競馬の祭典・日本ダービー

日曜日、東京競馬場でGⅠ・日本ダービーが行われる。武豊騎手がキズナとともにダービー5勝目をあげた第80回から早10年経ち、今年で90回目の節目を迎える。記念すべきこのダービーに、皐月賞を異次元の末脚で差し切り、衝撃を与えた無敗馬ソールオリエンス、粘りを見せて2着となったタスティエーラ、1番人気に支持されながら3着に敗れたファントムシーフ、青葉賞を制して大舞台への切符を掴み取ったスキルヴィング、ホープフルSで波乱を演出しUAEダービーでも2着に入った二刀流・ドゥラエレーデなど、2020年に生まれたサラブレッドたちの頂点を決めるにふさわしい豪華メンバーが揃った。

昨年は武豊騎手がドウデュースで前人未到のダービー6勝目をあげた。今年は果たしてどのようなドラマが展開されるのか。過去のデータから予想していきたい。

皐月賞の上がりと枠順に注目

日本ダービー、皐月賞組のデータ,ⒸSPAIA


<日本ダービー、皐月賞での内容別成績>
上がり最速で3着以内【4-0-0-1】勝率80.0%/連対率80.0%/複勝率80.0%
1、2枠から差し追込で連対【3-0-0-0】勝率100.0%/連対率100.0%/複勝率100.0%
※過去10年

まず皐月賞組に関するデータを見ていこう。やはり重視すべきは末脚で、皐月賞上がり最速かつ3着以内なら【4-0-0-1】。中山の一冠目で光るキレ味を見せつけた馬たちは、ダービーでも好走する確率が高い。唯一の着外はサートゥルナーリアだが、この馬は前走で騎乗したルメール騎手が騎乗停止のため乗れず、急きょレーン騎手へ乗り替わりとなったのが痛かった。横山武史騎手が継続して騎乗予定のソールオリエンスには心配ない。また、皐月賞を1、2枠から差し追込で連対した馬は【3-0-0-0】とパーフェクト。1枠1番から鮮烈な追込を見せたソールオリエンスにはこれも有利なデータとなる。

一方で、皐月賞からダービーで騎手が替わったケースは【0-0-0-27】。先述のサートゥルナーリアの他、ロゴタイプ(13年5着)、キタサンブラック(15年14着)などがことごとく馬券圏外に沈んでいる。別路線組を含めても乗り替わりのある馬は【1-1-2-55】で、一昨年にシャフリヤールが勝ったものの、好走確率は低い。59頭の平均人気は10.9であり、そもそも実力負けの可能性もあるが、やはり騎乗馬をよく知る騎手でなければ、ダービーを勝つのは難しいのだろう。今年は皐月賞2着タスティエーラ、3着ファントムシーフが乗り替わり。この点でもソールオリエンスと評価の差が生じる。

日本ダービー、キャリア別成績,ⒸSPAIA


<日本ダービー、キャリア別成績>
3戦【1-1-0-8】勝率10.0%/連対率20.0%/複勝率20.0%
4・5戦【7-7-5-61】勝率8.8%/連対率17.5%/複勝率23.8%
6・7戦【1-1-5-56】勝率1.6%/連対率3.2%/複勝率11.1%
8戦以上【1-1-0-23】勝率4.0%/連対率8.0%/複勝率8.0%
※過去10年

つぎに、出走馬のキャリア別成績について確認する。ソールオリエンスはこれまで新馬、京成杯、皐月賞と3戦を経験しているが、キャリア3戦馬は【1-1-0-8】であり一見平凡。ただ、一昨年の1着シャフリヤール、僅差4着グレートマジシャン、昨年の2着イクイノックス、4着ダノンベルーガと、ここ2年連続で上位に顔を出している。

86年〜20年でみると、キャリア3戦以下馬のダービー好走例は言わずと知れたフサイチコンコルド(96年1着)の他に、88年のメジロアルダン(2着)、コクサイトリプル(3着)しかない。レース数を使っていない、フレッシュな馬が走るようになったというのは近年のトレンドであり、そこに合致するソールオリエンスをやはり軸としたい。

反対に、キャリアを重ねた馬の成績は芳しくなく、分水嶺は6戦以上かそれ未満かということになる。出走予定馬の中でこれまでに6戦以上走っているのはトップナイフ、ショウナンバシット、メタルスピード、グリューネグリーン、パクスオトマニカ、ドゥラエレーデ。これらの馬は買っても相手までに留めるのが無難だろう。

無敗二冠へ視界良好

◎ソールオリエンス
皐月賞は重馬場の中、4コーナー17番手からグングンと加速し、ごぼう抜きで鮮烈な勝利を飾った。その上がり3Fは35秒5、2位ファントムシーフ、シャザーン、トップナイフとは0秒9差もあり、「衝撃」以外の言葉が見つからないレースだった。ダービーは最後の直線が格段に長くなり、また良馬場が予想されていることから、ますますパフォーマンスを発揮しやすい舞台になるのは言うまでもない。枠も悪くなく、無敗二冠は目の前にある。

◯ファントムシーフ
皐月賞は3着だったが向正面で落鉄したこともあり、悲観する内容ではない。上がり3Fはメンバー中2位の36秒4をマークしており、巻き返しに期待。仕上がり面でも、1週前に一杯に追ってラスト3F35秒9、1F11秒0を計時し、僚馬を置き去りにした。最終追い切りでも馬なりでラスト1F11秒3を出しており、準備は全て整った。

心配点は外枠と乗り替わりだが、15年のドゥラメンテや昨年のドウデュースは7枠から勝っているし、新たにコンビを組むのはダービー6勝、この舞台の全てを知り尽くしたレジェンド・武豊。大きく割り引く必要はないだろう。捲土重来を期す。

▲タスティエーラ
皐月賞はあわや押し切ろうかという場面を作って2着。先団で進めた馬の中で唯一馬券圏内に残る負けて強しの内容だった。ただし共同通信杯では上がり3F3位タイの脚を繰り出しながら届きそうで届かず、(3着とハナ差とはいえ)ファントムシーフの4着と結果的にキレ負けしてしまっている点は不安なところ。ここ2走手綱をとっていた松山弘平騎手からレーン騎手へ乗り替わりがあることも考慮して▲評価とした。

△スキルヴィング
絶好の1枠2番を引けたことは大きい。新馬から一貫して東京コースを使い続けており、特に前々走のゆりかもめ賞は3馬身差の快勝、青葉賞でも最後の直線での加速力には目を見張るものがあった。初のGⅠということもあって重い印は打てないが、相手としてなら馬券に入れるべき一頭である。

以下シャザーン、トップナイフに印を回す。馬券は◎1着固定、◯以下相手の3連単とする。

▽日本ダービー予想▽
◎ソールオリエンス
◯ファントムシーフ
▲タスティエーラ
△スキルヴィング
×シャザーン
☆トップナイフ

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。



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