ダイワメジャー産駒のイメージ

セリフォスはここまでキャリア7戦で重賞3勝もGⅠは2、4、4着。あとひと押しが足りないもどかしい状況。富士Sを勝った藤岡佑介騎手からダミアン・レーン騎手への非情ととれる乗り替わりは、現状を打開したいという陣営の思いと、使命感のあらわれ。打てる手はすべて打つ。この機会は逃さない。そんな執念が見事に実を結んだ。

この勝利でマイルCS史上初の父子制覇を達成。父ダイワメジャーはGⅠ・5勝の名馬。なかでもマイルGⅠはマイルCS連覇、安田記念と出走機会3連勝、絶対的な強さを発揮した。ダイワメジャーといえば、安定した先行力を武器に位置をとり、最後に抜け出すというスタイル。流れを自ら支配し、瞬発力勝負に持ち込ませず、得意の持続力勝負に引き込んだ。王者には自分の世界に相手を引き入れる力があった。

種牡馬入り後はカレンブラックヒル、メジャーエンブレム、アドマイヤマーズ、レシステンシアらを送り、本賞金1億円超えの産駒は48頭。これはボンセルヴィーソなど丈夫で長く活躍できる産駒が多いことも一因。父も3〜6歳まで4シーズン連続で重賞勝利。父から受け継いだのはそれだけではない。雄大な馬体と安定した先行力とスピードの持続力。レーススタイルも父にそっくりな産駒が多く、父ダイワメジャーは傾向が明瞭で、馬券を買う側も付き合いやすい。

反面、強いときは圧倒的なダイワメジャー産駒にはモロさも同居しており、ディープインパクト産駒など瞬発力に長けた馬たちの末脚に屈する場面も多く、勝ちきれないもどかしさも抱える。GⅠ馬を多数輩出したが、GⅠに手が届かない産駒も目につく。

イメージを覆したセリフォス

セリフォスはダイワメジャー産駒の常識を覆すニュータイプ。今回も含め重賞4勝はすべて上がり最速。それも32.8、33.4、33.2、33.0とすべて33.5未満。持続力ではなく瞬発力で対抗する走りはダイワメジャー産駒らしからぬものだ。

今回もピースオブエイト、ファルコニアの先導は前半800m46.6。持続力勝負の安田記念とは対照的なラップ構成になりやすいマイルCS。やはり抑制された入りだった。実際、勝負所まで馬群は一団で進み、各馬、最後の直線を余力ある状態で迎えたため、内で渋滞する場面があった。セリフォスはそこに入らず、勝負所から大外を進出。レーン騎手は小細工不要、末脚を最大限に引き出すことを心がけた。ダイワメジャーには似ていないが、その血がもつ成長力と息長い活躍を期待したくなる。ダイワメジャー後継種牡馬はすでに何頭かいるが、最高傑作といっても過言ではないセリフォスにはその血を進化させる役割もある。

前後半800m46.6-45.9、明暗分けたスローペース

後半800mは前半より0.7速い45.9。そのラップは11.9-11.6-10.8-11.6で直線入り口から坂下まで10.8。これに対応して伸びないと上位に来られないレースだった。それだけにこの地点でのごちゃつきはどの馬も痛かった。2着ダノンザキッドも狭くなる場面はあったが、530キロの雄大な馬体も味方し、なんとか最低限でかいくぐった。昨年3着時はややスランプ気味だったが、ここ3戦3、3、2着。高速上がりに対して位置をとることで対抗できるようになった。勝利は2歳時から遠ざかっているが、ジャスタウェイ産駒らしく4歳秋にして立ち直りつつある。勝利は近い。

3着ソダシもダノンザキッドと同様、狭くなる場面をなんとかクリアした。直線では一旦、飲み込まれそうになりながらも、しぶとく食い下がり、3着死守。やはりマイルは適性距離。一方でスローの瞬発力勝負では分が悪かった。ダイワメジャーのように自分の流れに引き込むような積極的な競馬をみたくなった。ベストは緩まない東京マイルだろう。

5着シュネルマイスターは直線でもっと外に出したかったが、出させてもらえず、押し込められ、不完全燃焼。昨年の毎日王冠のような破壊力が最近みられない点は気になる。スプリンターズSもぶつけられて力を出せていない。やや反応が鈍くなった裏返しでないといい。

6着ジャスティンカフェは流れがドンピシャで、残り400〜200m10.8での伸びは際立っていたが、ずっとインにいたため、残り200mで進路を失った。スムーズだったらと思わせる内容はGⅠ通用の証でもある。次走がマイル重賞ならあっさりではないか。

11着ダノンスコーピオンは同期セリフォスに水をあけられてしまったが、セリフォスやダノンザキッド、そしてジャスティンカフェが反応できた10.8で伸び負けたことから分かるように持続力勝負型。ソダシと同じくベストは東京マイルだ。

毎日王冠を勝ったサリオスは14着。ソダシやダノンスコーピオンと同じく瞬発力勝負で劣ったのは確かだが、それにしても負けすぎた。朝日杯FS勝ちがある阪神マイルだが、マイルCS5、6、14着では適性に疑問。ハーツクライ産駒らしく左回りがベストだろう。


2022年マイルチャンピオンシップのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』(星海社新書)に寄稿。



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