2026年冬季五輪は存続も人気普及で厳しい局面

ジャンプ(飛躍)と距離の総合成績で争い、王者は「キング・オブ・スキー」とも呼ばれる日本のお家芸、ノルディックスキー複合が五輪除外の危機に立たされている。

国際オリンピック委員会(IOC)は6月24日の理事会で2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の実施種目を協議し、ジェンダー平等の観点から除外の懸念が報じられていた日本のメダル有望種目、スキー複合の男子存続を決めた。

一方で2月の北京冬季五輪では唯一女子が行われず、国際競技連盟が格差是正のため実施種目入りを要望していた女子の採用は見送った。

開幕まで4年を切った2026年大会は準備段階にある選手への影響を考慮して実施するとしたが、札幌市が招致を目指す2030年大会に向けては人気や国際的な普及度で「非常に懸念される状況」とし「飛躍的な向上」を求めており、第1回冬季五輪の1924年シャモニー大会から行われてきた伝統種目は除外の危機が避けられない厳しい局面を迎えた形だ。

荻原健司らが黄金期、渡部暁斗も3大会連続メダル

スキー複合と言えば、日本勢は荻原健司らが1990年代に黄金期を築き、1992年アルベールビル冬季五輪から団体を2連覇。個人でも河野孝典と渡部暁斗が銀メダルに輝き、近年は渡部暁斗が3大会連続メダルの偉業を達成している。

特に2月の北京五輪ではエース渡部暁斗、弟の渡部善斗、山本涼太、永井秀昭の4人で臨んだ日本が前半飛躍の4位から総力を結集して激闘の末に3位に食い込み、28年ぶりのメダルを獲得したレースは記憶に新しい。 ただ競技人口の多いアルペンスキーやジャンプに比べると、欧州でも人気が低い現実がある。

日本女子の複合勢は昨季のワールドカップ(W杯)で3人が表彰台に立ち、実施されればメダル獲得が期待されていた。W杯で優勝経験のある22歳の中村安寿が日本の女子を引っ張り、18歳の葛西優奈、双子の妹の春香も次世代を担う存在だ。

直近の五輪3大会で4カ国がメダル独占、観客数は最低

しかしIOCの評価はシビアだった。理事会の記者会見で繰り返されたのは「ユニバーサリティー(普遍性)」という言葉だ。

直近の五輪3大会のスキー複合で日本、ドイツ、オーストリア、ノルウェーの4カ国がメダルを独占し、観客数は最低だったと指摘。五輪実施種目を競技するシュトス・プログラム委員長は、今後3年半で競技人口や視聴率、集客などで目に見える上積みがなければ「五輪で実施するのは極めて厳しい」と語り、2030年冬季五輪で再び除外の危機となることを指摘した。

女子のスキー複合は世界選手権での実施がまだ1度で、10カ国・地域の参加にとどまったことも「時期尚早」と判断されるハードルとなった。

全体出場枠も影響、選手数は55から36に減

一方で2026年冬季五輪は新種目にスキー・ジャンプの女子個人ラージヒルやフリースタイルスキーの男女デュアルモーグル、スケルトン混合団体、リュージュ女子2人乗りを採用。女子の参加比率は冬季大会で最高の47%に達し、選手総数は2022年北京大会から8人増の上限2900人になる見通しとなった。

今回、スキー複合が除外危機に直面した背景には、開催コストの膨張を懸念するIOCが出場枠をできる限り増やしたくない事情もある。2026年は開催国が提案できる追加競技で「山岳スキー」の採用も既に決まっていたため、普及と人気に課題を抱える複合が除外の有力候補に浮上した因果関係もある。

若者の「五輪離れ」に神経をとがらせるIOCは、国際的な普及に課題を抱える女子の採用どころか、上位国が特定の欧州勢と日本に固定化し、視聴率や観客数が低迷する男子の除外も視野に入れて「長時間の徹底した議論」(シュトス氏)をしたという。

今回は結果的に男子の存続が決まって最悪の事態を免れたが、選手数は北京大会の55から36に減らされた。五輪存続へ「条件」を付けられた形で、エース渡部暁斗(北野建設)は「存在意義をしっかり提示していく必要がある」とツイッターに投稿し、危機感を受け止めている。

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