800m、1500m、5000mの3種目制覇なら史上初

陸上女子中距離界の女王、田中希実(豊田自動織機)が6月9日に開幕する第106回日本選手権で快挙に挑む。中距離の800メートル、1500メートルに加え、長距離の5000メートルにエントリー。この3種目で優勝すれば史上初のことになる。田中にとっては、ライバルはもとより、レース間隔との戦いにもなる。

田中は1500メートルで日本記録の3分59秒19、800メートルでは日本歴代5位の2分2秒36、5000メートルでは同4位の14分59秒93を持つ。力的には3種目制覇も可能だが、種目ごとに立ちはだかる壁がある。

田中希実の出場予定

無風の1500メートル

田中が最も得意とするのは東京五輪で、日本勢女子で初めて8位入賞を果たした1500メートルだ。日本戦選手権は2連覇中。出場する3種目の中で最初の決勝種目であり、余力も十分だろう。

ともに東京五輪に出場した卜部蘭(積水化学)がライバルになるが、大きなアクシデントがなければ1冠目は問題ないとみる。

力をどこまで出すのかにかかる800メートル

2種目目の決勝は、最終日12日16時20分スタートの800メートルになる。これまで日本選手権での優勝はなく、昨年は3位だった。ライバルは日本歴代2位の2分0秒92を持つ北村夢(エディオン)、昨年優勝の卜部になるだろう。

力だけで言えば十分に勝てるのだが、敵は1時間15分後に控えた3種目目の5000メートルにある。短いインターバルの後にある自身最長種目で勝つためには、800メートルでいかに力を残せるかにかかる。

ただ、力を抜きすぎると2冠目は逃げていく。そのさじ加減を田中はどう判断するのか。主導権を自ら握らないと、不要な力を使うことになる。

疲労とライバルとの戦い、5000メートル

田中は予選を含めると、最大で5レースを走ることになる。その5レース目になるのが、最も長い5000メートル。ただでさえ疲労がピークな上に、レース間隔が異常に短く、3冠への最大の難関となる。

ただ、3位に終わった昨年は、800メートルと5000メートルの間隔は35分だった。前回よりは、若干条件は良くなった。種目の日はずらせないが、時間なら移動は可能。今回は5000メートルがトラックの最終種目となったことで、少しインターバルが延びた。大会側の配慮があったのかもしれない。

とはいえ、厳しいことには変わりはない。この種目はライバルが多い。今夏の世界選手権(米国オレゴン)の参加標準記録を突破している選手が田中を含めて5人いる。

最大のライバルは昨年の優勝者で、1万メートルで世界選手権代表に内定している廣中璃梨佳(日本郵政グループ)だ。田中も2年前の優勝者とはいえ、ライバルがひしめくこの種目を、疲労困憊の中で勝つのは至難の業だろう。

田中は新しいことに挑んできたランナーである。同志社大時代には大学の陸上部には入らず、クラブチームに所属し、父親の指導を受けてきた。

そして、中長距離の3冠への挑戦である。その厳しさから「無理だ」という声も聞かれるが、新たな道を切り開く時にはそういった声はつきもの。田中には固定観念をぶち破る走りを期待したいところである。

【関連記事】
・男子100メートルに異変?世界陸上参加標準記録いまだ突破者ゼロ
・93年ぶり快挙の21歳・田中希実、今後の軸足は1500mか5000mか
・マラソンのパリ五輪代表選考レース「MGC」とは?出場条件とファイナリスト