突如現れた“第3の捕手”

「梅野が不在なら坂本」。タイガースの捕手事情の相場は、そう決まっていた。5月18日に梅野隆太郎が右脇腹の筋挫傷で出場選手登録を抹消。開幕から低迷し最下位に沈むチームには大きな痛手となったが、入れ替わりで昇格してきた“第3の男”が躍動している。

長坂拳弥は、5月21日のジャイアンツ戦で実に4年ぶりとなるスタメンマスクを被った。アーロン・ウィルカーソンとバッテリーを組み7回無失点に導くなど、2対1の勝利に貢献すると翌日にはコロナ感染からの復帰登板となった伊藤将司のプロ初完封をアシスト。交流戦前最後のカードとなった聖地での伝統の一戦勝ち越しの立役者は間違いなく背番号57だった。

ウィルカーソンと上がったお立ち台では「しびれました」と偽らざる心情を何度もマイクに乗せて、場内を沸かせた。

持ち味出た湯浅へのスライダーのサイン

助っ人右腕とは2軍戦も合わせて今回が初めてのコンビ結成。伊藤将司も含めて、経験の少ない投手の持ち味を存分に発揮できた要因はどこにあるのか。矢野監督がその一端を明かした。

「俺も球場早く来るけどアイツたぶん一番早く、選手で(来ていて)。必死に何か変えたいとか、何かしたいっていうのがアイツの中でも変わってきているところがある中でね」。対戦相手に関するデータの洗い出し、自軍の投手陣の分析…球場への早出で何をしているのか定かではないが、出番を見据え捕手としての「準備」を進めていたのだろう。

配球に特色が出た場面があった。巨人戦の1戦目から2連投したセットアッパーの湯浅京己は直球とフォークが武器だが、2試合通じてスライダーを多投。後輩右腕から「あれだけスライダーを投げたのは初めてでした」と言われたそうだが、ファームでバッテリーを組んできた女房役は「スライダーも全然武器だと思うので。相手のデータとかもあるので良かった部分」と手応え十分に振り返った。

6年目でやってきたプロ野球人生を変える転機

プロ入り後、初めてスポットライトを浴びたと言っていい6年目の28歳。近本光司や藤浪晋太郎と同世代でこれまで梅野、坂本、原口と層の厚い捕手陣の中で目立つ存在ではなかった。

それでも、東北福祉大から16年のドラフト7位で入団した際には現役時代に矢野監督が付けていた背番号39を継承するなど期待されてきた存在。ファームの下積みは長かったが、千載一遇の好機が到来している。

「本当に僕のプロ野球人生を変えるチャンスでもあると思うので。頑張りたいです」。シーズンオフのファン感謝デーでは一発芸を披露して聖地を沸かせてきた男が“本職”で虎党を魅了する時がやってきた。

《ライタープロフィール》
チャリコ遠藤 1985年4月9日生まれの37歳。本名は遠藤礼。関西大学から2008年にスポーツニッポン新聞社入社。2010年から阪神タイガース担当で2018年から「チャリコ遠藤」のアカウント名でTwitterで積極的に情報を発信中。フォロワーは3万人。趣味は海釣り。

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