例年以上の大混戦

今週日曜日、東京競馬場で3歳マイル王決定戦・NHKマイルカップが行われる。無敗で朝日杯FSを制したドルチェモアに、3連勝でニュージーランドトロフィーを制したエエヤン、武豊騎手を背にアーリントンカップで豪快な差し切り勝ちを決めたオオバンブルマイらが参戦する。

しかし、どの人気馬も不安要素を抱えており、例年以上の混戦模様だ。この混戦を抜け出して3歳マイル王に輝くのはどの馬か。今週も過去のデータや前走成績を参考にして馬券戦略を考えていく。

前走クラシック組が優勢

2023年NHKマイルCに関するデータ,ⒸSPAIA


<NHKマイルカップ・過去10年の前走レース別成績>
桜花賞【2-2-0-12】勝率12.5%/連対率25.0%/複勝率25.0%
皐月賞【2-1-2-10】勝率14.3%/連対率21.4%/複勝率28.6%
ニュージーランドT【2-1-2-45】勝率4.0%/連対率6.0%/複勝率10.0%
アーリントンC【2-0-4-19】勝率8.0%/連対率8.0%/複勝率24.0%

過去10年でみると、前走桜花賞、皐月賞、NZT、アーリントンCがそれぞれ2勝ずつ。満遍なく様々なレースから勝ち馬が出ていることが分かる。

その中でも、勝率や連対率でいえば桜花賞、皐月賞の前走クラシック組が優勢だ。ソングライン(桜花賞15着→NHKマイルC2着)やキングズオブザサン(皐月賞15着→NHKマイルC3着)など惨敗から巻き返す例も見られる。やはりクラシックに出走できる馬たちは同世代の中では地力が抜けており、そこで負けていたとしてもメンバーレベルが1枚落ちる本レースでは十分通用するということなのだろう。今回は桜花賞7着のシングザットソングと皐月賞18着のダノンタッチダウンが該当する。

一方、低調気味なのがNZT組。舞台は直線が短く立ち回りの巧さが求められる中山芝1600mで、本番とは求められる適性が大きく異なる。となれば府中替わりがプラスになりそうな、速い上がりを使えた馬に注目したくなるところだが……。NZTで上がり3Fが3位以内だった馬のNHKマイルCでの成績は【1-1-0-17】とかなり低調。馬券に絡んだのはわずか2頭(18年ケイアイノーテック1着、22年マテンロウオリオン2着)であり、そもそも本番とは全く質の違うレースであることが分かる。ここの好走馬は慎重に検討したい。

昨年の覇者・ダノンスコーピオンも該当したアーリントンC組は、NZTよりは好走率が高く本番に繋がりやすい。このレースでの上がり3Fが3位以内だった馬はNHKマイルCで【2-0-3-8】複勝率38.5%とまずまず。直線が長く末脚勝負になりやすい阪神芝1600mは東京芝1600mと適性上リンクしやすいようで、そこで見せた上がりはある程度信用していい。

桜花賞からの巻き返しに期待

◎シングザットソング
評価したいのはなんといっても2走前のフィリーズレビュー。前半600m33.2という同レース史上最速のハイペースを先行して押し切るという非常に強い内容だった。桜花賞は0.8秒差の7着と悲観するほどの内容ではなく、前回からメンバーレベルが1枚落ちるこのレースでは十分通用すると考える。鞍上がフィリーズレビューを制した時の吉田隼人騎手に戻るのもプラス材料だ。3走前のエルフィンSでは上がり3F33.2を叩き出しており、直線が長く末脚の生きる府中マイルはこの馬にとって適しているだろう。あまり人気もしない見込みで、妙味の高い点も魅力的だ。

◯モリアーナ
NZTは4コーナーで早めに仕掛け、直線の短い中山で勝ちに行っての4着。東京芝1600mで新馬戦を勝ち、クイーンCでのタイム差無しの3着がある当馬にとってコース替わりは間違いなくプラスだ。今回は横山典弘騎手に乗り替わる点も魅力的。横山典弘騎手は、過去10年のNHKマイルCで【2-1-1-3】、単回収率174%を記録しており、複勝率は驚異の57.1%を誇る。昨年もマテンロウオリオンをクビ差の2着に導いており、その実力は衰え知らず。名手の好騎乗と得意舞台での巻き返しに期待だ。

▲ドルチェモア
前走はまさかの7着惨敗。しかし、先述した通りNZTはNHKマイルCとは全く質の異なるレースであり、そこまで評価を落とす必要はないだろう。同舞台のサウジアラビアRCでは上がり3F33.4の豪脚を使って、大逃げを打ったグラニットを差し切っており、府中への適性は十分。朝日杯を無敗で制したそのポテンシャルは間違いなく今回の出走馬の中では上位であり、三浦皇成騎手の初GⅠ制覇もあり得るだろう。

以下、オオバンブルマイ、カルロヴェローチェ、セッションまで印を回す。馬券は◎の単勝、◎-◯のワイドを本線に、◎から◯以下への馬連を押さえる。なお、馬場が渋った場合は、△以下の評価を上げることとする。

▽NHKマイルC予想▽
◎シングザットソング
◯モリアーナ
▲ドルチェモア
△オオバンブルマイ
×カルロヴェローチェ
×セッション

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。


《関連記事》
・【NHKマイルC】ハイブリッド式消去法でエエヤンら実績上位馬が次々脱落! 残るのは超伏兵の3頭!
・【NHKマイルC】「前走不利データ」を持つエエヤンとセッションを推奨 Cアナライズの本命は枠次第
・【NHKマイルC】参考レース振り返り 勝率14.3%の皐月賞組、プラス材料揃うダノンタッチダウン