滋賀レイクスターズのフィリピン代表

5月末にシーズンを終えたバスケットボール男子のBリーグ各チームは新シーズンに向けた動きが活発だ。昨シーズンに続いて今オフも、日本代表選手、外国籍選手、若手の有力選手たちの移籍、既に日本で実績のある監督が動くなど、Bリーグファンたちの間で話題を呼んでいる。

ロースター枠が埋まるチームも出てきており、オフシーズンの動きは佳境を迎えつつあるが、一方で動向がわからない有力選手たちがいる。中でも筆者が注視しているのが滋賀レイクスターズのフィリピン代表キーファー・ラベナだ。

滋賀はB1(1部)を14勝43敗、西地区11チーム中10位という厳しいシーズンだったが、キーファー・ラベナの存在感は抜群だった。三遠ネオフェニックス所属の弟のサーディー・ラベナと共にBリーグを盛り上げたにもかかわらず、現時点(6月17日)で、まだ去就が未定だ。

滋賀は平均年齢の若いチームで、途中17連敗を喫するなどなかなか勝てなかった。その中で、常に全力でチームを引っ張っていたのがキーファー・ラベナ。持ち前の華麗なテクニックと高い身体能力で、チームを牽引した。

ただ、それ以上にキーファーの凄さを感じたのが、チームの誰もが認めるリーダーシップだろう。会場にいる観衆は彼の訴えかけてくるプレーに引かれ、虜にされていた。筆者自信、彼のプレーに魅了された。そのきっかけとなったのが、3月2日の富山グラウジーズ戦だった。

「俺はまだ試合を諦めてないぞ!」気合い一発ダンク

同じ西地区で、滋賀にとっては格上の相手である富山に対し、1Qは36-23とリードしていたが、富山の組織的な守備に苦しめられ、滋賀の攻撃がなかなか決まらなくなって逆転を許す。さらにそのままずるずると点差を広げられていった。

3Q残り30秒を切って69対89と20点差。4Qが残っているとはいえ、この点差を引っくり返すのは難しい。そんな空気が会場内に漂い始めていた。

残り11秒5で滋賀がマイボールとして攻撃を仕掛けた時、1人の男が諦めムードを切り裂いた。キーファーだった。

キーファーが味方からパスをもらって制止、相手の出方をうかがっていると、富山の守備が一瞬偏ってリングまでのスペースができた。すると、その”道”を見逃さずに、キーファーはドライブで進入していき、慌ててシュートブロックをしにいった相手選手を物ともせず、ワンハンドダンクを強烈に決めた。会場がどよめき、そして、丁度3Q終了のブザーが鳴った。

ワンハンドダンクを決めたキーファー・ラベナ

筆者提供


身体能力がすごいとはいえ、身長は183cmと高くはない。普通であれば、レイアップシュートでいくだろう。練習の時や、相手ボールをスティールして周囲に敵がいない時ならダンクを見せるかもしれない。

しかし、この状況でわざわざダンクをしにいった意味は、滋賀のファンやブースターたち、そしてコート内やベンチの滋賀の選手たちにもわかった。

「お前ら諦めてるのか!?俺はまだ試合を諦めてないぞ!」。言葉には出さなくても、ひとつのダンクでそれを示した。見ていて鳥肌が立った。

このプレーでムードが変わると、滋賀は4Qに反撃。残り25秒で4点差に迫り、最終的には103対108で負けたが、最後まで逆転勝利の可能性を漂わせた。

この試合がきっかけで、筆者は滋賀レイクスターズの試合をより見るようになった。

高いバスケIQと身体能力でチームを牽引

4月23日、24日の西地区の強豪・広島ドラゴンフライズ戦も印象的だった。23日は終盤にリードしたが、守り切れず最後に逆転負け。24日も同様に競った展開が終盤まで続き、またもリードしていたのがじわじわと詰められて82対79となり、4Q残り8秒7の時点で広島のボールになった。

すると、キーファー・ラベナがボールを持つ相手の腕を触ってわざとファウルをした。3Pシュートを打たれたら同点にされる可能性があったが、その前にファウルをすることでフリースロー2本(両方決めても2点)ならば広島は追いつけない。クレバーさが光るプレーで見事に強豪相手から82−80で勝利を飾った。

