2022年の新種牡馬たち

世代の頂点を決める日本ダービーが終わり、いよいよ今週から新馬戦がスタートする。今年のダービー馬に輝いたのはタスティエーラ。父のサトノクラウンは初年度産駒からいきなりダービー馬を輩出する偉業を達成した。

その他にも、京都新聞杯を制したサトノグランツ(サトノダイヤモンド産駒)やUAEダービーで逃げ切り勝ちを収めたデルマソトガケ(マインドユアビスケッツ産駒)、小倉2歳Sを勝ったロンドンプラン(グレーターロンドン産駒)など、多くの新種牡馬の産駒が活躍した1年だった。

今後の2歳戦線を占うためにも、本記事では2022年デビューの新種牡馬たちの成績を振り返り、馬券のヒントになる傾向を確認していきたい (使用するデータは2023年5月30日時点)。


最多勝はリアルスティール

2022年の主な新種牡馬 全体成績,ⒸSPAIA


<2022年の主な新種牡馬 全体成績>
リアルスティール【38-38-39-259】勝率10.2%/連対率20.3%/複勝率30.7%
マインドユアビスケッツ【32-31-16-251】勝率9.7%/連対率19.1%/複勝率23.9%
サトノクラウン【22-19-22-307】勝率5.9%/連対率11.1%/複勝率17.0%
サトノダイヤモンド【22-17-21-202】勝率8.4%/連対率14.9%/複勝率22.9%
デクラレーションオブウォー【21-24-17-195】勝率8.2%/連対率17.5%/複勝率24.1%
グレーターロンドン【13-7-6-78】勝率12.5%/連対率19.2%/複勝率25.0%

まずは今年の新種牡馬たちの全体成績を確認していく。

最多勝は2016年ドバイターフ覇者のリアルスティール。ラヴズオンリーユーの全兄という良血だ。初年度からデイリー杯2歳Sを制したオールパルフェを輩出した。新馬戦で皐月賞馬ソールオリエンスとクビ差の接戦を演じ、先日の1勝クラスを5馬身差で快勝したレーベンスティールなど、これからの活躍が期待できる産駒も多い。複勝率も30.7%と3割の大台に乗っている。

GⅠドバイゴールデンシャヒーン連覇など、世界のダート短距離路線で大活躍したマインドユアビスケッツが第2位。UAEダービーを制し、ケンタッキーダービーに出走したデルマソトガケや、スプリングSで2着に入り日本ダービーでも16番人気6着と健闘したホウオウビスケッツなど、芝、ダートを問わず活躍馬を送り出している。全体の単勝回収率は147%とプラス域だ。

2016年香港ヴァーズ、2017年宝塚記念を制したサトノクラウンは、初年度からダービー馬タスティエーラを出すなど大活躍。牝馬でもアネモネSを制したトーセンローリエやスイートピーS勝ちのウヴァロヴァイトと、2頭のオープン馬が出ている。父はMarjuで、サンデーサイレンスを持たない貴重な血統構成であり、繁殖牝馬の質が上がる今後に注目だ。

昨年の新種牡馬で最大のビッグネームといえるサトノダイヤモンドもまずまずの成績。世代最初の新馬戦をダイヤモンドハンズで制したものの、9月までに挙げた勝ち星は僅か2つと伸び悩んだ。しかし、秋以降は京都新聞杯を制したサトノグランツや阪神JF2着のシンリョクカなど牡牝を問わず活躍馬が登場し、トータルでは22勝まで巻き返した。

イギリスの芝GⅠを2勝したデクラレーションオブウォーは、今年が本邦導入後の産駒デビューイヤーとなった。ファルコンステークスを制したタマモブラックタイや、ホープフルS、弥生賞で2着に入ったトップナイフなど重賞戦線に活躍馬を輩出。すでに世界各国で芝GⅠ馬を出しており、その貫禄を示した形だ。

こうしたビッグネームたちを尻目に、新種牡馬で初めての重賞ウイナーを送り出したのはグレーターロンドン。小倉2歳Sをロンドンプランが圧巻の末脚で制し、新種牡馬デビュー3ヶ月での快挙となった。牝馬でもエルフィンSを制したユリーシャがいる。本馬の主な重賞成績は2018年の中京記念勝ちのみではあるものの、重度の蹄葉炎で長期休養を余儀なくされ、蹄に不安を抱えたまま重賞を制した能力、名牝ロンドンブリッジを母に持つ良血と、秘めるポテンシャルは十分。一介のマイナーサイアーと侮ってはいけない。


新種牡馬の傾向を掴め

2022年の主な新種牡馬 条件別成績,ⒸSPAIA


その他、各種牡馬について好条件となるデータも確認していく。

リアルスティール産駒は中山コースの成績が良く、【10-7-9-56】勝率12.2%、単勝回収率204%を記録している。前目の競馬で結果を出している産駒が非常に多いため、立ち回りの巧さが求められる中山コースと好相性なのではないか。また、芝の不良馬場では【3-2-0-4】で勝率33.3%、2022年9月24日の中山5Rでコウセイマリア(14番人気)が1着になるなど好成績を残している。該当条件で積極的に狙っていきたい。

サトノクラウン産駒は札幌コースや東京コースと好相性。特にタスティエーラがダービーを制した東京コースでは【10-4-3-58】で勝率は13.3%と全体勝率より7.4%も高くなっている。

デクラレーションオブウォーは芝の単勝回収率が110%とプラス域。特に狙い目なのは芝が稍重、重の場合だ。稍重の場合は【3-2-3-14】勝率13.6%、単勝回収率113%を記録。重の場合も【2-0-0-10】で勝率16.7%、単勝回収率430%と妙味十分である。

グレーターロンドン産駒は少ない産駒数ながら福島や新潟、小倉などのローカル開催で活躍しており、これら3場の単勝回収率は全てプラス域だ。特に新潟では【3-1-0-4】で勝率37.5%、単勝回収率882%と非常に優秀である。

マインドユアビスケッツ産駒は父がダート短距離で活躍したイメージが強いためか、芝での妙味度が高く【9-11-6-75】で勝率8.9%、単勝回収率230%を記録。フリージア賞で7番人気1着(単勝26.5倍)と穴をあけたホウオウビスケッツがその代表だ。

サトノダイヤモンド産駒は全場のなかで中山コースとの相性が最も良く【6-3-3-34】勝率13.0%。妙味の面では京都コースの成績が【2-1-1-12】勝率12.5%、単勝回収率136%と優秀だ。

2022年の主な新種牡馬 データ,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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