中54週、歴史的名牝の戦い

今週日曜は東京芝1600mを舞台に、春の牝馬マイル王決定戦・GⅠヴィクトリアマイルが行われる。アイドルホース・白毛のソダシや、一昨年の三冠牝馬デアリングタクト、大阪杯2着からの臨戦となるレイパパレ、高松宮記念からの巻き返しを期すレシステンシアなど、多彩なフィールドでトップクラスの実力を誇る豪華メンバーが出揃った。

有力馬のうち最大の注目を集め、かつ馬券の取捨で最も頭を悩ませるのがデアリングタクトだろう。史上初、無敗での牝馬三冠から伝説のジャパンC3着と実力は誰もが認めるものの、昨年の香港GⅠ・QE2世Cで右前肢繋靱帯炎を発症。実に中54週の長期休養明けでいきなりの大舞台となる。

歴史に名を刻む偉業を成し遂げた名牝は果たして超ロングシュートを決められるか。今週は「長期休養明け重賞勝利」をテーマに、ブランクを挟んだ重賞勝ちのランキングを作成、名馬たちの蹄跡を振り返る(データは1986年以降)。

美しき青鹿毛、未完の大器シャケトラ

長期休養明け重賞勝利ランキング,ⒸSPAIA


<長期休養明け重賞勝利ランキング>
1位:スズパレード(中65週、1988年オールカマー)
2位:パフォーマプロミス(中57週、2020年鳴尾記念)
3位:シャケトラ(中55週、2019年AJCC)
4位:サクラローレル(中54週、1996年中山記念)
5位:トウカイテイオー(中51週、1993年有馬記念)
※平地重賞のみ

堂々の1位はスズパレード。シンボリルドルフが三冠を達成した1984年のクラシック世代を戦った関東のスターホースだ。皐月賞、ダービーをともに4着ののち、ラジオたんぱ賞で重賞初制覇を飾るも、奇しくもデアリングタクトと同様4歳春に繋靱帯炎を発症。不屈の精神でターフに戻り、ダービー卿チャレンジトロフィー連覇、当時最強クラスのニッポーテイオーを破った宝塚記念で実力を誇示するも、その現役生活は常に脚部不安との戦いだった。

悲願のGⅠ獲りとなった宝塚記念後は戦列を離れ、次走は翌年秋の新潟オールカマー。前年の牝馬二冠を制したマックスビューティをしのいで1番人気に支持され、逃げ粘るミスターブランディを番手から捉え切って快勝した。実に中65週のブランクがありながら、勝ち時計2分12秒3は当時のコースレコードだった。

2位のパフォーマプロミスは近年の中長距離界を沸かした名馬。天皇賞(春)3着後に右前の橈骨を骨折し、再び競馬場に戻ってきたのは翌年の鳴尾記念。休み明けかつ久々の2000m戦とあって10番人気の低評価も、最内枠をフルに生かした福永祐一騎手の好騎乗で、断然人気に推されていた稀代の名牝ラヴズオンリーユーとの叩き合いを制した。骨折で引退を余儀なくされた9歳春まで走り、引退後は蹄葉炎との闘病の末、安楽死の措置が取られた。

3位はシャケトラ。堂々たる古馬王道ローテを進んだ4歳シーズン以来、中55週で挑んだAJCCでフィエールマンを倒し、返す刀で阪神大賞典を圧勝した。次走は当然、2年前の忘れ物を取りに行く天皇賞(春)。しかし、特別登録に記された彼の雄姿を淀で目にすることはかなわなかった。1週前の追い切りで左前第一指骨を粉砕骨折。父譲りの青鹿毛、雄大な馬体。上品で鋭く、それでいて優しい眼をした馬だった。

栗東・角居勝彦厩舎所属、通算成績13戦6勝、うちGⅡ・3勝。未完の大器がこの世を去って3年が経つ。

奇跡の復活、トウカイテイオー

4位はサクラローレル。3歳シーズンに実に13戦を消化し、明け4歳の中山金杯(当時は日刊スポーツ賞金杯)では大マクリを決めて圧勝、目黒記念でも2着となったが、天皇賞(春)へ向けた調教で重度の骨折。一時は再起不能とまでいわれた大怪我を乗り越えての中山記念制覇で記録をつくった。

次走の天皇賞(春)では同期の三冠馬ナリタブライアンを破り、同年の有馬記念では史上初めて勝ち馬にサクラの名前を刻んだ。そしてマヤノトップガン、マーベラスサンデーとの珠玉の三強対決となった翌年の天皇賞(春)。道中で折り合いを欠いたこともあり、3分14秒4のスーパーレコードを打ち立てたトップガンには及ばなかったが、横綱格として負けて強しの2着だった。

5位はトウカイテイオー。奇跡の復活を遂げた1993年有馬記念は競馬ファンなら老若を問わず誰もが一度は目にしたことがあるだろう。返し馬でのテイオーステップ、前を行くビワハヤヒデを捉える宙を舞うようなフットワーク、レース後の田原成貴騎手の涙、父シンボリルドルフから手綱をとってきた岡部幸雄騎手の言葉、全てが日本競馬の歴史に残る名シーンである。GⅠに限ると、この中51週が現在でも最長記録となっている。

冒頭にも記した通り、デアリングタクトは中54週でのGⅠ獲りがかかる一戦。幾多のライバルたちを捉え切ることができれば、四半世紀以上破られなかったトウカイテイオーの記録を超える。東京のターフで再び輝きを放てるか注目したい。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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