アフターコロナの意識高まる国内ロードレースシーン

自転車ロードレースは屋外スポーツであるとともに、公道を使用して競技することが多いことから、新型コロナウイルス感染拡大が進んで以降は日本国内でのレース開催の中止・延期が相次いだ。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令が実施基準になることが多く、昨シーズンまでは無観客での開催や、出場選手・チームスタッフ・その他大会関係者すべてにPCR検査または抗原検査の受検が義務付けられるなど、厳格なプロトコルのもと大会が行われてきた。

そんな国内シーンだが、2022年に入って徐々に「アフターコロナ」下でのロードレース開催が進んでいる。国際規則に基づく大規模レースの開幕も迫っており、「日本の自転車ロードレース」は活況を迎えようとしている。

新リーグもスタート 日本の自転車ロードレース史

まず、日本の自転車ロードレース事情を押さえておこう。

国内において自転車競技が組織化されたのは1908年。日本で初めてとなる自転車競技統括団体として東京輪士会が設立された。1931年には本格的なレース開催がなされており、その数年後には国際自転車競技連合(Union Cycliste Internationale=UCI)に加盟。競輪が創設されたのは1948年なので、その前から自転車競技そのものは日本に存在していたことになる。

他の競技と同様に、自転車競技もプロとアマで統括する団体が異なっていたが、1995年の日本自転車競技連盟(JCF)発足を機に一本化。国内選手権など、プロとアマで分かれていた大会もオープン化が進んだ。

ロードレース競技に限定すると、JCF構成団体の一員として1967年に全日本実業団競技連盟(JBCF)が発足。長年にわたり、国内トップリーグ「Jプロツアー」を主催している。実業団と名がつくとおり、アマチュア選手によるレースを行ってきた団体だが、現在はかつての趣きを残しつつもプロアマオープンの大会を運営している。

そしてこの数年で、自転車ロードレースの国内シーンは新たなフェーズを迎えている。2020年に新規団体として「ジャパンサイクルリーグ(JCL)」が設立。「地域密着」「世界基準の選手輩出」などを理念とし、レーシングドライバーの片山右京氏がチェアマンを務めている。

ジャパンサイクルリーグの沿道風景,JCL/Syunsuke FUKUMITSU

ⒸJCL/Syunsuke FUKUMITSU


同リーグは、国際登録を行っているプロチームを中心に9チーム(現在は10チーム)でスタート。「三菱地所JCLプロロードレースツアー」と銘打ち、初年度の2021年は各地を転戦しながら10レースを行った。今年は12レースを予定。この3月には、日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長が名誉顧問に就任したほか、複数の大手企業が参画しリーグを支援している点も特筆に値する。

そのほかにも公式・非公式問わず、春から秋にかけて週末を中心に各地でレースが開催される。特定地域のレースならびに選手のレベル向上を目的としたシリーズ戦もあり、大人から子供まで、距離にすると数キロから150kmを超えるものまで、サイクリストのスキルに合わせてレースが選べる環境にある。

国際大会が再開 海外からも人気の2レース

新型コロナウイルスの感染拡大以降、日本の自転車ロードレースは国内シーンに限定されていた。本来であればUCIが公認する国際大会がいくつも開催され、ワールドクラスの選手・チームから人気が高いレースもあるのだが、日本における出入国条件の厳しさから開催そのものを断念せざるを得ない状況が続いた。

しかし、2022年シーズンが始まって少しずつコロナ前の動静へと戻りつつある。いよいよ国際大会も帰ってくる。そこで、直近で開催される2つの大会を紹介しよう。

1つ目はツアー・オブ・ジャパン(略称TOJ)。国内最大級のステージレース(各日毎のレースを行い順位を決定し、さらに複数日にわたってトータルの所要時間で総合優勝を争う)で、大阪から東京までを8日かけて走破する。

ワールドクラスの選手・チームも多数出場し、この大会から羽ばたいたトップスターも数知れず。世界の一線級に、日本の選手・チームがどう迎え撃つかが楽しみでもあった。なかでも、富士山5合目を目指す山岳ステージの難易度が高く、日本・アジアを越えて世界的にも難コースとして知られている。

2020年は中止され、昨年3ステージに縮小する形で再開。東京五輪代表の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が富士山を征服し、史上2人目となる日本人王者に輝いた。今年も規模縮小は継続され、5月19日に長野県飯田市をスタートし、22日に東京・大井埠頭で閉幕する。

昨年のツアー・オブ・ジャパン、増田選手の富士山クライミング,ⒸSPAIA(撮影:Syunsuke FUKUMITSU)

ⒸSPAIA(撮影:Syunsuke FUKUMITSU)


TOJの翌週、27〜29日に行われるのはツール・ド・熊野。ユネスコ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」で知られ、和歌山・三重両県にまたがる熊野地域が舞台のステージレース。海・山・川を臨む風光明媚なコースで熱い戦いが展開される。

特に注目は、日本の棚田百選にも選ばれる「丸山千枚田」を走る大会2日目。この日は3つの山越えが待ち受け、総合優勝争いのハイライトともなる。また、梅雨と重なり天気が変わりやすく、気象条件によってレース展開が思わぬ方向へ行くこともしばしば。NPO法人のSPORTS PRODUCE 熊野が主催し、地元の人たちがボランティアで協力する手づくりの大会だ。

ツール・ド・熊野の丸山千枚田,ⒸTOUR de KUMANO 2019/Syunsuke FUKUMITSU

ⒸTOUR de KUMANO 2019/Syunsuke FUKUMITSU


両レースともに、有観客で行われる。マラソンや駅伝などと同様に沿道からの応援が可能で、観戦料がかからないのが自転車ロードレースの魅力の1つ。間近で感じられる選手たちのスピードや息遣いにきっと驚くことだろう。

どちらも公共交通機関でスタート・フィニッシュ地点やコース近くまで行くことが可能なので、お時間のある方は足を運んでみてはいかがだろうか。また、YouTubeでのライブ中継も行われ、オンラインでの観戦も可能だ。

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