燃え尽きやけがのリスク、低年齢選手の負担回避

冬季五輪の花形競技、フィギュアスケートで五輪に参加できる選手の年齢制限を現行の15歳から17歳以上に引き上げることが決まった。10代が席巻する低年齢選手に対する心身の負担に配慮し、2月の北京冬季五輪で当時15歳だったロシアのカミラ・ワリエワに起きた世紀のドーピング騒動が決め手になった形だ。

フィギュア女子でトップ選手の低年齢化は著しく、1998年長野冬季五輪以降、金メダリストは2006年トリノ冬季五輪の荒川静香を除けば、すべて10代選手。1998年長野五輪で最年少15歳の金メダリストに輝いたタラ・リピンスキー(米国)は燃え尽き症候群に陥り、2018年平昌冬季五輪に15歳で金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワ(ロシア)も17歳で活動休止となった。

4回転など高難度ジャンプによる大けがが増え、10代で第一線を退くケースも少なくない。国際スケート連盟(ISU)は競技力向上の裏で燃え尽きや食事制限など選手の身も心も危うさをはらむ現状に危機感を抱き、低年齢選手の心身の負担を問題視していた。

金メダルのリピンスキーは決定を痛烈に批判

今回の決定に大打撃を受けるのが、エテリ・トゥトベリーゼ・コーチの下、次々と「天才少女」を量産してきたロシアだろう。国内では「ロシアつぶしだ」などと既に猛反発する意見が出ている。

北京五輪ではワリエワにドーピング問題が発覚し、世界反ドーピング機関(WADA)の規定で16歳未満の「要保護者」に該当したため、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場継続を容認。この判断が物議を醸し、年齢制限引き上げの議論に注目が集まっていた。

1998年長野冬季五輪で金メダリストとなったリピンスキーは6月8日、自身のインスタグラムでISUが決めた年齢制限引き上げを痛烈に批判。選手がパフォーマンスする最大のステージを否定するとした上で「これが若い選手に対する組織的なドーピングと虐待の答えなのですか?」「この決定は私を困惑させています」と問いかけ「このルールでどうやって選手を守るのか。世界的なスキャンダルから自分たちの身を守っただけ」と非難した。

「シニアの大会に出られない15歳は同じ壊れたシステムの下でトレーニングを続ける。目にしないだけで、闇に葬り去られることになる」と警鐘を鳴らした。

26年ぶりの改正、13歳の島田麻央は2026年五輪に出場できず

6月7日、ISUの決定は新たなシーズンが始まる7月1日より前に、17歳に達することが条件となった。女子で4回転ジャンプを跳ぶ日本注目の13歳、島田麻央(木下アカデミー)は10月生まれのため、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪に出場できなくなり、強化面でも影響は大きい。

年齢制限の改定は1996年に14歳から15歳以上に見直して以来、26年ぶりだ。ISUは低年齢の選手に対し、燃え尽きや食事制限、大けがを負うリスクなど心身の負担を避けることを理由に挙げた。

既にシニアの国際大会に出場している選手に影響が及ばないように考慮し、2022〜2023年シーズンは15歳のまま、2023〜2024年は16歳、2024〜2025年以降は17歳と段階的に引き上げる。スピードとショートトラックも対象となる。

2006年トリノ冬季五輪当時は年齢制限を巡り、トリプルアクセルを代名詞に彗星のごとく現れた浅田真央が規定にわずか87日足りず、出場できなかった過去がある。

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