帝京の監督時代、3度の全国制覇を達成

今年の7月に『いいところをどんどん伸ばす』を上梓した帝京・前田三夫名誉監督。かつて対戦した名将から学んだことについても、本書のなかで触れている。ここではその内容について抜粋する。

毎年、楽しみにしていた常総学院との練習試合

毎年練習試合を行うなかで、私は必ず全国の強豪校と練習試合を行ってきました。そのとき得られるものは「レベルの高いチームと対戦することで、自分のチームがどれだけのレベルにあるのか」、つまり自分たちの実力の現在地を知ることができるのが、大きな収穫となるからです。

帝京を強くしたいという一心で、強豪校とは随分練習試合をさせてもらいました。関東で言えば横浜、浦和学院、東海大相模、習志野、銚子商業。関西で言えばかつてのPL学園、天理、東洋大姫路、報徳学園……。とくに春の東京大会が終わった5月以降、こうした強豪校と練習試合を組むことで、自分たちの課題を浮き彫りにさせていただき、それを夏の東東京予選での戦いに生かしていくことができました。

そうしたなか、私が毎年のように対戦を待ち焦がれていたのは、当時の木内幸男監督(20年11月に逝去)率いる常総学院でした。

練習試合で負けても「いいチームを作ったな」と褒めた木内さんの真意とは

木内さんとは毎年、6月下旬あたりに練習試合を組ませていただいていたのですが、この時期になると帝京の選手たちは夏の予選が始まる直前ということで、心身ともにクタクタになるほどの練習を積み重ねていました。時期的に見ても強豪校と対戦すれば、練習試合では大敗を喫することもあり得る状況だったのです。その結果、帝京の投手が常総学院打線に打ち込まれ、打線もふるわずに大差で負けてしまいました。

ところが試合後に木内さんのところにあいさつに行くと、こんなことを言ってくれたのです。

「前田君、今年はいいチームを作ってきたな」

私は「どうしてですか?」と質問すると、

「帝京の選手たちの目を見てごらん。ギラギラしているだろう。ものすごく熱いものが感じられる。今日の試合ではウチに負けたけど、今の状態を維持して夏の予選に臨めば、夏は間違いなくいい結果が出るぞ」

そう断言していました。

事実、その年の帝京は東東京予選を勝ち進み、晴れて代表の座を勝ち取り、甲子園でもベスト8以上に進出するという好成績を収めました。それだけに、木内さんの選手を見る眼力というものに私は凄みを感じていたのです。

「今年の選手に足りないもの」、木内さんの答えは

ある年には、木内さんからこんなことを言われました。

「前田君、今年の夏の甲子園出場はちょっと厳しいかもしれないな」

その理由を訊ねると、

「今年の帝京の選手たちには迫力が感じられない。その証拠に目が死んでいる。東東京予選を勝ち抜くのもひと苦労するんじゃないのかな」

結果、この年は東東京予選で敗退してしまいました。春の東京大会で一定の成果を残していただけに、この年の夏の帝京は東東京予選では優勝候補の一角に挙げられていたのですが、木内さんの見立て通りの結果に終わってしまったのです。

こうしたとき、私は「何が足りずに負けてしまったのか」を必ず分析していました。木内さんが指摘されていた「熱いもの」が感じられなかったのは、私の指導のなかで何か原因があったのではないか。私はそう考えていたからです。

このように野球の強豪校と練習試合をすることは、私にとって大きな意義があるのです。とくに木内さんの言葉は、今でも私の脳裏に深く刻み込まれています。そして高校野球の現場で汗を流す多くの指導者にぜひ知っておいていただきたいと思います。

いいところをとことん伸ばす

Ⓒ日本実業出版社


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