阪神芝2200mは前半のペースが上がりやすい

今年のエリザベス女王杯も一昨年、昨年同様、宝塚記念と同じ阪神芝2200mで行われる。同コースはスタート後が下り坂のため加速がつきやすく、最初の1角までの距離も約525mと長い。平坦スタートで最初の1角までの距離が約397mの京都芝2200mと比べ、前半のペースが上がりやすいのがポイントだ。

ただし、向正面では隊列が決まり、ペースが落ち着いてゆったりとした流れになることもある。実際、昨年の宝塚記念では逃げ、先行型が手薄だったこともあり、7番人気のユニコーンライオンが逃げて2着に粘っている。

今年の阪神芝は昨年と異なり、馬場が比較的軽く、内と前が有利な傾向が続いている。しかし、エリザベス女王杯当日は雨予報。標準〜ややタフな馬場になり、昨年のように外差しが決まることも視野に入れなければならない。

ただ昨年はシャムロックヒルとロザムールが競り合い、向正面でもペースが落ちなかったことで、外差し決着に拍車をかけた面もある。今年は昨年と比べると、逃げ、先行型が手薄で昨年ほど極端な外差し決着にもならないはず。先行馬にもチャンスがあると見て、予想を組み立てたい。

能力値1〜5位の紹介

2022年エリザベス女王杯出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ウインマリリン】
3歳春のフローラSを優勝し、続くデアリングタクトが勝利したオークスで2着となった実績を持つ。古馬になってからは日経賞や昨秋のオールカマーも優勝しているように、牡馬トップクラスに混じっても互角に戦える力を持っている。

今年初戦の大阪杯こそ16着と大敗したものの、そこから着実に良化。前走の札幌記念では後の天皇賞(秋)で上位にきた、ジャックドールやパンサラッサなど強豪相手に札幌のタフな洋芝&緩みないペースを好位の内からしぶとく伸び、強い内容の3着と好走した。

今回で前走の走りが再現できれば当然、優勝が期待できる。ただ、前走内容があまりにも強過ぎて、今回に向けてどれだけ余力が残せたかとなると微妙なところ。昨年のエリザベス女王杯ではオールカマー好走後に大敗。ここまでの本馬は古馬牡馬相手に激走したあと、疲れが残り凡退というケースが目立つ。能力は十分だが、体調面にやや不安を感じる。

【能力値1位 ジェラルディーナ】
3歳夏以降、急激に力をつけて昨年10月の3勝クラス西宮Sではオープン級の指数を記録して快勝。当時完封した相手は今秋の府中牝馬Sを優勝したイズジョーノキセキだっただけに、この時点でその後の活躍は順当なものだった。しかし、鞍上が福永騎手だったため出世が遅れた面もある。超絶スローペースでも後方で構え、3〜4角のペースが上がったところで外から進出してロスを作るレースぶりが目立ち、善戦はするものの、勝ち切れなかった。

しかし、横山武史騎手に乗り替わった前走のオールカマーは自己最高指数を記録して優勝。ただ前走はCコース替わりの中山芝2200m戦で、馬場が内から乾いていったこともあり、内が圧倒的に有利な馬場状態。実際に道中最内を通った1〜3番枠の馬と、13番枠から逃げたバビットが4着以内を独占した。

つまり、2番枠からのレースはかなり恵まれた面があり、ウインキートスの直後、好位の内を狙った横山武史騎手のファインプレーだったとも言える。状態面は前走並みをキープできていると見ているが、今回は大外18番枠。この枠だと差し脚を生かす競馬になるだろうか。先週の阪神芝は内と前が有利な傾向で、それだと乗り難しい。ただ、雨の影響で外差し馬場になった場合はチャンスが広がる。

【能力値3位 ウインマイティー】
3歳春の忘れな草賞を勝利し、続くデアリングタクトが勝利したオークスでは3着の実績馬。ただ本馬はあまりキレる脚がなく、差す競馬では持ち味が出せなかった。3歳秋以降は前に行く競馬ができなかったこともあり、スランプ状態になった。

今年初戦の福島民報杯では思い切って前に出して行く競馬。スタミナが不足する長期休養明け、かつ開幕週にしては時計の掛かる馬場&前半5F57秒7-後半5F62秒2の超絶ハイペースを3角手前で2列目の中目と勝ちに行く競馬をしたため、9着に大敗した。

しかし、その後のレースでは行きっぷりが回復。メトロポリタンSでは逃げて4着。そして次走マーメイドS勝ちに繋がった。同レースではわりと楽に2列目の内を取ってレースの流れに乗り、ラスト1Fで突き抜けて優。2着馬は次走の小倉記念を圧勝したマリアエレーナだった。

前走の京都大賞典は休養明けで試走の意味合いが強かった。しかし、今まで結果が出なかった差し競馬をして3着。体調面は充実しているようだ。ただ前走で差し競馬をした直後となると、どうしても行きっぷりが悪くなりやすい。また、前走で距離が長いところを使っていることも行き脚を悪くする。さらに今回17番枠となると、自分の得意な形で競馬するのは簡単ではなさそう。過信はできないか。

【能力値4位 デアリングタクト】
一昨年に牝馬三冠を史上初の無敗で達成し、伝説のジャパンCではアーモンドアイ、コントレイルに続いて3着と好走した馬。ジャパンCはキセキの大逃げで前半5F57秒9-後半5F61秒8の超絶ハイペース。本馬は中団馬群の中目を追走し、アーモンドアイを意識して動いたことで展開に恵まれ、自己最高指数を記録した。

