今年はスプリント戦としては逃げ、先行馬が手薄

中山芝1200mは外回りの坂の頂上付近からスタートして、約4.5mもの坂を下って行くコース。最初のコーナー(3角)までの距離は、約275㎞と短いが、緩やかなカーブのため、一気に下って行くことが大半。このため前が競り合うとペースが速くなりやすいのが特徴だ。

2020年は時計が掛かる馬場でモズスーパーフレアとビアンフェが競り合ったことでかなりのハイペースとなり、スプリントも優れるグランアレグリアの追い込みが決まったこともある。

ただ今年は逃げ、先行馬が手薄。逃げ馬テイエムスパーダが1番枠に入ったことで、いずれかの馬が競り掛けて行くと見ているが、思い当たるのはファストフォースと内のジャンダルムくらい。また今年の開催は雨に祟られることが少なく、高速馬場を維持できていることもあり、例年のスプリンターズSと比べると、ペースが落ち着く可能性が高いと見ている。ここは先行馬主体で予想を組み立てたい。

スプリンターズS出走馬のPP指数,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

能力値1〜5位タイ馬の紹介

【能力値1位 メイケイエール】
気性難と戦いながらも、今年はシルクロードS、京王杯スプリングC、セントウルSと重賞で3勝を挙げた馬。前走のセントウルSは、5番枠からやや出遅れたが、二の脚ですっと好位の外目まで上がり、道中はコントロールしながらの競馬。ただコンクリート馬場でレコード決着と速度の速い競馬となったことで追走がわりと楽で、本馬としては折り合いもついていた。3〜4角でも好位の外目を追走し、直線序盤でしぶとく伸びて一気に先頭列。ラスト1Fで突き抜けて、後続を寄せ付けずの2馬身半差の圧勝だった。

本馬は前走時で折り合いがついていたこともあり、休養明けながら自己最高指数を記録。また今回は前走時より先行馬が手薄でペースが上がらない可能性が高いだけに、前走ほどスムーズに折り合えない可能性がある。例えるならサートゥルナーリアが休養明けで神戸新聞杯を圧勝したその次走のようなレースになりそうな気がしている。これで1番人気なら、狙い下げた方が配当妙味がある。

【能力値2位 テイエムスパーダ】
3走前の2勝クラス・皆生特別で力をつけていることをアピールした3歳馬。3走前はまずまずのスタートを切って、外の同馬主馬テイエムトッキュウを行かせて2列目の内から3角で外に出し、3〜4角では2番手の外。直線で同馬に並びかけ、ラスト1Fで突き放しての2馬身半差の完勝だった。当時に本馬が記録した指数は、1クラス上のもの。

すると次走のCBC賞では、5番枠から五分のスタートを切ってハナを主張し、3馬身半差の逃亡劇。当日はコンクリート馬場だったこともあり、1分5秒8にレコード勝ちだった。もちろん斤量の48kgの恩恵はあった。斤量減はダッシュ力、瞬発力などの加速力に最も大きなプラス影響を与えるだけに、超絶高速馬場のスプリント戦では48kgは圧倒的に有利だったことは確かだ。しかし、CBC賞で本馬が記録した指数は、破格のものだっただけに、ここでも十分に通用する実力はあるはずだ。

前走の北九州記念はCBC賞で激走した直後の一戦で、今村騎手が乗っていなかったことからも体調面がベストだったとは思えない。また前走は7〜9レースは稍重から回復しての良馬場で前半3F33秒8のハイペースで逃げており、そこを考えれば7着と言っても良い内容の競馬はできている。

今回は前走時よりも状態面は良化が見込める。また今回はスプリント戦としては逃げ馬が少ない。4走前の葵Sではスタートで躓いたこともあり、またスタートが速いタイプでもないので、1番枠がどう出るかという不安材料はある。しかし、プレッシャーをかけて来そうな馬はファストフォースくらいだ。マイペースの競馬ができれば、ここも圧倒という可能性は十分にある。

【能力値3位 ナムラクレア】
デビュー2戦目のフェニックス賞を未勝利馬の立場で、当時1番人気に支持されていたテイエムスパーダを降して勝利し、続く小倉2歳Sを例年の水準以上の好指数で勝利した素質馬。その後は同世代の牝馬トップクラスと激闘を繰り返し、桜花賞では3着に善戦した。

前々走の函館スプリントSでは斤量50kgの恩恵もあったが、7番枠から五分のスタートを切って、そこから押して楽な二の脚で先行争いに加わって行く形。レースがかなりのハイペースとなった中、3番手の外を追走し、3〜4角では2列目の外から前との差を詰めていく競馬。直線ではそこからしぶとく伸び、ラスト1Fで先頭に立つと、そこから後続を引き離して2馬身半差で完勝した。前々走は3歳馬が一番力をつける夏の時期に、しっかりと成長を感じさせる内容で、好指数を記録した。

前走の北九州記念は内枠の馬が上位を占める決着のなか、16番枠から好位を狙ったが、徐々に下がって中団外からの競馬。3〜4角で包まれ、直線でスムーズさを欠きながらも最後によく伸びて3着。潜在能力の高さを見せつける走りだった。今回は前走時よりも体調面は良化が見込めるだけにチャンスは十分ある。ただ前走で後方からレースを進めているので、今回はすんなりとレースの流れには乗りにくい面がある。最後の直線で鞍上がどう捌くかが見ものではあるが、うまく乗れれば勝利は十分に期待できる。

【能力値4位 トゥラヴェスーラ】
6走前の淀短距離Sではナランフレグに1馬身半差をつけて勝利。今から思えばこの時点で後の活躍は当然だったのかもしれないが、その後の高松宮記念4着、京王杯スプリングC2着と能力の高さを見せた。

