中村悠平の復帰後に各種数値が大幅改善

序盤戦からヤクルトが好調だ。5月半ばから5カード連続で勝ち越しを決め、5月29日終了時点でリーグ首位に立っている。奥川恭伸とサンタナの離脱はあったものの、投打ともに充実していることに加え昨年の経験もある。そう簡単には瓦解しないだろう。

その快進撃を支えている要因のひとつが中村悠平の復帰だ。中村はオープン戦でコンディション不良となり、開幕一軍から外れていた。一軍に復帰したのは開幕から1カ月以上が経過した5月3日のこと。この中村復帰の前後で各種数値は大きく変わっている。

中村復帰以前は15勝12敗(勝率.556)だったが、以降は15勝7敗1分(勝率.682)と大きく勝ち越し。またチーム打率、防御率、1試合平均の得失点もすべて改善された。もちろん中村が全試合でフル出場しているわけではなく、中村ひとりの力だけではないが、存在感は大きい。また同時にその他の捕手たちも多くの経験を積んでおり、勝利と育成の両立ができている。

ヤクルトの主なチーム成績,ⒸSPAIA


5番・中村悠平の存在感

打線の中で中村に求められる役割は重要だ。復帰直後は7番だったが、6番を経て5月12日以降はスタメン時に5番で起用されている。

今のヤクルトの5番はすなわち村上宗隆の後ろ。村上と勝負してもらうためにも重要なポジションだ。昨シーズンも序盤は苦労するも終盤からサンタナで固定されていた。今シーズンも5番・サンタナで開幕だった。

しかしサンタナが離脱したことで再び「5番問題」が再燃。その後、塩見泰隆や太田賢吾、宮本丈、濱田太貴など様々な選手が試されてきたが固定できなかった。

中村は内山壮真と併用されていることから全試合の出場ではないが、5番として起用された10試合中9試合でヒットを放った。そのうち4試合が複数安打で打率.395(38打数15安打)、出塁率.439と好成績を残している。村上をプロテクトする役割を十二分に果たしていると言っていい。

また、スタメンから外れた際は代打での起用もあり、代打打率.250(4打数1安打)、出塁率.400とこちらもまずまずの数字を残している。

5月に覚醒した内山壮真

高卒2年目の19歳・内山は先発投手が原樹理と石川雅規の際に、優先的にマスクをかぶり経験を積んでいる。

当初は打撃面で苦しんでいたものの、5月に入ってからは見違えた。4月末の時点では打率.150だったが、現在は打率.236と持ち直してきた。5月の月間打率は.344(32打数11安打)。さらにOPS.948は山田哲人(.770)を越えている。打席数が大きく違うとはいえこの数字は驚異的だ。

5月21日のDeNA戦では初の猛打賞を記録し、24日の日本ハム戦ではプロ初本塁打も記録した。また中村がスタメン出場時には代打での起用もある。5月に入ってからの代打成績は打率.500(4打数2安打)、出塁率.600とここでも結果を出している。

プロ初本塁打となった日本ハム戦での一発は同点の代打本塁打だった。川端慎吾や宮本のような左の巧打者タイプではなく、右の一発が狙えるタイプとして重宝されそうだ。

第3捕手・古賀優大の重要性

そして高卒6年目・23歳の古賀優大も忘れてはいけない。古賀は中村復帰後に1試合しかスタメン起用がなく、今シーズンの打率.125(40打数5安打)、OPS.338と打撃面でかなり苦しんでいる。また正捕手中村、期待の若手・内山に挟まれており置かれている状況は厳しい。

しかし古賀が第3捕手にいるからこそ、代打中村、代打内山のカードが切れている部分もある。もし代打のカードを切った後、捕手にアクシデントがあればマスクを古賀がかぶらなければならない。第3捕手の最も重要な役割だ。試合終盤に起こりうる万が一のアクシデント。そんな突発的なときにベテランでなくとも”古賀なら任せることができる”といった安心感がベンチにはあるのだろう。

第3捕手は試合に出る機会が少ない。また、若手よりは経験のある中堅以上の選手が務めることが多い。ヤクルトだと昨シーズンは嶋基宏であり、2020年シーズンは井野卓(現スコアラー)だった。しかし古賀は中村復帰後も週に1度は何らかの形で試合には出場している。

第3捕手でありながら出場機会、もっといえば成長を促す機会を与えられているのは大きい。31歳の中村がメインで出場しつつ、打てる捕手候補の19歳・内山に経験を積ませ、万が一には23歳の古賀が備える。今シーズンだけでなく、少し先の未来も見据えた布陣だ。年齢構成を見ると5年・10年後には内山と古賀が正捕手を争い、中村が第3捕手の役割を任されていても不思議ではない。

高津監督の著書『一軍監督の仕事』(光文社新書)には「育てながら勝とうじゃないか」という章がある。その中にこうある。

”僕は「二兎」を追いかけたい。勝ちにこだわりつつも、将来のスワローズを背負って立つ若手にチャンスを与えながら、才能の花が開くのを見てみたいのだ。”

今シーズンのヤクルトは、いや高津監督は著書にある通り、フィールドプレーヤーの要であり、もっとも育成が困難とされる捕手を育てながら連覇を目指している。そんな気がしてならない。

※年齢と数字は2022年5月29日終了時点

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