過去10年で逃げ馬の複勝率50%

東京芝1800mは1〜2角の間にあるポケットからスタート。最初の2角までの距離が約150mだが、2〜3角までの距離は約750mもあるため、先行争いがさほど激しくならないことが多い。今回は逃げ馬がトーラスジェミニ、ノースブリッジの2頭のみ。またその2頭も折り合うことが可能な馬だ。

一方、差し、追い込み馬は12頭中7頭というメンバー構成。その他、先行馬も流動的な馬が多いだけに、今年は前が残る可能性も十分にあると見ている。それも踏まえて予想を組み立てたい。

能力値1〜5位の紹介

2022年エプソムCPP指数,ⒸSPAIA


【能力値1位 ダーリントンホール】
デビュー2戦目の札幌2歳Sで3着、そして東京芝1800mの共同通信杯を制した素質馬。その後は皐月賞、日本ダービーにも出走したが、そこでは結果を出せず。また、ノド鳴り手術などで2度に及ぶ長期休養を余儀なくされた。しかし、今年は洛陽S2着、ダービー卿CT3着と安定した走りを見せている。

同馬はスタートが遅く、二の脚でも置かれ気味になる面がある。前々走の洛陽Sでは序盤のペースが遅かったこともあり、2番枠から好発を切り一旦は2番手から外の馬に行かせ、好位の最内を追走する形。4角で外に出されると、そこからジリジリ伸びて2着。ラスト100m辺りで先頭に立ったところで、外からエアファンディタに差されたが、しぶとい粘りを見せた。

前走のダービー卿CTは、10番枠からスタート後に内の馬と接触し、狭くなったがそこから少し盛り返して中団の中目を追走。ラスト1Fでは一旦2番手まで上がったが、外の2頭に差された。前走は外差し馬場、前半で出遅れを挽回するのに脚を使ったことと、最後の直線で勝ち馬タイムトゥヘヴンよりも前から動いたことは評価できる。しかし、この馬はゲートが不安定なところが弱点だ。

スタートを決めたときは、共同通信杯や前々走のように好走することが多く、能力、適性ともに申し分ない。しかし、前有利な展開になる可能性が高い今回は、評価を下げる必要があるのも確かだ。

【能力値2位 タイムトゥヘヴン】
前々走のダービー卿CTで初重賞制覇を達成。同レースは外差し馬場で、逃げたリフレイム、その外から競り掛けて行ったサトノフェイバーが15、16着に沈む展開。この馬は3番枠から出遅れ。最後方付近から3角をロスなく回り、4角で外に出されるとジリジリ伸び始め、ラスト1Fで前をまとめて差し切った。展開に恵まれたが、自己最高指数を記録した。

通常なら激走の疲れが残って次走で崩れるのが一般的。しかし、同馬は前走の京王杯スプリングCでは1Fの距離短縮にも対応、3着と善戦した。能力を出し切った直後の一戦ながら好走したとなると、かなり力をつけていると高く評価できる。この勢いなら今回はかなり有力と見るべきだろう。ただ少し気になる点もある。

同馬はもともと中距離を先行し好成績を挙げていた。しかし、マイル戦を主戦場としてからは、脚をタメて瞬発力を生かす競馬で好走してきた。そのことから、距離が短い方が良い馬に変貌してきている印象がある。

今回の舞台は東京芝1800m。それも雨が降ったり止んだりして、馬場が悪くなる可能性もある。今回は12頭立てと重賞としては少頭数、そうなると勝ちを意識して前目でのレース運びになりやすい。そのときはスタミナ勝負になりがちだ。そこにやや不安を感じる。

【能力値3位 ジャスティンカフェ】
昨秋の1勝クラスを休養明けながら好指数勝ち、能力の高さと成長力を感じさせた馬。その後はやや疲れも出たか、成績がすんなりとは伸びてこなかった。しかし、ここに来て疲労も抜けてきたのかグングン上昇。

前走の湘南Sは14番枠から五分のスタートを切ったものの、二の脚が遅く後方2番手からになった。そこから折り合い重視で乗られ、4角で外を回って直線序盤で大外に出されると、ラスト2Fで一気に突き抜けた。重賞通用レベルの指数で3勝クラスを突破した。

今回も前走同様に走れるなら、当然チャンスは大きい。しかし、前走は脚をタメにタメて爆発させたレース内容。瞬発力の素晴らしさは証明したが、スタミナ面は未知数な部分が残る。今回は前走から距離が延び、さらに馬場が悪くなる可能性もある。