そして、5月8日のリーグ最終戦のホームゲーム、信州ブレイブウォリアーズ戦。惜しくも82対86で負けたが、キーファー自身は20得点6アシスト、そしてなんと11リバウンドと両チーム最多のリバウンド数を記録した。

2mを超え、体格で勝る信州の外国籍選手たちを相手に、キーファーはゴール下で目一杯ジャンプして競り合いにいってマイボールにしていた。そのプレーから、滋賀のホーム最終戦でなんとしても勝利する姿を見せたいという思いが伝わってきた。

信州ブレイブウォリアーズ戦のキーファー・ラベナ

筆者提供


最終戦の試合後の会見で、スペイン人のルイス・ギルヘッドコーチは、キーファー・ラベナについてこう絶賛した。

「コート内外でチームのリーダーであり、接着剤である。日本人選手たちと外国人選手たち、選手たちとスタッフ達をつなげる役目を果たしてくれる。将来的にアジアのナンバーワンのガードになっていける。(プレーでは)高いIQを持ち、現代バスケのキーであるピックアンドロールで、パス、シュート、インサイドでも中に入れるし、外でもパスをさばける。ほとんどの時間で良いデシジョンメイキングができる」

キーファー・ラベナ本人に「なぜあなたのプレーには訴えかけるものがあるのか、見る者にメッセージを感じさせるのか」と、自分でも少し恥ずかしい質問を投げかけてみると、キーファーは冷静に、そして力強く答えてくれた。

「試合会場を見渡すとたくさんの観客や子ども達が来てくれ、自分の背番号を付けたユニフォームを着ている子どもたちもいる。自分のプレーを見てくれている子どもには、強い気持ちを持って100%以上の力を注いでいけば、常に夢がかなうというのを示したかった」

筆者だけではない。試合中継を担当する実況者も会見で「あなたのプレーにはシーズンを通してずっと感動させれました。中継スタッフを代表して感謝を述べます」と拍手を送るなど、取材者たちも魅了されていた。

最終戦後に行われたファン感謝イベントでは、キーファーは子どもと交流したり、また、キーファーが座る机の前にはサインを望むファンたちの列がひときわ長かった。たった1シーズンで滋賀のファンから愛される存在になっていた。

サインするキーファー・ラベナ

筆者提供

母国でも連日話題を提供

母国でも常に注目を浴び続けているキーファーは、ベトナムで開催された東南アジア地域最大のスポーツ大会「SEA games」に出場し、チームを準優勝に導いた。キーファーは同大会をもって代表を引退するとも報道されていたが、韓国で6月17、18日に行われる代表の親善試合にも出場する。

また、数週間前には、婚約していたバレーボール選手のアリッサ・バルデス(フィリピンで大人気の選手)との関係解消を発表するなど、キーファーは連日、何かしらの話題でメディアをにぎわせている。

キーファーには現在、フィリピンのチームからのオファーが来ていると言われおり、元々1シーズン限定で母国チームに戻るのではとも噂されていた。ただ、キーファーに魅了されている滋賀のファンやブースターたちからすると、新シーズンもその姿を見たいはず。

リーグ最終戦後の会見では、キーファーに「来シーズンも日本でプレーを見られるか?」と質問している。

「それが出来たらなというのは自分の願いではあるけど、皆さんの知っている通り、フィリピンのこともある」

この回答から既に1カ月以上経つが、現時点(6月17日)でも滋賀はキーファーの契約に関する発表はしておらず、動向は不透明だ。来季も日本でプレーするのか。もしまた日本で見ることができるなら、ぜひキーファーのプレーを多くの人に見てほしい。

【関連記事】
・【Bリーグ】2年目を迎えたアジア特別枠 各選手の活躍とリーグの目論みとは?
・バスケ男子日本代表がW杯予選Window2で見えた現在地、3Pシュートを軸に変革中
・【Bリーグ】弱点を強みに変えた島根はリーグ屈指の強豪になれるか?