そして今年初戦の阪急杯では、1番枠からまずまずのスタートを切ったが、外の各馬が内に切れ込んで来たので、コントロールしながら下がって中団の最内を追走。3〜4角では中団各馬が外から上がって、本馬は後方2列目。直線では最内1頭分から早め先頭に立ったダイアトニックの直後を突いて抜け出す、騙し打ちのような内容だったが、休養明けでダイアトニックをクビ差まで追い詰めた走りは驚かされた。

本馬はその次走の高松宮記念でも中団から最後の直線で内を突き、差のない4着に食い込んでいるように、イメージ以上に能力は高く、鞍上の好騎乗がここでも光った一戦だった。このように紙一重のようなレースぶりが続いているだけに、今回も上手く行くという保証はないが、再度の神騎乗があれば一気の台頭もあり得るだろう。

【能力値5位 ナランフレグ】
デビュー当初はダート路線を使われていたが、芝に路線転向してから着実に上昇。ダートでは1勝クラスで伸び悩んでいたが、2020年のシルクロードSでは接戦の3着と好走するまで成長した。その後はオープンクラスでやや壁に当たっていた時期もあったが、昨年10月のオパールS2着の後は再び好調となり、前々走の高松宮記念で悲願のGI制覇を達成した。

前走の高松宮記念は、2番枠からやや出遅れ、テンに置かれていつも通りに後方から、枠なりで終始最内を立ち回ったもの。ラスト1F地点でレシステンシアの直後から外に出す際、外への進路をトゥラヴェスーラに塞がれており、狭い間に体を捻じ込んで捌いてくるロスはあったが、ど嵌りした部類の競馬だった。

高松宮記念は枠順、展開がすべてうまく行っての勝利だっただけに、その力には半信半疑の面があったが、続く安田記念でも勝ち馬と0.4秒差の9着に走れており、本当にかなりの力をつけていることを感じさせた。

デビューからあまり休むことなくここまで来た馬で、今回しっかり休んだことがどう出るかという面はある。また、追込みで好成績を残している馬は、勝ちに行く競馬をすると最後に伸びを欠いてしまうことも多々ある。最後まで自分の競馬に徹して、展開が向くようならばチャンスは当然ある馬だ。

【能力値5位 シュネルマイスター】
デビュー4戦目でNHKマイルCでは今年の安田記念の覇者ソングラインを撃破して優勝した素質馬。その次走の安田記念では3着、秋のマイルCSでは2着、今年の安田記念でも2着と好走し、昨秋の毎日王冠でも同年の安田記念の覇者ダノンキングリーに逆転優勝を飾っていることからも芝1600m〜芝1800mがベストの馬と言える。

前走の安田記念は、9番枠から五分のスタートを切って中団後方馬群を追走。道中も中団の中目でコントロールしながら前にソングラインを見ながらの競馬になったが、ソングラインは3〜4角の外から動いて行ったのに対して、本馬はそれにはついて行かずに、中団中目で我慢したまま直線。序盤は進路がなかったが、ラスト2F目で追い出されると、馬群の内を割ってジリジリと伸び始め、ゴール前では一気に突っ込んで来たが、ソングラインにクビ差及ばずの2着だった。

確かに前走は直線の進路取りがスムーズなら優勝していた可能性もあった内容だが、前に行けない馬の弱点が出たレースでもあった。またそういう馬だけに、芝1200m戦のここはテンに置かれて追走に苦労する公算が高い。グランアレグリアの追込みが決まった2020年くらいまでペースが上がればチャンスがあるが、今年は当時よりも高速馬場で先行馬が手薄という点を考えると、追込みが決まる展開にはなりにくい。本馬がここに休養明けで出走してくるのは、この先のマイル戦を見据え、テンの速力強化を狙ったものと見ている。

穴馬は激走の条件が揃ったダイアトニック

これまでスワンS、函館スプリントSを優勝し、一昨年の高松宮記念でもゴール手前で外からクリノガウディーに寄られて悔しい3着となった実績がある馬。一昨年のキーンランドCよりスランプとなり、2桁着順が続いていたが、骨折による長期休養を経て、4走前の京都金杯4着、3走前の阪急杯1着と見事な復活を果たした。

3走前の阪急杯では外枠の逃げ馬モントライゼが出遅れ。10番枠から好発を決めた本馬は、そこから押してハナを狙う競馬。最終的には外からハナを主張したモントライゼを行かせて2列目の最内を追走し、最後の直線で内ラチ沿い1頭分の狭いところを割って早め先頭に立ち、そこから押し切る強い内容で優勝した。本馬が阪急杯で記録した指数は、自己最高指数であり、能力の衰えを感じさせない。

今年の高松宮記念は阪急杯激走後の一戦だったためか、出遅れて能力を出せず、安田記念は前で流れに乗ろうとしていたが折り合いを欠くレースとなって能力を出し切れなかった。この馬は函館スプリントSを勝利した時もそうだったが、好位でスムーズに流れに乗ると能力を出し切れるタイプ。一時のスランプ時はレースの流れに乗れず、後方から伸びあぐねるレースぶりだった。

今回はスプリント戦のわりには逃げ、先行型が手薄なメンバー構成。好位で流れに乗る形をとれそうだ。近2走が不完全燃焼の競馬となっているので、先週の神戸新聞杯のジャスティンパレス同様にエネルギーも十分に溜まっているだろう。能力自体に問題はなく、テイエムスパーダを見ながらレースを運べる内枠で、展開にも恵まれる公算が高く、今回は激走の条件が揃ったと言える。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)メイケイエールの前走指数「-24」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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