京都に帰ってきた東上最終便

京都新聞杯が3年ぶりに京都競馬場に帰ってきた。同レースは過去10年のダービーで、2頭の勝ち馬を出しているレースだ。ただし、ダービーで連対した前走京都新聞杯組3頭は、全頭が京都開催時のこのレースの連対馬だった。

中京開催だった直近2年の勝ち馬レッドジェネシスとアスクワイルドモアは11、12着に敗れている。このことから、ダービーでの好走条件は「京都新聞杯で連対」ではなく「京都開催の京都新聞杯で連対」だといえる。

今年の勝ち馬サトノグランツは3連勝で重賞制覇。賞金を加算しダービー出走の権利を得た。中2週と間隔が詰まることから、執筆時点ではダービーへの出走は不透明。ただ今回は同馬のダービー好走の可能性も探りつつ、レースを振り返っていきたい。

重賞とは思えないほどのスローペース

今年は前走で逃げた馬がリビアングラスだけで、レース前からスローペースが予想された。スタートでマキシが出遅れるなか、ハナを主張したリビアングラスがあっさりと先手を奪った。前走もスローで逃げた同馬は今回も遅いラップを刻み、前半1000mまでのラップは12.8-11.7-13.2-13.5-12.6の1:03.8、重賞とは思えないほどのスローペース。

この遅いペースを利用し、出遅れたマキシが向正面で一気に前に進出し、残り1000m地点では一時先頭に立った。残り800m地点からレースはペースアップ。ここから4F連続で11秒台を刻み、ラスト3Fは11.3-11.2-11.4の33.9。典型的な「スローからの上がり勝負」となった。

こうなると前でレースをしていた馬たちも余力十分で、そうそう止まることはない。実際、4角1番手のリビアングラスが3着、2番手のマキシが4着、3番手のダノントルネードが2着に入り、この4頭は勝ち馬からタイム差なしだった。

前有利の展開のなか、4角5番手から上がり3F33.3で差し切ったのがサトノグランツだ。道中は遅いペースに頭を上げ、行きたがる馬が多かったなか、同馬はしっかりと折り合い脚をためていた。直線に入ると馬場のいい真ん中から差し脚を伸ばし、最後はきっちり差し切り。操縦性が高く、距離が伸びても問題ないだろう。

2〜4着に関しては展開が向いた面が大きく、このレースで今後を判断するのは難しい。2着以下で次走以降に注目したいのが5着のマイネルラウレアだ。同馬は前走皐月賞では14着と大敗したが、もともと使う予定のレースを頓挫で使えなかった経緯がある。一度使った今回は馬体も絞れていた。レースは道中内で我慢し、最後の直線で外に出されると、勝ち馬を上回る上がり3F最速33.2で追い込んできた。道中の走りを見る限り、まだまだ幼い面もあり成長の余地は大きそうだ。また、同馬の父ゴールドシップは菊花賞や天皇賞(春)を制すなど長距離で結果を残しており、距離延長は歓迎だろう。順調に夏を越し、秋の菊花賞に出走してくれば、注目したい一頭だ。

ダービー好走の可能性

サトノグランツがダービーに出走した場合、現状は厳しい戦いが待っている可能性が高い。過去10年のダービー1着馬で、前走が京都新聞杯だったのは13年キズナ、19年ロジャーバローズの2頭だ。

13年キズナの京都新聞杯は、前後半ほぼイーブンペースを、4角13番手から上がり3F最速34.5で差し切り。この上がりは2位より0.7も速く、脚力が違った。19年ロジャーバローズは前後半ほぼイーブンペースで逃げ、差してきた勝ち馬とタイム差なしの2着。2頭とも厳しいレースで、一番強い内容で結果を残している。

サトノグランツは今回も含め、5戦中4戦がスローの上がり勝負。前半からペースが流れるような厳しいレースを経験していない。今年の皐月賞は重馬場ながら前半1000m通過58.5のハイペース。同レースで先行した馬たちがダービーに出走すれば、スローペースになる可能性は極めて低く、厳しいレース経験の有無という差は大きい。皐月賞で2位より0.9秒も速い上がりを記録したソールオリエンスを逆転できるか。これはなかなか難しいと言わざるを得ない。ただ、スローからの上がり勝負になれば、馬券圏内にくるチャンスはある。


2023年京都新聞杯、レース回顧,ⒸSPAIA


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