米ヒューストンで2年ぶり世界選手権

アメリカ・ヒューストンで卓球の世界選手権が始まった。日本勢は、左肩を痛めた宇田幸矢が男子シングルス1回戦で敗れたが、他は単複共に順調に勝ち上がっている。

東京五輪で3つのメダルを獲得した伊藤美誠と、高校生ながら世界ランク5位の張本智和が脚光を浴びているが、SPAIAではそれ以外の選手にも注目していきたい。今回は、4回目の世界選手権出場となるサウスポー、森薗政崇を紹介する。

闘志あふれるゲームスタイルとダブルスの巧さに注目

「この顔、見たことある気がする」という人もいるのではないだろうか。森薗政崇は伊藤美誠とのペアで全日本選手権の混合で3連覇中のダブルスの名手だ。

大島祐哉とのペアではワールドツアーのグランドファイナルで2度優勝。世界ランクダブルス1位として臨んだ2017年世界選手権では銀メダルを獲得していて、今回は張本智和とダブルスを組む。

国際大会でも活躍する一方で、そのライフスタイルは唯一無二だ。現役の日本代表でありながら、卓球用品の販売や選手のマネジメントなどをする会社の代表取締役社長でもある。

トッププレーヤーは所属先やNTCで練習に励むことが多いが、「卓球愛好家をサポートする実業家」でもある森薗は都内の区立体育館にひょっこり現れることがあり、筆者も近所の体育館で見かけたことがある。そんな選手は他にいないし、その身近な雰囲気も森薗の魅力と言える。

161cmと小柄な体格に笑顔の似合うベビーフェイス。でもよく見てほしい、左腕と太ももの筋肉を。森薗の持ち味は、何と言ってもこの筋肉を活かしたパワフルでダイナミックなプレーだ。

フォアに来たボールをバックでチキータした後、バックに来たボールは回り込んでフォアで打ったり、ドライブの打ち合いで体制が崩れてもしゃがみ込みながら返球してもう一度立ち上がったりと、森薗はとにかく動く。

小柄な選手の場合、手を伸ばして届く範囲が狭くなってしまうため、伊藤美誠のように基本的にフォアはフォア、バックはバックと両ハンドを使って対応する選手も多いが、森薗は強靭な脚力で縦横無尽に動き回って全力で打ち返す。

ダブルスでは、サウスポーの強みを生かした強気なレシーブも持ち味だ。2017年世界選手権の決勝では強気なチキータを厳しいコースに打ち込んだり、速い打点でカウンターを決めるなど、サウスポーのメリットを存分に生かしたプレーで中国ペアとの大接戦を演じた。

「ダブルスの森薗」とは言わせない結果を出せるか

実は森薗の世界ランクは51位で、今回代表を逃した神巧也よりも下だ。ではなぜダブルスでは世界で活躍できるのか、なぜ張本に伊藤と、日本のエースたちとペアを組んでいるのかと疑問が出てくるだろう。

一般的にダブルスの得意な選手には、視野が広く相手のコースを突くのが上手い選手が多い。卓球のダブルスはテニスやバドミントンと違い、2人が台の近くを譲り合いながら交互に打たなければならないので、シングルスに比べて打点が遅れてしまう。

そのため、しっかりコースを突いていれば強打でなくても得点やチャンスに繋がったり、2人が重なるコースに打たれるとパートナーの邪魔をして失点してしまうなど、シングルス以上にコース取りや戦略、そしてミスをしないことが重要になる。

また、パートナーの長所を引き出し、相手の長所を出させない返球することもポイントだ。東京五輪の混合では、水谷隼が相手の中国選手にわざと強打をさせて伊藤のカウンターで得点を取りにいった。パートナーを伸び伸びとプレーさせられる選手がダブルスでは強い。

今回森薗が組む張本は、世界でもトップレベルの選手である一方、東京五輪では4回戦で格下の選手に敗れているほか全日本でも14歳で優勝して以来頂点に立てていないなど、大舞台でのメンタルの弱さが課題として指摘されている。今回のダブルスでは、森薗が張本の本来の良さを引き出して爆発させてくれることに期待している。

そして、今大会で森薗に頑張ってほしいのはシングルスだ。森薗は今年の全日本で初めてシングルスの決勝に進み、あと1点で日本一というチャンピオンシップポイントをも握っていたのだ。

20代後半となり、同世代のアスリートには引退する選手も出てくる中で過去最高の成績を出している森薗。観るものを引き込む魂のこもったそのプレーで、ダブルスだけでなくシングルスでも多くの人の心を揺さぶってほしい。

《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。

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