キングカメハメハの偉大さとドゥラメンテのポテンシャル

第一冠桜花賞は15着までが1秒以内の大混戦。牝馬クラシックは抜けた存在がいないと目されながら、終わってみればスターズオンアースが二冠達成。大外18番枠からオークスを制したのは10年サンテミリオン以来。二冠ともに1番人気でなかったのは03年スティルインラブ(どちらも2番人気)、12年ジェンティルドンナ(2、3番人気)と、いずれも牝馬三冠を達成。

今回は川田将雅騎手がアートハウスを選択したため、テン乗りのルメール騎手が騎乗。二冠を異なる騎手で制したのも12年ジェンティルドンナ以来の記録だ。歴史はスターズオンアースの三冠達成をあと押しする。

父ドゥラメンテは昨夏早世したものの、タイトルホルダーに続き2世代目で早くも2頭目のクラシックホースを送り出した。マイルから長距離まで幅広い距離でGⅠを勝てるオールラウンダー。キングカメハメハの後継種牡馬という意味でも産駒に限りがあるのは悔やまれる。

また2着はそのキングカメハメハ産駒最終世代のスタニングローズ。同系のワンツーフィニッシュだった。2019年世代はディープインパクト実質最終世代と称されてきたが、19年種付けをしていないキングカメハメハの最終世代でもある。オークスではサンテミリオンと同着だったアパパネ、16年チェッキーノ2着に続く3頭目の連対を果たした。

ダービー馬ドゥラメンテ、レイデオロも輩出したものの、産駒はオールラウンダーながら距離は2000mまでといった印象を、エアグルーヴ牝系とかけ合わせたルーラーシップやドゥラメンテがキングカメハメハ系のイメージを変えつつある。

終わってみれば、ディープインパクトとともに日本競馬界をけん引してきたキングカメハメハの偉大さを改めて知る結果となった。

アートハウスの強気

さてレースはゲート前の輪乗りで先行勢の一角と目されたサウンドビバーチェが放馬、競走除外。ここまでクラシックロードを勝ち抜き、ゲート入り寸前でのアクシデントに言葉がない。このアクシデントで発走まで待たされたため、サークルオブライフなど力を出せなかった馬もいた。生涯一度の舞台だけに残念だった。

伏兵のラブパイローが先手を匂わせたが、17番枠ニシノラブウインクがダッシュを効かせ、内へ切れ込みながら先頭に立つ。1コーナーまで距離がない東京芝2400mで外枠から先手を取るには勢いをつけなければならない。そのため、序盤は近年のオークスと同じく突っ込んで入り、前半600m12.4-11.0-11.9、35.3と速め。トライアルを逃げ切ったパーソナルハイが2番手に付き、後ろは前が速くなると判断したのか、引いてレースに入ったため、2頭が後ろを離す形となった。離れた3番手にアートハウスがつけた。

前を行く2頭も当然飛ばすわけではなく、向正面に入り、序盤の勢いを抑え、ペースを落とす。その後は12.6-12.7、1000m通過1.00.6。次の200mが12.5、前半1200mは1.13.1と昨年ほど厳しくはなく、アートハウスが差を詰め、徐々に一団になる。

流れのカギを握ったのは3番手にいたアートハウス。2番人気、忘れな草賞をインパクト大の内容で勝利。川田将雅騎手が母パールコードへの想いとともに、あえてスターズオンアースではなく、こちらを選んだ経緯を語ったこともあり、支持を集めた。ライバルがマークすべき馬が3番手につけ、じわりと前を行く馬たちとの差を詰めれば、後ろも当然ついてくる。

結果的にアートハウスは直線に向いてすぐに馬群を引き連れるように先頭。受けて立つといわんばかりの競馬で、勝つための最善策と考えるポジション取りは川田騎手らしい。しかし、東京競馬場でこの形で勝利するには相当な力差も必要。もちろん、川田騎手はその可能性ありと判断したからこその作戦だっただろう。

アートハウスが強気な競馬を試み、先行集団はラスト800mからスパート。11.6-11.3-11.7-11.8とアートハウスが動いた残り600〜400mが頂点。そこから失速ラップを描いたように、アートハウス含め先行集団には厳しい流れになった。

掲示板4頭が桜花賞組

後半1200m1.10.8、1000m58.5と前半が遅い分、後半が速くなった。それを残り800mからスパートし、底力が問われる流れを差し切ったスターズオンアースは流れに恵まれたわけではない。溜めたといっても前半から中団の外目をキープし、ずっとアートハウスを射程圏に入れていた。前半、中盤と追走にある程度脚を使いながら、最後は上がり最速33.7。二冠達成は力の証明。これをテン乗りで成し遂げたわけで、川田騎手、ルメール騎手の技術の確かさをも示した。

2着スタニングローズはレーン騎手が内枠の利、最短距離を前半は走らせつつ、中盤からは馬場状態がいい外目を意識するという組み立てで挑んだ。さすがはレーン騎手。計算され尽くされた競馬で2着に押し上げた。母の母ローズバドもオークス2着。スタニングローズはなんとか勝ちたかった。しかしながらオークスにバラ一族は似合う。

3着ナミュールも426キロと小さな体で今春3戦目の厳しい状況で奮闘した。最後はかなり苦しそうではあったが、あきらめずに走って3着。距離の幅はありそうで、成長もまだまだこれから。秋が楽しみになる激走だった。

4着ピンハイ、5着プレサージュリフトと今年は掲示板を前走桜花賞組が4頭も占めた。桜花賞はスローペース、マイル特有のスピードの持続力勝負にならなかったことが、今回につながったのではないか。これを教訓に桜花賞とオークスのつながりについて来年は冷静に考えたい。

2022年オークス回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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