多頭数で人気がないなら後方でスタミナの温存も可能。しかし、今回は上位人気になる可能性が高く、ある程度は勝ちを意識した競馬をせざるを得ない。そのときは前走同様の走りができるかは不透明だ。能力は高く、将来的に活躍が期待できる馬ではあるが、今回は試金石の一戦となる。

【能力値4位 ザダル】
デビューから3連勝でプリンシパルSを勝利した素質馬。古馬になってからも、芝1800mの関越Sを好指数勝ち、昨年のエプソムCで初重賞制覇を達成した。

昨年のエプソムCは馬場の内側が悪化していたため、中団列が外に広がって行く流れ。同馬は15番枠だったがまずまずのスタートから上手く中目のスペースを拾い、中団中目を追走。直線序盤で外に出されると、そこから一気に抜け出し、ラスト1Fで先頭に立っての優勝だった。

また、今年の京都金杯も7番枠から出遅れ後方からの競馬となったが、中団中目の後ろぐらいまで位置を挽回。最後の直線序盤でも馬群の狭い間を割り、ラスト100m辺りから抜け出し優勝。能力面に衰えはないように見える。

前走のダービー卿CTは10着敗退。スタートが悪く、中団馬群に突っ込んでいくような競馬で、最後の直線でも馬場の良い外に出せなかった。ただ、前走はタイムトゥヘヴンの直線外一気が決まったように、追い込み馬に有利な流れではあった。

サダルは4角で前の馬との間を詰め過ぎ、少しブレーキをかけたことで、最後の直線で勢いをつけきれなかった。しかし、もう少し走れても良かったと見ている。巻き返して当然の実力馬ではあるが、過信はできない。

【能力値5位 ガロアクリーク】
3歳春の芝1800m戦・スプリングSを優勝すると、続く皐月賞ではコントレイル、サリオスに次ぐ3着となった実績馬。3歳秋もセントライト記念で3着するなど力のあるところは見せていたが、昨年のエプソムCでは脚部不安もあり12着に惨敗した。

しかし、今年初戦となった前々走の中山記念では、長期休養明けながら4着と好走。同レースは3番枠からまずまずのスタートを切り、そこから無理せず折り合い重視で位置を上げ、後方の内目でレースを進めた。3角で後方集団の内目から中目、4角で外に出して直線は外からジリジリ伸びた。後にドバイターフを勝つパンサラッサが逃げて前を潰したことで、展開には恵まれたが、力が衰えていないことを証明する走りだった。

前走の都大路Sは6着と着順は悪いが、スローペースを意識して好位の外を追走し、勝ちにいってのもの。内容はそこまで悪くなかった。また前走は最後の直線で伸びそうで伸び切れなかった。それはいかにも長期休養明けで好走した直後の、疲れが残った馬が直線で見せがちな姿だった。

今回は重賞勝ち実績のある芝1800mが舞台。当然、前走を叩かれて状態は良くなっているだろう。先週の鳴尾記念ではスプリングSで降したヴェルトライゼンデが復活の優勝。安田記念でもサリオスが3着好走と、この流れに乗りガロアクリークも復活の好走が大いに期待できる。

穴馬は大逃走劇に期待高まるトーラスジェミニ

不良馬場で行われた2020年のエプソムCで3着した馬。2021年は重馬場だった東風Sを勝利し、安田記念5着、七夕賞を優勝した実績がある。今年に入ってからは着順の悪い大敗が続いているが、3走前の中山記念は勝ち馬パンサラッサに付いて行って失速。前々走の黒船賞は初ダートで惨敗は仕方なし。

前走のダービー卿CTは先行馬に厳しい流れ。それを向正面から動き3角では2番手のサトノフェイバーの外まで上がり、4角では先頭のリフレイムに並びかけていく競馬。サトノフェイバーが勝ち馬と4.4秒差の16着、リフレイムが勝ち馬と1.4秒差の15着に敗れる厳しい流れ。そんな中でトップハンデ57.5Kgを背負い、勝ち馬と0.8秒差と大きく崩れなかったところに復調気配を感じた。

今回は得意の東京芝中距離戦、馬場悪化も歓迎だ。今回有力視されている馬たちは、馬場状態、スタミナ面に不安を抱えている馬が多く、それらはなるべく脚をタメたいはず。そのような展開なら、スタミナ面にあまり不安がないのは強調できる。

今回のメンバーでは指数最高値1位。これは今までのレースで最高の走りを見せたときは、一番強い実績があることを示している。スタミナ切れのライバルたちを横目に、大逃走劇が決まる可能性は十分ある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ダーリントンホールの前々走指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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