Bコース替わり初週

京阪杯がジャパンC当日の最終レースに設定されたのは2014年から。例年ジャパンCより混戦で難関な組み合わせばかりかつ、配当妙味があり一発逆転の救済レースのような役目を果たしてきた。移設元年のアンバルブライベンやネロなど比較的逃げ脚の速い馬が活躍してきた。

スプリント路線は10月スプリンターズS以降、1200mの重賞がなく貴重なレースではあるが、そのスプリンターズS組が思うような結果を残せないという傾向が難易度をあげる。今年も前走スプリンターズSは5頭出走し、4、6、7、11、14着。もう一方で秋開催開幕週にあるオパールS1、2着馬は14年以降【0-1-0-9】。こちらも前哨戦的立ち位置ながら相性がよくない。しかし今年はトウシンマカオがオパールSから連勝で重賞初制覇。こちらのデータは破られた。トウシンマカオの父は最後にオパールS2着以内からここで好走したビッグアーサー。父は15年2着な、トウシンマカオは父を上回った。データを破るだけの血統だったということか。

もう一点。この3年、京阪杯は阪急最寄りの阪神競馬場施行。過去2年は京都施行よりも差し追い込み勢が穴を提供。今年もその再現を狙ったファンも多かったはずだ。しかし、今年は過去2年と決定的な違いがあった。それは馬場だ。過去2年は12月からBコース替わりだったが、今年は今週からBコース替わり。GⅠ激戦続きのAコースは傷みが激しく、最後は外差し馬場になる。過去2年はその影響があった。今年はBコース初週で一転して先行優位。2着キルロード、3着スマートクラージュも先行。4コーナーから直線入り口に入った時点で勝負あった。

先行争いに巻き込まれない絶妙なポジション

今回、スプリンターズSを逃げ、夏の小倉で前半600m31.8を叩き出したテイエムスパーダが今村聖奈騎手と再タッグ。大外に徹底して逃げるビアンフェとなれば、ハイペース想定は当然のこと。3コーナーまでが短く、ペースが上がらない阪神芝1200mでもここまでそろえば先行勢優位は読みにくい。

まずはスタートで明暗が分かれた。キルロードが抜群の発馬を決め、テイエムスパーダはダッシュで見劣った。スプリンターズSも出負けを挽回したように、もともとダッシュ力は鋭くないタイプ。CBC賞を勝って待ってもらえない存在になったことで競馬の形を見直す時期に差しかかっているようで、今村騎手も無理に挽回しなかった。しかし、控えるということは最初ではなく最後にひと脚繰り出し、前を捕まえなければいけない。テイエムスパーダに限らず、逃げから先行への脚質転換は簡単ではない。馬を納得させるには時間がかかるだろう。

この時点でレースはキルロードのものとなった。高松宮記念3着の実績馬であり、逃げてひと溜め作れれば簡単には止まらない。しかし、ここに明らかにスタートダッシュで遅れたビアンフェがやってきた。滅多に控えない快速型は行ってなんぼ。ダッシュ力を挽回すべく強引にハナを奪いに行ったのは3コーナーに入ってから。前半600m12.2-10.4-10.7、33.3は阪神芝1200mとしては速い。キルロードにとっては誤算だったか。

これらの攻防を観察していたのが勝ったトウシンマカオ。先行争いに巻き込まれず、かつ下げすぎず、絶妙なポジション取りは見事だった。春はマイル路線を歩んだが夏を境にスプリント戦線へ。経験を積みながらペースに慣れてきた。記録した上がりは33.0。決着時計1.07.2はトウシンマカオが記録を押し上げた面もある。父はGⅠでやってしまったイメージが強く残るが基本は器用な先行型。同馬も父に似た本質が顔を出してきた。左回りも上手、来春の高松宮記念では父との親子制覇を狙える。

3着スマートクラージュは舞台と馬場を読み、スタートから内枠を利用して前につけた好プレーが導いた結果。前につけた分、馬は3コーナーで行きたがったが、リスクを背負いながらも結果を求める姿勢が光った。阪神4勝のコース巧者と作戦が合致した。しかし阪神芝1200mはオープンのレース数が少なく狙いが難しい。ただ阪神以外はからっきしというタイプではなく、時計が出る馬場状態、かつ先行優位のレースでは注意しておきたい。


2022年京阪杯回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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