能力値に差がなく大混戦

今年の安田記念は能力値5位タイが4頭、16位タイも3頭と、前代未聞の大混戦となった。それも能力値1位ソウルラッシュ、能力値3位ヴァンドギャルド、能力値4位ファインルージュ、イルーシヴパンサー、ナランフレグは前走で自己最高指数を記録。その後の一戦となる今回は指数ダウンが懸念される。もっと言うなら、能力上位馬のなかで、当初からここを目標にしてきた馬はゼロである。

また、同レースは年によって内有利、外有利だったりすることはあるが、例年、緩みなく流れ、差しが決まることが多い。しかし、今年は高松宮記念で逃げたレシステンシアは距離に不安があり、陣営からも「番手から」というコメントが出ているように、今回も前走同様、逃げない可能性が高く、明確な逃げ馬は不在。

そうなると内枠のホウオウアマゾンが逃げる公算が高い。しかし同馬も今年2月の東京新聞杯でトーラスジェミニのオーバーペースに巻き込まれ、12着に失速しているだけに積極的には行かないだろう。

しかも当日は午後から雨模様。馬場状態が悪化すれば例年のような1分31秒台の決着ではなく、1分32秒台の決着が濃厚になってくる。そうなるとスプリンターより、中距離で実績のある馬にチャンスが出てくるので、その前提で予想を組み立てたい。

能力値1〜5位馬の紹介

2022年安田記念指数画像,ⒸSPAIA


【能力値1位 ソウルラッシュ】
デビューから芝では2000m以上を使われていたが、昨年12月に初めて芝1600mの1勝クラスを好指数で勝利。するとその後は4連勝でGⅡ・マイラーズCを優勝、初重賞制覇を達成した。

前走は朝から7レース終了後まで雨が降り続き、時計の掛かる馬場状態。さらにベステンダンクが緩みないペースで逃げたことで、差し、追込馬に有利な流れとなった。13番枠からやや出遅れ後方からの競馬となり展開に恵まれたが、自己最高指数を記録した。

これで芝マイルは4戦4勝と無敗。前走は休養明けで重馬場、タフな馬場状態だった前々走の春興Sを先行策で完勝した後の一戦だったにもかかわらず、反動が出ることなく、好走したのは地力強化の現れだろう。

ただ、ソウルラッシュは前々走、前走と時計の掛かる馬場で指数を上昇させた馬。パンパンの良馬場、超高速馬場の安田記念になったときは、良くも悪くも未知数だったが、日曜日は雨予報。ある程度、時計が掛かることが予想される。この雨は同馬にとってプラスに働くだろう。

【能力値2位 ロータスランド】
昨年6月の重馬場だった米子Sを快勝し、その後は関屋記念も優勝。芝のマイル戦で先行策からジワジワと伸びるレースが得意な馬。休養明けの前々走、京都牝馬Sでは肉体改造(馬体重18Kg増)が吉と出て、スピード面がさらに強化。7番枠から好発を切り、速い二の脚で楽に2列目外を取って、4角ではもう先頭に立つ正攻法の競馬で快勝した。そして前走の高松宮記念では、無理のない範囲で前の位置を狙ったが、前が速かったため、好位馬群の中目でレースを進め、クビ差の2着に善戦。

今回はそれ以来のレース。もともとマイル適性もあり、能力面は問題ないが、筋力強化で短距離を狙った後の距離延長をどう突破するかが課題となる。似たタイプのレシステンシアとうまく折り合いが付けばチャンスはありそうだが、馬の作りと臨戦過程からこのレースが大目標ではないことが予想できる。

【能力値3位 ヴァンドギャルド】
2020年の富士Sで初重賞制覇を達成、昨年のドバイターフ2着、今年の同レースでも3着と好走。前走のドバイターフはパンサラッサが逃げて、前半4F47秒06-後半4F47秒52と緩みないペース。その流れを後方3番手でレースを進めていた同馬は最後の直線で馬群の中目を捌き、ラスト100mでは優勝したかと思わせる末脚を発揮したが、3着惜敗。

今回はそれ以来の一戦。今回の相手なら能力、実績、適性面は上位だが、前走で自己最高指数を記録し、力を出し切った後のレースになる。さらに海外遠征帰りとなると、体調面でピークに持ってくるのは難しいと見る。

【能力値4位 ソングライン】
昨年のNHKマイルCで2着に好走し、秋の富士Sでは初重賞制覇を達成。今年初戦の前々走1351ターフスプリントでは、2番枠から出遅れ、中団馬群の内目を追走。最後の直線で中目に出されると、そこからしぶとく伸び続け後続の追撃を凌いで接戦を制した。同馬が前々走時に記録した指数は、富士S優勝時と同等のもので、そこまで凡戦だったわけではない。

前走のヴィクトリアマイルでは、超高速馬場ながら前半4F46秒3と遅く、逃げた18番人気ローザノワールがあわや3着に粘るかという流れ。ソングラインは前々走で1351mを使われたこともあり、2番枠から五分のスタートを切って行きっぷりも良く、掛かり気味。コントロールされながら中団に下げ、ファインルージュ直後の中目を追走する形となった。

しかし3角では馬群が凝縮し、十分な進路がなかったため少し躓きポジションダウン。そこからもう一度差を詰め、ファインルージュの直後まで上がった。最後の直線ではそのまま中目を伸びて5着を死守した。

ソングラインは海外帰りでそれも好走した後の一戦だったこともあり、ややズムーズさを欠いた。そんな中でよく頑張ったと見ている。安田記念はヴィクトリアマイルよりペースが上がる可能性が高く、今回は前走以上に走れる可能性は十分ある。

