真夏の風物詩"千直"重賞

今週は真夏の名物重賞・アイビスサマーダッシュ。今年もオールアットワンス、ライオンボスやビリーバー(抽選対象馬)といった実績あるメンバーが参戦し、JRA唯一の直線重賞で火花を散らす。さらには今村聖奈騎手、藤田菜七子騎手がともに騎乗予定で、こちらの重賞初対決にも注目が集まっている。

2001年に新設されてから、カルストンライトオやサンアディユ、カノヤザクラやパドトロワといった快速馬たちが、この「千直」重賞を制してきた。2013年の覇者ハクサンムーンも、ここからセントウルSでロードカナロアを撃破し、スプリンターズSでも2着と好走している。スピード自慢の馬と、直線競馬に高い適性を持つ馬がぶつかり合う、見逃せない一戦だ。今回はアイビスSDの歴史を振り返る。

1番人気は信頼度◎

アイビスSD過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で1番人気馬は3勝。敗れた1番人気馬2頭も2020年ライオンボス、2017年フィドゥーシアともに2着という安定した戦績を残している。2013年以降、1番人気の連対率は100%と信頼度はかなり高い。

一方で、1〜3着全てが人気馬で決まるかと言えばそうではない。むしろ近年は3着に伏兵が食い込むケースも多い。2021年は14番人気バカラクイーンが3着でゴールし、1番人気1着のオールアットワンスとのワイドが104.7倍、2番人気2着のライオンボスとのワイドが119.0倍と万馬券になった。

さすがに昨年の例は極端だとしても、3着には2020年ビリーバー(9番人気)、2019年オールポッシブル(9番人気)、2018年ナインテイルズ(8番人気)などが入っている。

また、アイビスSDといえば牝馬が強いことでも知られる。この5年は全て1〜3着馬が牡馬1頭&牝馬2頭という組み合わせ。牝馬主体の決着が続いている。昨年は3歳牝馬のオールアットワンスが1着となり、ワイド万馬券を演出したバカラクイーンも、その名の通り牝馬で人気薄だった。過去にこのレースを連覇した2頭、カノヤザクラとベルカントも牝馬だった。

九州うまれの快速馬、テイエムチュラサン

2005年の覇者テイエムチュラサンもまた、牝馬である。テイエムチュラサンは桜花賞ではラインクラフトの16着に敗れ、スプリント戦ではオープン競走の橘Sで2着、重賞のファルコンSで5着などの実績を持っていた。初めて挑んだ1000mの条件戦では6着に敗れていたが、陣営はそのままアイビスSDへの挑戦を決断。そして陣営の期待に応えるように、7番人気ながら逃げて上がり最速タイの末脚で勝利したのだった。

この年のアイビスSDで人気を集めていたのはカルストンライトオ。2001年からアイビスSDで3着→1着→出走なし→1着と、同レースの創設以来、長きに渡り盛り上げてきた1頭である。7歳になり引退も間近となった2005年も単勝1.8倍の圧倒的な人気を集め、4着に粘った。他にも2年連続CBC賞2着のカフェボストニアンや2004年アイビスSD3着のネイティヴハートなど決して楽なメンバーではない中で勝利したテイエムチュラサン。その後は引退まで勝利こそあげられなかったが、GⅠスプリンターズSに出走したり、オープン競走の福島民報杯で2着に逃げ粘るなど、短距離レースで挑戦を続けた。

そんなテイエムチュラサンは、鹿児島県うまれの九州産馬。2歳のころには九州産馬限定のオープン競走・ひまわり賞も制している。アイビスSDでの彼女の勝利は、1998年コウエイロマンの小倉3歳S制覇以来、7年ぶりとなる九州産馬によるJRA平地重賞制覇でもあった。

テイエムチュラサンは九州・小倉で開催された北九州記念で現役生活を終え、繁殖牝馬として第二の馬生を歩み始めたのだった。引退後は故郷のテイエム牧場で過ごし、同じく『テイエム』の冠を持つテイエムオペラオー、テイエムサンデーらと配合され、中央2勝馬テイエムチュラッコ(父テイエムオペラオー)らを送り出している。

そして2021年、北九州記念で同じく九州産馬のヨカヨカが勝利。九州産馬による16年ぶりのJRA平地重賞制覇を達成した。

"千直"実績馬の分厚い壁が今年も立ちはだかる

今年は北海道・浦河町生産ながら、同じ冠を持つテイエムトッキュウが登録。父ロードカナロア×母父サクラバクシンオーで、その名の通りスタートから勢いよく駆け抜けるタイプのスプリンター。1400m戦では3戦未勝利だが、1200m戦では5戦3勝2着1回という安定感を見せる。残念ながら現時点では除外対象だが、出走が叶えば期待のかかる1頭だ。

また、昨年の覇者オールアットワンスや、アイビスSDで3戦1勝2着2回という生粋の"千直"巧者ライオンボスなど実績組も参戦。注目の女性ジョッキー・今村聖奈騎手はカレンブラックヒル産駒の牡馬オヌシナニモノとコンビを組む予定だ。

今年も盛り上がる、新潟名物アイビスSD。各騎手がどういったコース取りをするか、そしてどこで仕掛けるかも見ていて楽しい一戦だ。夏の風物詩を、全力で堪能していただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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