた。

NHKマイルCで優勝し、ダービーで5着だったクロフネ。NHKマイルC3着で、ダービーを優勝したタニノギムレット。NHKマイルCで優勝し、ダービーでも優勝したキングカメハメハ。いずれも"松国"ローテを通じて活躍し、種牡馬としても偉大な実績を残した名馬である。

今年は、ここを制してダービーへと向かう馬は出てくるのだろうか?そして、種牡馬としても活躍するような名馬は出てくるのだろうか?それとも、マイル路線を極める1頭が優勝するのだろうか?

様々な思惑や期待の入り混じる一戦に、ぜひご注目いただきたい。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。


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