【能力値5位 ファインルージュ】
デビュー3戦目のフェアリーSを優勝、続く桜花賞も3着に善戦したように、芝マイル戦が得意な馬。今年に入ってからも東京新聞杯2着、前走ヴィクトリアマイルも2着と好走した。

前走は11番枠からやや出遅れたが、そこから無理せず中団中目を追走。最後の直線序盤で外に出されたが、進路が狭く少し躓く不利があった。そこから立て直し、進路を内に切りかえジリジリと伸び、ラスト1Fで馬群を捌いてレシステンシアの外からしぶとく追撃。2着争いをクビ差制した。

確かに前走はスムーズとは言えないレースぶりだった。しかし、前走は休養明けで自己最高指数を記録。それも馬体重10Kg減と馬体を絞っての好走だった。レースぶりからは前進が見込めそうだが、今回は疲れが懸念される一戦となる。能力、適性の高さは認めるが過信はできない。

【能力値5位 イルーシヴパンサー】
昨年6月の東京1勝クラスを好指数勝ちし、破竹の4連勝で前走の東京新聞杯を優勝。勢いはある。ただ、前走の東京新聞杯は、好位の外を追走した3番人気ホウオウアマゾン(次走のマイラーズC2着)が12着に失速したように、緩みないペースでレースが流れ、差し、追い込み馬有利の流れ。出遅れ後方からの競馬となった本馬は展開に恵まれた。

今回はそこから約4カ月の休養明けの一戦。前走は自己最高指数を記録したように、力を出し切ったと推測できる。そうなるとそこから一旦立て直す必要があり、今回でピークに持ってくるのは難しいだろう。前走同様に展開に恵まれたとしても、厳しいと見る。

【能力値5位 レシステンシア】
2歳時に阪神JFを好指数で圧勝し、桜花賞、NHKマイルCでも2着。芝のマイル戦が強く得意な馬だ。ただこの馬はスピードの持続力はあるが、最後に加速することが苦手。かつてのキョウエイマーチによく似ている。

よって、その弱点を出さないためにはなるべく前で立ち回るか、逃げることがベター。ただ、そうは言っても休養明けはスタミナ面がもっとも不足しやすいもの。前々走の高松宮記念ではオーバーペースで逃げたことで、息切れしてしまった。そして前走ヴィクトリアマイルでは叩かれ息持ちが順調に良化、3着に巻き返した。

ただ前走もトップスタートを切りながら、ローザノワールが先頭に立つまで待ち、中途半端に折り合う形。能力を最大限に出し切れずの3着だったと言える。前走で能力全開だったとは言えず余力はまだ残っていそうだが、乗り方の難しさは付いて回る馬だ。

【能力値5位 ナランフレグ】
デビュー当初はダート路線を使われていたが、芝に転向してから着実に上昇。ダートでは1勝クラスで伸び悩んでいたが、2020年のシルクロードSでは接戦の3着と好走するまで成長した。その後はオープンクラスでやや壁に当たっていたが、昨年10月のオパールSで2着した後は再び調子を取り戻し、前走の高松宮記念で悲願のGI制覇を達成した。

しかし、前走は2番枠からやや出遅れ。テンに置かれていつも通り後方から枠なりで終始最内を立ち回ったもの。ラスト1F地点でレシステンシアの直後から外に出す際、外への進路をトゥラヴェスーラに塞がれており、狭い間に体を捻じ込んで捌いてくるロスはあったが、展開、馬場など条件がピッタリとハマった競馬だった。

また、同馬は芝初勝利が新潟直線1000m。その後も芝1200mを中心に使われ、芝1400m出走時は良い結果が出ていない。今回は前走で自己最高指数を記録した後の一戦。加えて一気の距離延長が難題となりそうだ。

降雨で時計が掛かれば、サリオスが穴馬に浮上

新馬戦、サウジアラビアRC、朝日杯FSと2歳時に芝マイル戦を3連勝した馬。その後の皐月賞、ダービでも2着したように実績は十分。3歳秋の毎日王冠は休養明けながら好指数で圧勝したが、これが大きなダメージとなったようで、次走のマイルCSでは5着敗退。そこからスランプ状態となった。

しかし、このスランプは状態面の問題よりも、不適条件を使われたことが大きいと見る。同馬はこれまでマイルを7戦しているが、1分32秒4の持ち時計しかなく、3着以内だったのは昨年の香港マイルを含め、それよりも遅いタイムでの決着。

それゆえに時計の掛かる馬場の香港マイルでは、同馬の好走に期待。予想通り香港トップのゴールデンシックスティ相手に3着と善戦。1番枠からまずまずのスタートを切り、そこから外の各馬の出方を窺いながら、じわじわハナを主張し、最終的には主導権を握る形。スローペースで逃げて走破タイムは1分34秒1(日本の測定方法だとおおよそ1分33秒1)だった。

前走の高松宮記念では、一線級のスプリンターたちを相手にスピード負け。1番枠から果敢に前の位置を取りに行ったが取り切れず、外から被されポジションダウン。本来の力を出し切れなかった。しかし、不適条件のレースを叩かれた今回は間違いなく状態面は上昇してくるだろう。

前走でスプリント戦を使われているので、今回はスタート直後のスピードの乗りも良くなり、マイルでは楽に良い位置が取れるはず。もともと同馬はクラシック戦線で好走したように、今回のメンバーではスタミナは上。例年のように1分31秒台の決着だと苦しいが、日曜日は雨模様。時計が掛かる馬場でレースの流れに乗れさえすれば、最後まで簡単には止まらないだろう。ここは復活の勝利が期待できる一戦だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ソウルフラッシュの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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