近年はキレ味自慢が台頭も…

今週日曜、春の6週連続GⅠの掉尾を飾る安田記念が行われる。マイル王決定戦として名高い伝統のレースに、実績最上位シュネルマイスターや新星イルーシヴパンサー、ヴィクトリアマイルで善戦したファインルージュ、ソングラインなど厚みのあるメンバーが集結した。

2008年以降の同レースでは上がり最速が【5-3-4-4】複勝率75%を記録するなど、近年は大箱で切れる末脚タイプの好走例が多い。ただアエロリットの2年連続2着などもあり、前めで運ぶ馬も当然ながら無視できない。今週は東京競馬場改修後、2003年以降の同レースのデータを分析し、信頼できる軸候補を探っていきたい。


「中山マイルの上がり最速勝ち」がカギ

2003年以降安田記念、芝マイル戦上がり最速勝ち経験ありの馬条件別成績,ⒸSPAIA


<芝マイル戦上がり最速勝ちの経験がある馬 条件別成績>
全体成績【13-13-10-131】勝率7.8%/連対率15.6%/複勝率21.6%
中山マイルで条件クリア【6-5-2-26】勝率15.4%/連対率28.2%/複勝率33.3%
東京マイルで条件クリア【5-7-2-38】勝率9.6%/連対率23.1%/複勝率26.9%
※2003年以降

まずは末脚が確かな馬のデータを検討する。ここでは芝のマイル戦を上がり最速で勝った経験に注目して、成績を概観していく。

好相性が目立つのは中山芝1600mで上がり最速勝ちがある馬。全体成績よりも有意に数字が良く、2017年7番人気1着サトノアラジン、2021年8番人気1着ダノンキングリーなど穴馬の激走も多い。単回収率は200%超えと妙味も抜群だ。瞬発力勝負に対応できるキレがありつつ、急坂が設置されたタフな条件もこなす総合力が、大舞台でのひと押しにつながっているのだろう。今年の該当馬はカラテ、シュネルマイスター、ソウルラッシュの3頭。

該当馬のうち前走芝で上がり2位以内をマークしていると【5-2-1-8】とちょうど半数が馬券に絡み、このうち4角10番手以下から差し切った経験があった馬は【5-1-0-4】と勝率が増す。3頭のうちデータをクリアするのはソウルラッシュただ一頭だ。

同舞台・東京マイルでの上がり最速勝ちも悪くない。該当馬のうち前走1400m以上で2着馬に0秒3差以上をつけて勝っていると【3-2-0-0】のパーフェクト。イルーシヴパンサーに追い風が吹く好データといえるだろう。


逃げ・先行組はGⅠ好走歴が必要

2003年以降安田記念芝マイル戦上がり最速勝ち経験ありの馬条件別成績,ⒸSPAIA


<逃げ・先行馬 条件別成績>
全体成績【5-7-4-66】勝率6.1%/連対率14.6%/複勝率19.5%
前走3着以内【5-5-3-31】勝率11.4%/連対率22.7%/複勝率29.5%
前走4着以下【0-2-1-35】勝率0.0%/連対率5.3%/複勝率7.9%
※2003年以降

次に逃げ・先行馬について確認する。

一つの分水嶺となるのは前走着順。3着以内と4着以下では好走率も回収率も雲泥の差がある。素直に近走で結果を残してきた馬を上位に取るべきだろう。

前走3着以内で馬券に絡んだのべ13頭のうち9頭はGⅠで馬券に絡んだ経験があり、残る4頭中3頭にもマイル重賞勝ちの経験があった。先行して好走するにはトップレベルで戦える脚力と、近況の充実ぶりが必要といえる。

ヴィクトリアマイル3着レシステンシア、そして高松宮記念2着ロータスランドも京都牝馬Sでは先行策を見せており、このあたりはマークしておきたい。


上がり馬2頭がスターダムを駆け上がる

◎ソウルラッシュ
以上のデータを踏まえ、本命は新星候補の同馬に打った。中距離を使われていた頃はいまひとつな戦績を並べていたが、マイルに矛先を向けた昨年12月の1勝クラスで浜中俊騎手が終始持ったままの楽勝。以後は周知の通り連勝街道を突き進み、ついにGⅠの舞台にたどり着いた。

4連勝中の内容で最も評価したいのは前走のマイラーズC。2〜4着馬が4角3番手以内という典型的な前残り戦を4角13番手から片付けた圧巻の内容だった。レース上がり3F35秒8に比して同馬の上がり3Fは34秒1。一頭だけ格が違ったと言っていい。

2006年以降の阪神芝マイル(外回り)重賞で、レース上がりより0秒9以上速い上がり最速で勝った馬は過去に13頭おり、全てGⅠ馬。栄光のリストに14番目の名前を刻んだこの馬はGⅠ勝利を約束されたも同然だ。

◯イルーシヴパンサー
対抗は同じく4連勝中の同馬とする。何といっても前走の東京新聞杯は衝撃的なパフォーマンスで、のちにヴィクトリアマイルで2着に入るファインルージュを寄せ付けない圧巻の走りで重賞初制覇を飾った。ジャスタウェイやリスグラシューのように、いったん軌道に乗ると手が付けられなくなるハーツクライ産駒の成長曲線に乗った印象もある。

2003年以降の東京芝マイル重賞で、レース上がりより1秒以上速い上がり最速で勝った馬は過去12頭おり、10頭がGⅠ馬。同馬は東京新聞杯で1秒2差をつけており、こちらもGⅠ級といっていい。ソウルラッシュと甲乙つけがたいが、妙味を加味して2番手評価とした。

▲レシステンシア
逃げ・先行勢からは同馬をチョイス。本来は阪神JF圧勝のようにハイペースを得意としていて、後傾ラップの緩い流れだった前走ヴィクトリアマイル(3着)は必ずしもベストな展開ではない。不得手な流れでの好走は地力の証明といっていい。前走VMで掲示板を確保していた馬は【2-4-1-13】、馬券に絡んだ7頭中6頭がGⅠ馬で、VM組から選ぶならこの馬。前目で粘り込むシーンに警戒しておきたい。

以下VM2着ファインルージュ、高松宮記念ワンツーのナランフレグとロータスランドまで押さえる。

1番人気想定のシュネルマイスターはドバイ遠征帰りのタフなコンディションを嫌って消し評価。前年のマイルCS2・3着馬は安田記念で【0-0-1-20】。また、4歳以上のKingman産駒は【0-0-0-15】とJRAで馬券に絡んだことがなく、データ上も厳しい。馬券は◎から印への馬単を厚めに、◯から印への馬単を押さえとして勝負する。

▽安田記念予想▽
◎ソウルラッシュ
◯イルーシヴパンサー
▲レシステンシア
△ファインルージュ
×ナランフレグ
×ロータスランド

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。



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