新京都競馬場での初GⅠ

今週日曜日、京都競馬場でGⅠ天皇賞(春)が行われる。昨年の覇者タイトルホルダー、阪神大賞典を勝って重賞2勝目をあげたジャスティンパレス、その阪神大賞典で2着のボルドグフーシュ、長距離戦線で息長く活躍し続けているシルヴァーソニック、日経賞で9着に敗れ巻き返しを図るアスクビクターモアなどが出走を予定している。

このレースは京都競馬場のリニューアル工事が完了してから最初のGⅠとなる。伝統の京都芝3200mで春の盾を手にするのはどの馬か。今週も過去10年のデータから検討する。


阪神好成績組が安定、他は中山組が圧倒

過去10年の天皇賞(春)・前走阪神組の着差別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の天皇賞(春)・前走阪神組の着差別成績>
1着【3-2-2-7】勝率21.4%/連対率35.7%/複勝率50.0%
0秒2以内負け【1-1-0-5】勝率14.3%/連対率28.6%/複勝率28.6%
0秒3以上負け【0-2-2-47】勝率0.0%/連対率3.9%/複勝率7.8%
※2021年、前走競走中止のゴーストを除く

はじめに前走成績に関するデータを、競馬場別に確認する。まず数の多い阪神組は(前走競走中止を除き)総計【4-5-4-59】で、前走1着馬は【3-2-2-7】複勝率50.0%の好成績。15年ゴールドシップ、17年キタサンブラック、18年レインボーラインが勝利している。また前走が0秒2差以内惜敗だった馬は7戦2連対、連対馬はキタサンブラック(16年産経大阪杯2着→天皇賞1着)、シュヴァルグラン(17年阪神大賞典2着→天皇賞2着)の2頭だった。

一方で、阪神で0秒3差以上負けだと【0-2-2-47】複勝率7.8%と凡走例が多く、過去にはキズナ、アリストテレス、キセキなどが着外に敗れている。今年の出走馬の中ではボルドグフーシュ、ブレークアップ、ディープボンドなどがこれに該当する。ただし京都での8回に限れば【0-2-2-37】と多少改善され、また京都コースも新しい外回り使用で傾向が変化する可能性を考えると、消しとまではいかないだろう。相手候補として捉えたい。

過去10年の天皇賞(春)・前走阪神以外の成績,ⒸSPAIA


<過去10年の天皇賞(春)・前走阪神以外のコース別成績>
中山【6-2-3-46】勝率10.5%/連対率14.0%/複勝率19.3%
東京【0-1-1-19】勝率0.0%/連対率4.8%/複勝率9.5%
中京【0-0-0-3】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
※海外【0-0-1-1】

次に阪神以外を経由した馬のデータを見る。連対例の多くを中山組が占めていて、特にここ4年は連続して勝ち馬が出ている。そのうち日経賞組は【4-2-3-43】複勝率17.3%だが、勝ち馬に限ると【2-1-1-6】複勝率40.0%である。

また前走が中山のレースで2番人気以内だと【5-1-2-9】だが、3番人気以下だと【1-1-1-37】と苦戦傾向にある。天皇賞(春)は近10年で5番人気以下の勝利がないように、これまでの実績がモノを言うレース。前走時点で人気薄だった馬は信頼しづらい。

阪神、中山以外からの臨戦は好走例に乏しい。前走東京から馬券圏内に入ったのは15年フェイムゲーム(2着)と昨年のテーオーロイヤル(3着)のみ。両方ともダイヤモンドSで2着に0秒3差以上をつけて勝っており、これを満たさないヒュミドールやトーセンカンビーナには厳しいデータだ。

過去10年の天皇賞(春)・脚質別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の天皇賞(春)・脚質別成績>
逃げ【2-0-0-9】勝率18.2%/連対率18.2%/複勝率18.2%
先行【4-8-6-19】勝率10.8%/連対率32.4%/複勝率48.6%
差し【3-2-4-66】勝率4.0%/連対率6.7%/複勝率12.0%
追込【0-0-0-40】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
マクリ【1-0-0-2】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率33.3%

最後に脚質面をチェックすると、逃げ先行有利の傾向がはっきり見て取れる。特に第4コーナーで先頭だった馬は【4-0-1-5】であり、また15年にゴールドシップがマクリを決めているように、どれだけ前の位置で直線を迎えられるかがカギとなる。逃げ先行かつ上がり3F2位以内だと【4-5-0-1】で、決め脚があればなおよし。その点、加速力があるタイトルホルダーやジャスティンパレス、ボルドグフーシュには追い風となる。

一方、差して勝った3頭のうち14年フェノーメノは4コーナーで5番手、20年フィエールマンは同4番手集団の直後という位置にまで早めに上がっており、中団以降からの差し切りは18年レインボーラインだけ。直線一気を決めるにはかなりのキレ味に加え、展開の助けも要る。


春の盾防衛に期待

◎タイトルホルダー
なんといっても日経賞の内容が圧巻。凱旋門賞や有馬記念での敗戦から1番人気をアスクビクターモアに譲るも、直線ではまったく他馬を寄せ付けず、2着につけた着差は8馬身。タイムにして1秒3差だった。59kgを背負って逃げを打ちながら、メンバー中最速の上がり3F36秒8をマークしている。道悪もプラスに働いたが、それ以上にこの馬の圧倒的な底力を見せつける形となった。

日経賞を叩いて天皇賞(春)へ向かうルートは昨年制覇したときと全く同じで、1週前には美浦Wコースで6F80秒3、最後の1Fは11秒2を計時しており、仕上がりも問題ない。別の記事でも述べたように、異なる競馬場でのGⅠ連覇に挑戦した馬の成績は【3-2-1-2】と、初コースも前例を見る限り問題なし。死角らしい死角が見当たらず、ここは春の盾防衛が濃厚とみてよいだろう。

◯ジャスティンパレス
阪神大賞典では前半に1F13秒台が並ぶスローペースの中、2〜3番手のインでロスなく落ち着いて進めた。直線に向くと逃げたアフリカンゴールドをかわし、外からねじ伏せにかかるボルドグフーシュも1馬身4分の3封じて勝利。前が壁になりかけたところで、外にスッと出てかわし加速する一連の流れには全く淀みがなく、上がり3Fも最速の34秒2をマーク。操縦性と能力の高さが如実に出た一戦だった。4歳馬は過去10年で【4-2-4-28】勝率10.5%と活躍しやすい。名勝負を演じてほしいところだ。

▲ボルドグフーシュ
キャリア11戦中8戦で上がり最速をマークしており、加速力に優れるのみならず、それを長く持続するスタミナも兼ね備えるのが強み。阪神大賞典では2着だったが、道中は先行集団を見るように6番手で進め、3コーナーから徐々に進出し、上がり3Fは34秒4とメンバー中3位だった。有馬記念でも3コーナー入口では後方2番手だったが、4コーナーにかけて一気にマクリをかけて2着。イクイノックスにこそ2馬身半差をつけられたが、3着ジェラルディーナには1馬身半差をつけており、近2走はどちらも負けて強しだ。

以下アスクビクターモア、ブレークアップ、シルヴァーソニックに印を回す。馬券は◎-◯▲-◯▲△×の3連単フォーメーションとする。上位人気が予想される馬たちをそのまま印に並べる形となったが、波乱は想像しにくく、点数を絞って勝負したい。

▽天皇賞(春)予想▽
◎タイトルホルダー
◯ジャスティンパレス
▲ボルドグフーシュ
△アスクビクターモア
×ブレークアップ
×シルヴァーソニック

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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