ワコーチカコやルージュバックらが制した難解な重賞

安田記念は牝馬のソングラインが勝利。前走ヴィクトリアマイル5着からの見事なリベンジを見せた。また、鳴尾記念は屈腱炎による長期休養明けのヴェルトライゼンデが中495日で鮮やかな差し切り勝ちを収めた。

今週はエプソムC。ダービー卿CT勝ち馬タイムトゥヘヴンや、現在2連勝中のジャスティンカフェやヤマニンサンパと勢いある4歳馬が集結した。迎え撃つベテラン勢も前年覇者ザダルや皐月賞3着馬ガロアクリークなどが参戦。シンボリクリスエス産駒のコルテジアは2020年ダービー以来、約2年ぶりの実戦となる。

過去にはダイナフェアリーやプレクラスニー、ワコーチカコやカネツクロスらが制している一戦。近年もダークシャドウやディサイファ、ルージュバックといった実力派が勝利している。今回は、エプソムCの歴史を振り返る。

1番人気が5連敗中と波乱が続く

エプソムC過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


過去には2016年ルージュバックや2012年トーセンレーヴ、2011年ダークシャドウなどが1番人気に応え勝利しているものの、ここ5年では1番人気馬が未勝利。この間で馬券に絡んだ1番人気馬は2017年2着アストラエンブレムと2019年3着ソーグリッタリングのみで、他は掲示板外に敗れている。ここ3年の馬連配当は56.7倍→122.1倍→61.1倍と、波乱が続くレースとなっている。

かわりに5番人気馬は5年で4度も馬券圏内に入る好調ぶりを見せている。さらに2020年には18番人気トーラスジェミニが3着に食い込むなど、伏兵の活躍も少なくない。

複数回このレースに挑戦してくる馬は一定数いるが、リピーターレースというわけでもない。特にダイワキャグニーは2018年1番人気14着→2020年9番人気1着で、サトノアーサーは2018年2番人気1着→2020年1番人気6着と、明暗が入れ替わった。2019年覇者のレイエンダも、翌年には10着と大敗した。

世界で輝いた逃げ馬エイシンヒカリ

このレースを機に世界に羽ばたいた馬といえば、エイシンヒカリだ。2014年クラシック世代にうまれたエイシンヒカリは、同期のイスラボニータが皐月賞を制した翌週にデビューと、始動の遅い馬だった。

しかしその未勝利戦を5馬身差で快勝すると、そこから条件戦3戦、オープン競走アイルランドTまで5連勝。特に5戦目のアイルランドTでは向こう正面で10馬身差をつける大逃げを打ち、直線で大きくよれながら外ラチすれすれでゴールするという破天荒な走りを見せ、多くのファンの度肝を抜いた。

勢いそのままに無敗の重賞制覇を目指したチャレンジCでは9着に敗れてしまい、エイシンヒカリは6戦5勝という戦績で3歳シーズンを終了。翌年、陣営が迎え入れたのはレジェンド・武豊騎手だった。そして始動戦となったオープン競走・都大路Sを快勝し挑んだのが、このエプソムCである。舞台は、前年のアイルランドTと同じ東京競馬場だった。

2015年エプソムCはサトノアラジンやペルーサ、ディサイファやフルーキーなど例年以上に手強いメンバーが揃っていた。武豊騎手はエイシンヒカリを落ち着かせ、いつもよりゆるやかなペースで暴走させないまま、実力馬を相手に逃げ切り勝ちを果たしたのだった。

転機とも言える重賞制覇を達成したエイシンヒカリは、秋に毎日王冠を制すると、天皇賞(秋)での敗北(9着)を挟み、香港Cで快勝。さらに翌年、フランスのGⅠイスパーン賞では2着に10馬身差をつける圧勝で日仏の競馬ファンを大いに驚かせた。

エイシンヒカリは引退後に種牡馬となり、栄進牧場の生産馬からローズS2着、秋華賞4着のエイシンヒテンを輩出。今年の3歳世代からも、もみじSを制したカジュフェイスなど素質馬を送り出している。

"1勝クラスで初勝利"したトーセングランが出走

特別登録のあるトーセングランは、ディープインパクト産駒の6歳馬。エスティファームの生産馬で、2〜3歳シーズンには新馬戦、未勝利戦を8戦して勝ちきれなかったが、未勝利のまま1勝クラスに挑戦するとそこで8番人気ながら初勝利をあげた。それ以降は、6戦4勝2着1回3着1回という抜群の安定感でオープン入り。前走は新潟大賞典に挑んだが、そこでは11着と重賞の分厚い壁に阻まれた。ただ、この時は約1年ぶりの実戦であり、今回は一度叩いた上での挑戦。2度目の重賞挑戦でどういった走りを見せてくれるだろうか。

また、上述の通りダイナフェアリーやワコーチカコ、ルージュバックといった牝馬が制してきたエプソムC。さらに2019年にはサラキアが2着、2020年にはアンドラステが4着と好走している。今年も府中牝馬S勝ち馬のシャドウディーヴァが参戦。昨年3着だった牝馬限定重賞のマーメイドSではなくエプソムCを選んだことにも、陣営の本気が伺える。

今回はディープインパクト産駒VSトーセンラー産駒やシンボリクリスエス産駒VSエピファネイア産駒など、親子種牡馬対決もみられる興味深いメンバー構成となった。ここから世界に羽ばたくような活躍馬が登場することに期待しつつ、難解な一戦を見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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