思い込み厳禁、勉強不足を痛感

のっけから恨み言になりますが、読んでください。

この日の福島芝はメインまで4鞍。勝ち馬は差し3、追い込み1で逃げ馬の3着以内はゼロ。福島開催でよくみかける外差し馬場。さらに福島記念は逃げ候補ユニコーンライオン、ロザムールが再ブリンカー、同じく先行型サトノエルドールもブリンカー着用。シャムロックヒル、ベレヌスに逃げて3勝クラス突破のコスモカレンドゥラと逃げ候補がズラリ。昨年パンサラッサが逃げ切ったが、その後の充実ぶりをみれば、それも納得。なによりパンサラッサは単騎大逃げであり、逃げ争いになる組み合わせで外差し馬場とくれば、狙いを外枠の差し、追い込みに絞るのは自然な発想だ。

それがまさかのユニコーンライオン逃げ切りV、2、3着も内枠からある程度は前にいたサトノセシル、アラタで決まるとは。疑いもなく決めてかかることがどれほど危険か。そして福島競馬はそう単純ではない。まだまだ勉強が足りないと痛感した。

ユニコーンライオンの逃げ流儀とは

さて、勝ったユニコーンライオンは昨年パンサラッサと同じく矢作芳人厩舎。矢作厩舎の馬は厳しい流れでも本当に最後まで我慢強く走る、さすがだ。同じ逃げ馬ではあるが、この連覇はちょっとニュアンスが違う。パンサラッサの勝利はここから充実期に突入するきっかけだったが、ユニコーンライオンはケガを乗り越え、かつていた場所に戻る合図だ。

5歳で鳴尾記念V、宝塚記念2着。その後ツメの不安で1年の休養。復帰後はダート戦も含め3戦5.9、2.0、2.1差。長期休養後にかつての輝きを取り戻せない馬も多い。休養前の鳴尾記念がとにかく秀逸で、私も絶賛した記憶がある。前半1000m通過1.02.9は遅いが、後半800m11.5-11.1-11.1-11.9を中京で逃げて踏むのは容易ではなく、11.1を連続で出せる逃げ馬はそうはいまい。これだけのレースはもうできない。そう勝手に決めつけた自分を恥じる。よくよく振り返れば、予兆はあった。札幌記念ではパンサラッサよりも鋭いダッシュ力をみせ、待つ場面すらあった。使われつつ、ユニコーンライオンは復調していた。

逃げ候補が複数いる組み合わせのなか、ユニコーンライオンは明確に先手をとりに行く意志をみせ、ロザムール、ベレヌスを引かせ、外からハナを狙ったシャムロックヒルを微妙な動きでけん制、ハナを守って1コーナーに突入。この時点で勝負あった。最初の600m34.2は速いが、大事なのは先手を守ること。ペースではなかった。

2番手以下が動けなくなると、ユニコーンライオンはペースを一気に落とす。この緩急もまたユニコーンライオンの強み。12.6を2度続け、前半1000m通過59.4。昨年のパンサラッサより2.1遅く、やはり逃げ馬でもタイプが違う。向正面でシャムロックヒル、ベレヌスを引きつけ、3コーナーすぎから12.2-12.0とじわりと加速、4コーナー出口付近11.9で先行勢を突き放す。後続も差し有利、逃げ候補複数が頭にあり、近走冴えないユニコーンライオンの先手に惑わされたか。同馬の持ち味を存分に発揮できた競馬だった。

武蔵野Sで見せ場を作ったバスラットレオンも合わせ、矢作厩舎には3頭の逃げ馬がいる。距離適性に差がある部分もあるが、3頭ともタイプが違うのは興味深い。異なるタイプの逃げ馬をどう作るのか。ぜひ聞いてみたい。1つのレースに1頭しかいない逃げ脚質だけに、これからは同一レースに出走させることはないかもしれない。特に中距離中心のパンサラッサとユニコーンライオンはタイプの違いから共存できない関係だ。パンサラッサは前半飛ばし、物理的なリードをいかす。ユニコーンライオンは平均、スローで引きつけて、先に仕掛けてロングスパートで突き放す。それを踏まえると、ユニコーンライオンは後ろが挽回できる大箱より小回り向きだろう。

充実期のサトノセシル、アラタ

2着サトノセシルは6歳牝馬ながら、今年2、4、2、4、2着と充実。次は4着?というのは邪推というもの。父フランケルらしく、少し時計を要する馬場状態がベスト。これから先、冬の芝に適性を感じる。年齢は嫌う材料にならない。

アラタは昨年に続きまたも3着。パンサラッサのハイペースに乗じて追い込んだ昨年よりレース内容に進境があった。札幌記念4着とこちらも充実期。ローカル重賞なら勝機は十分ある。4着は3歳オニャンコポン。アラタとは同位置で進みながら伸び負けて1馬身差は斤量差を考えると、案外な印象。父エイシンフラッシュは成長力豊富。もう一段成長してほしい。

2022年福島記念回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』(星海社新書)に寄稿。

《関連記事》
・【マイルCS】持続力勝負ならサリオス、ソダシ、ダノンスコーピオン共存可能 決め手比べならジャスティンカフェ一発秘める
・【東スポ杯2歳S】クラシック登竜門は結果も内容も要注目! 好走候補はフェイト、テンカノギジン、ハーツコンチェルト
・秋競馬は短期免許騎手が金脈!? C.デムーロ、ムーア騎手の「買える条件・買えない条件」