ジャパンCでは最後の直線で内にモタれていたことから、能力を相当に出し切っており、その後は疲れが出て休養。復帰してからも本来の走りを見せられていなかった。さらに昨年の宝塚記念出走前に繋靭帯炎を発症、1年1ヵ月にも及ぶ長期休養を余儀なくされた。

復帰緒戦のヴィクトリアマイルでは6着に敗れたが、ひと叩きされた2走前の宝塚記念では3着と復活。ただし、このレースはパンサラッサがタイトルホルダーのハナを叩いて前半5F57秒6-後半5F60秒0のかなりのハイペースで逃げた。その展開を中団の外から1番人気のエフフォーリアをマークし乗ったことで、展開に恵まれたのは確かだ。

それでも本馬がジャパンCで記録した指数は、今回のメンバー中でNO.1。前走のオールカマーは6着に敗れたが、同レースはかなりのスローペースで内と前が圧倒的に有利な馬場&展開だった。そのことを考慮すれば、後方外々からの競馬で6着に敗れたのは仕方ない。また、前走で馬場&展開に恵まれなかったことで、ここへ向けての余力が残せたとも言える。

【能力値4位 イズジョーノキセキ】
前走の府中牝馬Sで12番人気ながらソダシを撃破し、初重賞制覇を達成した馬。前走は6番枠からやや出遅れたが、内の各馬が先行したことで、内のスペースを拾って中団の中目あたりを追走。道中は手綱を引いて我慢させ、3〜4角で最内に入れて脚を温存。後方2列目の最内で最後の直線を迎えると、最内を突いて3列目まで上がり、ラスト2Fではソダシの後ろ。ラスト1Fで2列目からしぶとくソダシを追撃し、最後にアタマ差捕らえて優勝した。

前走は内にこだわる岩田康誠騎手の良さが詰め込まれた一戦だった。レース後に「ソダシの後ろから運べば、必ず進路ができると思っていました」とコメントしていたが、まさにその通りの競馬になった。前走は岩田康誠騎手のファインプレーによる番狂わせの優勝ではあったが、強烈な末脚を使ったあたりに、本馬自身の成長も窺える。しかし、休養明けで自己最高指数を記録してしまうと、次走は反動が出ることが大い。本馬も今回は苦戦すると見る。

【能力値4位 ウインキートス】
デビュー戦は芝のマイルだったが、その後距離を延ばして少しずつ成績が上昇。芝の2600mで2回勝利しているように、かなり長距離適性が高い。昨年のオールカマーでは好位の内目で流れに乗って2着。しかし、その後は行きっぷりが悪くなり成績が低迷。ところが今年5月の目黒記念では逃げて3着と好走した。

本馬は前に行くと能力を出せるが、待機策ではキレる脚が使えないので敗れてきた。いかにもスタミナに優れたタイプで、ウインマイティーと似たところを感じる。前走オールカマーは3番枠だったことで2列目の内で流れに乗れ、おおよそ能力を出し切れた。前走である程度走っており、大きく体調面で良化ということはないだろう。しかし今回は逃げ、先行型が意外と手薄。そんな中で9番枠なら自分の競馬はできそうだ。警戒は必要だろう。

穴馬はマイペースで逃げるとしぶといローザノワール

今春のヴィクトリアマイルでは18番人気ながら2着と接戦の4着と、かなり見せ場があった馬。同レースは10番枠からやや出遅れ、そこからかなり押してスピードに乗せながら主導権を取り、粘って4着。スピードの違いでハナに立ったレシステンシアが、ハイペースで逃げ失速した高松宮記念の二の舞を恐れたのか、本馬がハナに立つのを待ってくれた。主導権を握れたことは確かだが、極端なスローペースではなく、そこまで前が有利な展開だったわけではない。

しかし、ヴィクトリアマイルが人気薄での好走だったせいか、次走のクイーンSでは2番枠から好発を決め、何が何でもハナという姿勢の本馬に対し、他馬は競って行かず。このためかなり楽に超スローペースに持ち込み、ハナ+クビ差の3着に粘った。

前走の府中牝馬Sではスタートで躓きハナに行けなかったが、そこから挽回し向正面で気合いを入れて先頭に立つ競馬。結果的に前半で無理に脚を使わせたことで、最後の直線では余力がなくシンガリ負けを喫した。

しかし、2009年のエリザベス女王杯では前走京都大賞典で9、14着に敗れていたクィーンスプマンテとテイエムプリキュアのあっと驚く行った、行ったが決まった。このように、前走大敗から巻き返すのが逃げ馬である。この年は先行型が手薄だったことも後押しとなった。そして今年も意外と先行型が手薄。

本馬はマイペースで逃げてこその馬なので、楽にハナを主張できるという意味では距離延長も悪い条件ではないだろう。鞍上、もしくは同馬が軽視されているかはともかく、前々走で楽に逃がしてもらった本馬の一発に期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ウインマリリンの前々走の指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の茶色線はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
・【エリザベス女王杯】デアリングタクトら5歳馬は全消し! 本命候補は4歳馬の2頭
・【エリザベス女王杯】古馬勢からイズジョーノキセキ、ジェラルディーナ、ウインマリリン 案外勝てない3歳の扱いがカギ
・【エリザベス女王杯】秋の女王決定戦はリピーターの活躍多数 2019年・2020年連覇を果たしたラッキーライラック