いまだ1本塁打のラオウ

昨季のパ・リーグ本塁打王、オリックスの杉本裕太郎が「2年目のジンクス」にどっぷりとはまっている。

21日のソフトバンク戦。2点を追うオリックスは八回まで、先発のエース千賀滉大にわずか2安打。ゼロ行進が続くなか、9回の攻撃を迎えた。敗色濃厚の展開で、代打起用された新人の野口智哉(関西大)が、内野安打でしぶとく出塁。オリックスはこの試合、初めて先頭打者を塁に出した。続く福田周平が2本目の安打を放ち、西野真弘の犠打と紅林弘太郎の四球で一死満塁とチャンスを広げる。

ここで打席には4番の吉田正尚。試合前の打率は2割台前半と本調子には程遠いが、ここまで2四球。ボールは見えている。日本代表「侍ジャパン」で同じユニホームを着る千賀滉大が投じた155キロの真っすぐを一閃。打球は一、二塁間を抜け、2人の走者が生還して土壇場で同点に追いついた。流れを呼び込んだオリックスは延長11回、紅林の適時打で今季初のサヨナラ勝ちをもぎ取った。

歓喜に沸くチームの中で、この日も杉本裕太郎のバットから快音が聞かれることはなかった。結果は3三振を含む4打数無安打。昨季打撃三部門で自己最高の32本塁打、83打点、打率3割1厘をマークし、チームを25年ぶりのリーグ優勝に導いた豪打はいまだに影を潜め、打率は規定打席に到達している打者の中で最下位の1割6厘6毛にまで落ちてしまった。

今季の本塁打は、敵地で行われた5日のソフトバンク戦では放った1本のみ。自身初というバースデーアーチも、今のところ浮上へのきっかけにはなっておらず、「昇天ポーズ」も今季は本拠地のファンに披露できていない。

「もがき苦しんでいるので、もう少し温かい目で見守ってください」。ある試合のヒーローインタビューで、口にしていた杉本裕太郎の言葉が耳に残る。キャンプでも「一軍を確約されているわけじゃない。競争を勝ち抜いて、レギュラーをつかみ取らないといけない立場」と自らを追い込んでいた。なのに、ラオウは野球の神様に試練を与え続けられている。

ポイントは下半身の重心移動とスイングの軌道

なぜ打てないのか。コーチ経験のある球界関係者の声を拾ってみると、いくつかの問題点が浮かび上がる。

まずは、下半身の重心移動ができていないことだ。「重心が高く、突っ立っているような構えになっている。もう少し、膝を曲げるなど柔らかく使って、まずはしっかり軸足の右脚に体重を乗せることが肝心。そこでためた力を左脚に移動させるわけだけど……」。そう言って、その関係者は一呼吸置いて言葉を継いだ。

「左脚も効いていない」。つまり踏み出す足でしっかり地面をグリップできていないから、いわゆる〈壁〉ができず、強いスイングができないというのだ。

「簡単に言うと、スイングをするための軸がない。今は上体というか、腕の力だけでボールに合わせに行くようなスイングしかできない。これでは、例えタイミングが合ったとしても、150キロの直球をはじき返すことはできない」

やっかいなのは、それだけではない。スイングそのものの軌道も悪いという。

「気になるのは右肘の使い方。本来、右肘は左腰に向かって、体の内側を抜けていかないといけないのに、今の杉本はそれが右腰に向かっている。これではバットが最短距離で出てこないし、遠回りするから、右手でこねるようなスイングになっている」。風の影響がないドーム球場でも、高く上がった打球がフェンス手前で失速するシーンを、今季は何度も見た。

昨季は開幕出遅れも交流戦で優勝したオリックス

良薬はないのか。その関係者が修正のヒントをくれた。「まずは下半身を使って打てているかを確認する練習に取り組んでみてはどうか。両足を大きく広げ、腰を低く落としてやるティー打撃や、下半身を使って重いものを動かしてみるのも、その一つ。ほかの選手をおんぶして、スイングするつもりで下半身を動かしてみる。重いから、膝をある程度曲げて使わないと動かせないと思う」

オリックスは23日現在、11勝12敗でリーグ3位につける。23試合を終えた時点の昨季成績は、8勝12敗3分けだから深刻になる必要はないだろう。

ただ、昨季のように5月下旬から始まるセ・パ交流戦で優勝できる保証はどこにもない。杉本裕太郎がクリーンアップに戻り、一刻も早く本来の輝きを取り戻さなければ、2年連続リーグ優勝は絵に描いた餅に終わってしまう。

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