ヴェルトライゼンデ、平地重賞最長間隔勝利

鳴尾記念はかつて師走開催を告げる重賞だった時期もあったが、2012年から6月のクラス再編成直後に移された。ファン投票選出の宝塚記念の前哨戦ではなく、春と夏の狭間、少しばかり半端な立ち位置になった。しかし15年ラブリーデイがここを起点に、宝塚記念と天皇賞(秋)も含む重賞4連勝。19年メールドグラースは豪州GⅠのコーフィールドCまで年内6連勝を成し遂げた。

中京だった昨年は前後半1000m1.02.9-57.8。前半が超スローとはいえ、後半1000mを57.8でまとめた内容は濃かった。1着ユニコーンライオンは次走宝塚記念でレイパパレを差しかえしての2着と活躍。2着ショウナンバルディは暮れの中日新聞杯を勝った。鳴尾記念は春シーズン終盤にありながら、夏、秋に向けての起点でもある。

そういったコンセプトでいえば、今年のヴェルトライゼンデの復活Vはまさに逆襲の予感すらある。20年クラシックでは日本ダービーでコントレイルの3着。中京が舞台だった神戸新聞杯では、当時無敗の二冠馬相手に2着に食い下がった。4歳初戦AJCC2着で順調な再出発を切ったかにみえたが、その後、屈腱炎を発症。休養は1年4カ月に及んだ。

レース間隔1年4カ月での勝利はJRA平地重賞最長間隔記録。障害では07年京都ハイジャンプを勝ったテイエムドラゴンの1年7カ月があるが、平地次位は88年オールカマーを勝ったスズパレード1年3カ月なので、34年ぶりの記録更新。価値は高い。同時に関係者の不断の努力を大いに称えたい。

管理する池江泰寿調教師はこれで鳴尾記念6勝目。初制覇は6月に移った12年トゥザグローリーだから、わずか11年で6勝。驚異的としかいいようがない。

この時期の鳴尾記念を熟知したトレーナーがレーン騎手を配し、念には念を入れた仕事でヴェルトライゼンデに初重賞タイトルを獲らせた。脚元の具合次第だろうが、コントレイル世代を代表する存在として秋に向け飛躍を遂げてほしい。



内容が濃すぎる後半1000m57.6

さてレースは戦前の予想通り、前走阪神大賞典で逃げたキングオブドラゴンが前年2着の中京巧者ショウナンバルディとの枠の利を活かしてハナへ。

のぼり勾配が続くコースで前半1000m通過1.00.1は開催後半でも高速馬場の中京では速くない。特筆すべきは後半1000m57.6の内容。11.9-11.4-11.3-11.1-11.9とすべて11秒台。昨年は後半800mが速かったが、今年は1000mのロングスパート。坂下まで加速ラップを刻み、急坂区間の残り400〜200mで11.1。ショウナンバルディはここで苦しくなり後退した。

一方ヴェルトライゼンデはインに潜み、体力を温存、残り1000mの加速ラップでいつでもスパートできるようにスタンバイ。下がってきたヤシャマルの内にスペースを見出し、抜け出してきた。兄のワールドエース、ワールドプレミアと同じくロングスパートへの強さを見せた。母マンデラの産駒はこれで重賞勝ち馬3頭目。父はコーナーでの器用な加速力が武器だったドリームジャーニー。宝塚記念親子制覇、といいたいが、脚元の状態次第だろう。兄2頭よりも器用さがあり、活躍できる条件は広いので、GⅠ制覇のチャンスは十分ある。

2着ジェラルディーナは位置取りの差が最後に出た印象。だが、牡馬さえ苦しくなるロングスパート型の競馬で外を回って終いまでしっかり駆けた。母ジェンティルドンナも持久力で牡馬と互角以上だった。血統のよさが出てきた印象で、今後もあえて牡馬相手の中距離戦をターゲットにしても面白いのではないか。

3着サンレイポケットは頭が下がる。GⅠ連続4着を記録した6歳シーズンが天井ではないかと、年明け2戦の内容から勘ぐってしまった自分を恥じる。上記の厳しい後半を乗り切り、ゴールまでジリジリとあきらめずに伸びてきた。2000mタイムは自己最速を更新。すばらしい。サンレイポケット向きの流れになった面は否定できないものの、左回りの中距離重賞であれば、十分戦える。混戦向き、もう少し時計を要する馬場ならもっと際どい。

2022年鳴尾記念コーナー通過順



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。



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