プロモーション委員会設置で全国の機運醸成

2030年冬季五輪・パラリンピックの招致を目指す札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は5月10日、開催機運を高めるための全国規模の新組織「プロモーション委員会」(岩田圭剛会長)を新たに設置し、札幌市で初会合を開いた。

新型コロナウイルス感染拡大で1年延期された東京五輪・パラリンピックが終わったばかりというのに一体、何をする組織かと言えば、全国的な機運醸成が主な目的だ。

冬季スポーツ界からノルディックスキー・ジャンプ男子で1998年長野五輪団体金メダルの原田雅彦氏、スピードスケート女子の岡崎朋美さん、カーリング女子でロコ・ソラーレの本橋麻里代表らが選ばれ、フェンシングの五輪銀メダリストで国際オリンピック委員会(IOC)委員の太田雄貴氏らもメンバー入り。特別顧問は東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長、顧問にはスポーツ庁の室伏広治長官が就き、政界や経済界も含めて全体で30人を超える規模となった。

初会合では昨夏の東京大会でホストタウンに登録された全国の自治体との連携強化、感染症などリスクへの備えが取り組むべき課題に挙げられた。今後は「環境」や「共生社会」、「経済・教育」といったテーマごとに議論し、最大の課題とされる国内外に向けて発信する「開催意義」を年内に取りまとめる。

賛成52%と過半数ぎりぎり、2023年5〜6月のIOC総会で決定

札幌市が3月に実施した招致の是非を問う住民アンケートでは、賛成派が過半数を占めた。ただ地元では開催経費の増大などに対する不安も根強い。

市民1万人対象の郵送調査(回答率57.8%)では「賛成」「どちらかといえば賛成」が計52.2%、「反対」「どちらかといえば反対」が計38.2%だった。ほかにインターネットや街頭での調査でも過半数の支持を得ていたが、数字はぎりぎりの線といえる。

2030年冬季大会はIOCが年内に候補地を絞り込み、2023年5〜6月のIOC総会(ムンバイ=インド)で決まる見通し。東京五輪のマラソン・競歩会場だった札幌市はIOCに運営能力を評価され、有力視されているが、IOCが独自に調査する国内支持率の数字も命運を左右する大きな要素になる。関係者は「国内支持率が大きな鍵になる」と指摘した。

ライバルはソルトレークシティーかバンクーバー?

IOCの動きはここへ来て水面下で活発になってきた。2030年冬季五輪招致を目指している札幌市を5月末に視察することが判明。開催地選定を担う「将来開催地委員会」の判断材料となる資料作成のため、事務方数人が帯広市やニセコ地区を含めた北海道内の競技会場を回り、施設の運用状況や敷地の大きさなどを確認する見込みだ。

IOCによると、将来開催地委員会のメンバーは視察に参加せず、大会計画や競技会場の進展について助言する目的で行われるが、既にソルトレークシティー(米国)は視察済み。招致にはバンクーバー(カナダ)、カタルーニャ・アラゴン(スペイン)も関心を示している。

関係者によると、札幌の勝算は依然として高いものの、ライバルは開催実績のあるソルトレークシティーやバンクーバーあたりになりそうだ。ただ2028年ロサンゼルス五輪を控え、米国はその2年後の冬季五輪へ「及び腰」との見方もある。スペインは立地の評価が高いものの、住民理解や財政面の課題が指摘されている。

札幌市の開催概要計画では、開閉会式を行う札幌ドームを除き、競技会場数は13カ所。スピードスケートは帯広市、スキーのアルペンはニセコ地区、ボブスレーなど、そり競技は長野市で実施する。もともとは札幌市の経済活性化などを目指し、2026年大会の招致を表明。しかし2018年の北海道地震で断念し、目標を2030年に切り替えた経緯がある。

1972年に続き2度目の開催は実現するのか。東京大会の逆風を考えると、明確な開催意義とコスト削減、ある程度の国内支持率が求められそうだ。

【関連記事】
・2030年冬季五輪開催地に札幌が最有力な理由、課題は市民の支持
・北京五輪スキージャンプ失格騒動の原因をうやむやにしていないか?
・日本の歴代夏冬五輪獲得メダル数大会別一覧、東京、北京五輪で最多記録更新